第二話 オンボロなトロッガンは今日も健在
「何やってる! もう行くぞ!」
オンボロ借家の開け放された玄関の外からバウランが怒鳴る。
既にトロッガンに乗り込んでいる。
「はいはいはいはい。今行きますよ。つうか、そのトロッガンそろそろ替え時じゃないですかね、バウランさん」
ブーツを引っ掛けながらミラノは言った。
ボロにも限界がある。コイツはその限界を遠い昔に迎えていると判断できる。
「何を言ってる。コイツはある人の間ではそりゃあ高値で取引されるくらい値打ちのあるモノだぞ。それにタダで乗れてるんだからありがたく思え」
ということは、飾るだけで楽しむような、観賞用ってことで値打ちがあるのは、それだけ古いということだ。綺麗な状態だったら売れるんだろうけど、数え切れないくらいの傷を負ったソレは、重要ゼロだな。
ミラノは「ほれほれ早くせんか」とバウランの小言を背中で受けながら戸を施錠した。
トロッガンに乗り込むと、薬の匂いやら黴の匂いやら錆の匂いやらが鼻を刺激してくる。これは毎度のことだけれど、どうも慣れない。窓を全開にしようとしても壊れていて、せいぜい三セント《cm》が限界なのだから困ったものだ。
このおっさんは、本当にケチでイライラする。
新しい乗り物が買えるくらいの蓄えはあるはずなのに、どうして買い替えないのか……意味不明。
可愛い少女のおかげでどれだけ稼いだと思ってるんだか。トロッガンはまだ操縦できないけど、いつも頑張ってる可愛い少女にロール付きの新しいローレイドブーツくらい買ってくれても罰は当たらないはず。
あ~ヤダヤダ。友達やライバルはみんなローレイドを持ってるというのにッ。いくら駄々こねて催促しても、このおっさんは絶対に首を縦に振ってはくれない。つるバカ野郎だ。
ミラノは操縦席の隣で足を組んで不貞腐れた。
トロッガンはゴボゴボゴボと何かを吐き出すような音をたてて、ようやく走り出す。とは言っても、走り出しは時速30キメル《km》が限界。最高速度100キメルになるまで数分はかかるのが本当に恥ずかしい。他人から邪魔扱いされるし。しかも、最近のトロッガンは最高速度200キメルは出るというのに。
しかしまぁこのオンボロ、100キメル出たところで、突然胴体がぱっくり割れてアレさようなら~とかなったらどうしてくれるんだ。アタシの命はこのおっさんよりも数倍大事だっての。なんてたって若いんだから!




