第一話 ミラノ・アウディラ
ミラノ・アウディラが今の仕事を選んだのは、報酬が高いからという現実的な理由からだった。
その仕事には、夢も希望も抱いたことなんてないし、今だって、経済的な問題から解放されたら、いつでも辞めてやろうと思っている。
お金持ちになったら、もっと華やかで自慢できる仕事がしたい。
報酬が低くても良いから、好きな仕事に就きたい。
そう、踊り子とか魔術師とか占い師とか。誰もが羨むような人になりたい。
だから今の自分は本当の自分ではない。そう思って今の仕事をしている。
いつか絶対、立派な職で花を咲かせてみせるのだ。今は、それまでの修行なのだ。まだ十五歳の少女だから、あと三年は下積みだと思ってやるっきゃない。十八歳になれば色んな資格も取れるし、好きな仕事に就けるのだから。
今の職を離れたら悲しむ人だっていると思うけど、それは申し訳ないけど強引に許してもらうしかない。今から別れの挨拶を練習でもしておこうかな。
「おいミラノ、準備は出来たか?」
つるっぱげのバウランは、御年四十歳。
本名、バウラン・ジェングス。
ミラノの父親より若いというのに、その髪の薄さはピカイチだ。顔には皺がないのに禿げた頭を見ていると時々可哀想に思えてくる。それをバウランに言うと、「じゃあかしいやい小娘が!!」と本気で怒るんだから可愛くない。
怒りっぽくて酒飲みのバウランの短所はいくらでも出てくるけど、長所といったら、力持ちで料理上手ってことくらいかな。
朝昼晩のご飯は店でも開けるくらい美味い。美味すぎておかわりしちゃう。だから太るのだ。「もう少し痩せろ小娘」とか言うけれど、そういうアンタは本当にずんぐりむっくりだよ。
165セント《cm》の身長に75キロガ《kg》の体重っていったら、スタイルは自慢できないでしょ。
まぁ筋肉モリモリだからブヨブヨのデブとも違うけど、データ的と外見的にはチビのデブに変わりはない。とにかくずんぐりむっくり。その言葉に尽きる。
それを言うと、バウランは本気でゲンゴツしてくる。頭の天辺をガツンとやるからいつも涙が出る。お返しに股間を蹴ってやるが、十回に九回は外れる。というか交わされる。偶然にも急所を射止めたときは飛び上がって喜んでやった。だってあのバウランが股間抑えて悶絶しているのを見て嬉しかったんだもの。
でも最近ではバウランも対策を練ってか、防御性の高い防具パンツを身につけているようで、蹴っても硬い物にガードされていてダメージを与えられない。本当につまらない。




