↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『最強探偵、異世界で攫われた相棒を探す旅に出る』  作者: れいじ
第一章 攫われた相棒

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/33

第5話 初めての報酬

第5話です。


異世界で初めての依頼を終えた総一と薫。


少しずつライラックでの生活にも慣れ始める二人ですが、新たな出会いが物語を動かし始めます。


それでは、お楽しみください。

夕暮れの光が森を赤く染めていた。


 商人夫婦は何度も頭を下げながら荷馬車へ乗り込む。


「本当にありがとうございました。お二人のおかげで命拾いしました。」


「気にしないでください。」


 薫が穏やかに微笑む。


 総一も照れくさそうに頭をかいた。


「困ってる人を助けるのは当たり前だ。それより、早く街へ戻った方がいい。」


「はい。また必ずお礼をさせてください。」


 荷馬車はゆっくりとライラックへ向かって走り出した。


 その姿を見送ると、総一は大きく息を吐く。


「終わってみれば、薬草採取よりゴブリン退治の方がメインだったな。」


「本当にそうね。」


 薫は採取した青葉草が入った袋を見つめる。


「依頼はちゃんと達成してるし、ギルドへ戻りましょう。」


「ようやく報酬がもらえる。」


「その前に宿代。」


「分かってるよ。」


 二人は顔を見合わせ、小さく笑った。


 森を抜ける頃には、夕日がライラックの街並みを黄金色に照らしていた。


 石造りの門をくぐると、人々が家路を急ぎ、露店からは香ばしい匂いが漂ってくる。


「腹減ったな……。」


「だから宿代が先。」


「厳しいなあ。」


「お金は計画的に。」


 薫は即答だった。


 総一は苦笑しながら冒険者ギルドの扉を開ける。


 昼間より人は多い。


 依頼を終えた冒険者たちが酒を飲み、討伐した魔物の話で盛り上がっていた。


「あっ、総一さん、薫さん。」


 受付嬢が二人に気付き、笑顔で迎える。


「お帰りなさい。依頼達成の報告ですね。」


「はい。」


 薫は青葉草を丁寧に机へ並べた。


 受付嬢は一株ずつ確認すると、満足そうに頷く。


「間違いありません。薬草採取依頼達成です。」


 奥から革袋を持って戻り、それを総一へ差し出した。


「こちらが今回の報酬になります。」


 総一は革袋を受け取り、その重みに思わず目を丸くする。


「結構あるな。」


「初依頼としては十分な報酬ですよ。」


 薫は中身を確認し、ほっと胸をなで下ろした。


「これなら宿代も払えそうね。」


「やっと借金生活から抜け出せる。」


「一日しか借金してないでしょ。」


「借金は借金だからな。」


 二人のやり取りに受付嬢が小さく笑う。


 薫は革袋をしまうと、受付嬢へ尋ねた。


「一つ、お聞きしてもいいですか。」


「はい、何でしょう。」


「私たち、この街へ来たばかりで、まだ生活費の感覚が分からなくて。」


 受付嬢は納得したように頷いた。


「そういうことでしたか。」


「このくらいの報酬があれば、普通に生活できますか?」


「ええ。宿代を払っても数日は困らないと思いますよ。依頼を継続して受ければ、十分暮らしていけます。」


「安心した。」


 薫はほっとした表情を浮かべる。


 総一も笑顔になる。


「これで今日の晩飯は少し豪華にできそうだ。」


「贅沢はダメ。」


「少しくらい肉を追加してもいいだろ?」


「……少しだけなら。」


「よし!」


 総一は思わず拳を握った。


 その時だった。


 ギルドの扉が静かに開いた。


 一人の青年が姿を現す。


 年齢は総一よりずっと若い。青いマントを羽織り、腰には使い込まれた剣を下げている。派手な装飾はない。それでも、その場の空気が少しだけ変わった。


「シン様、お帰りなさい!」


「今日もお疲れさまです!」


 冒険者たちが次々と声を掛ける。


 青年は少し照れたように笑い、一人ひとりに軽く手を振って応えた。


 その様子を見ていた総一は、小さく首を傾げる。


「……あれ、誰なんだ?」


 受付嬢は少し驚いたような表情を浮かべた。


「ご存じなかったんですか?」


「まあ。この街に来たばかりなんでね。」


「そうでしたね。」


 受付嬢は微笑みながら青年へ視線を向ける。


「あのお方が、この世界の勇者シン様です。」


「勇者……。」


「十八歳という若さですが、これまで何度も魔王軍から人々を救ってこられた、この世界の英雄なんですよ。」


 総一は感心したように青年を見つめる。


「ずいぶん若いんだな。」


「ええ。でも、とても努力家で、誰にでも優しい方なんです。」


 その時、シンが報告を終えて振り返った。


 一瞬だけ総一と目が合う。


 シンは穏やかに会釈し、そのままギルドを後にした。


 総一も軽く頭を下げる。


「感じのいい青年だな。」


「そうね。」


 薫も自然と笑みを浮かべた。


「勇者ってもっと近寄りがたい人かと思ってた。」


「町の子どもたちにも人気なんですよ。」


 受付嬢はどこか嬉しそうだった。


 報酬を受け取った二人は、ギルドを後にする。


 外へ出ると、夕暮れのライラックは昼間とは違う賑わいを見せていた。


 焼きたてのパンの香り。


 肉を焼く香ばしい煙。


 店先では子どもたちが笑い、大人たちは今日の出来事を語り合っている。


「活気のある街ね。」


 薫が辺りを見回す。


「そうだな。」


 総一もゆっくりと歩きながら頷いた。


「異世界ってもっと殺伐としてるもんだと思ってた。」


「街の中は意外と平和ね。」


 露店を眺めながら歩いていると、肉を焼く匂いが鼻をくすぐる。


 総一のお腹が小さく鳴った。


「……腹減った。」


「聞こえたわよ。」


「仕方ないだろ。この匂いは反則だ。」


 薫は少し笑い、財布を開いた。


「今日は初めてのお給料だものね。」


「つまり?」


「串焼き一本だけなら。」


「よし!」


 総一は嬉しそうに店へ向かった。


 焼きたての串焼きを受け取り、一口かじる。


「うまい!」


 思わず顔がほころぶ。


 薫も一口味見をすると、小さく目を丸くした。


「本当。おいしい。」


 二人は顔を見合わせ、自然と笑った。


 命を落とし、見知らぬ世界へ来てから数日。


 ようやく肩の力を抜いて食事を楽しめる時間だった。


 食べ終えると、総一は空を見上げる。


 夕焼けはゆっくりと夜へ変わり始めていた。


「さて。」


「宿へ戻りましょうか。」


「ああ。明日も依頼を受けないとな。」


「今度は無茶しないでね。」


「善処する。」


「それ、一番信用できない返事よ。」


 二人は笑い合いながら宿への道を歩き出す。


 石畳の道を照らす街灯が、一つ、また一つと灯っていく。


 異世界ネオアースでの新しい生活は、ようやく始まったばかりだった。

第5話を読んでいただき、ありがとうございました!


今回は初めての依頼を終え、ライラックでの生活が本格的に始まりました。


そして、勇者シンもようやく登場です。これから総一たちとどのように関わっていくのか、楽しんでいただけたら嬉しいです。


「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想をいただけると、とても励みになります!


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。