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『最強探偵、異世界で攫われた相棒を探す旅に出る』  作者: れいじ
第3章 レベルスマウンテン編

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第46話 美人エルフと魔族の影

レベルストーンの謎を追い、ゴンザットの研究に協力することになった総一たち。


しかし、研究よりも別のことが気になっている男が一人……。


そんな総一の行動が、思わぬ展開へとつながっていきます。


第46話、よろしくお願いします!

「俺たちの研究に協力してくれないか?」


 ゴンザットの申し出に、マリンはすぐには答えなかった。


 机の上に並ぶレベルストーンを眺めながら、何かを考えている。


「悪いけど、私たちは旅の途中なの。いつまでもここにはいられないわ」


「分かってる。少しの間でいいんだ」


「それに、私たちには調べたいことがあるのよ」


 マリンは総一へ視線を向けた。


「魔王軍が大量のレベルストーンを集めているの。何に使うつもりなのか、まだ分かってないのよね」


「魔王軍が?」


 ゴンザットの表情が変わった。


 総一がビジュールの採掘場で起きた事件を簡単に説明すると、ゴンザットは興味深そうに腕を組んだ。


「なるほどな。そいつは気になる話だ」


「だから、研究を手伝う代わりに、その使い道を調べるのにも協力してほしいの」


「もちろんだ。俺だって知りたい」


 その返事を聞いて、マリンは小さく頷いた。


「じゃあ、今日一日だけね」


「よし! ボンズ、準備だ!」


「分かってるよ、じいちゃん」


 ゴンザットは嬉しそうに研究室の奥へ向かった。


 しばらくすると、机の上に魔素を供給する装置と、いくつかの試料が並べられた。


「まずは人工生成からだ」


 ゴンザットが説明を始めると、シンとサリーが興味深そうに近づいた。


 ナバルも腕を組み、少し離れた場所から眺めている。


 総一も最初は話を聞いていた。


 レベルストーンが魔王軍に関係している以上、興味がないわけではない。


 ただ、魔素の濃度や結晶化の仕組みについて話が進むにつれ、頭の中には別の女性の顔が浮かび始めていた。


 アンリ。


 昨日出会った、あの美しいエルフだ。


 せっかく同じ里にいるのだから、もう少し話してみたい。


 総一は研究に夢中になっている仲間たちを見回すと、そっと扉へ向かった。


「……総一さん?」


 サリーが振り返る。


「ちょっと外の空気を吸ってくる」


「そうですか。お気をつけて」


 総一は軽く手を振り、研究室を出ていった。


 その背中を見送ったナバルが、小さく笑う。


「外の空気ねえ……」


「何かおかしいんですか?」


 シンが尋ねる。


「いや。あいつの場合、別の目的がありそうだと思ってな」


 マリンは装置から目を離さずに言った。


「どうせ女のところでしょ」


 誰も否定しなかった。


     ◇


 研究所を出た総一は、アンリの家へ向かった。


 木々の間を抜ける道には柔らかな陽射しが差し込み、里のあちこちから住人たちの話し声が聞こえてくる。


 アンリの家に到着した総一は、扉を軽く叩いた。


「アンリちゃーん、いる?」


 返事はない。


 何度か呼んでみたが、どうやら留守のようだった。


「せっかく来たのにな……」


 肩を落としていると、隣の家からエリナバールが顔を出した。


「あら、総一さん。アンリに用事?」


「そうなんですよ。ちょっと顔を見に来たんですけど」


「ふふっ、あの子ならお店にいるわよ」


「店?」


「アンリは里で小さな食堂をやっているの。知らなかった?」


 総一は初耳だった。


 エリナバールによると、この里にはおよそ千五百人のエルフが暮らしており、アンリの食堂はその住人たちに人気があるらしい。


「料理が得意な子でね。野菜やキノコ、豆を使った料理が中心なんだけど、最近はお肉料理も評判なのよ」


「肉も食べるんですね」


「もちろん。男たちが森で鹿や猪を狩ってくるから、それを仕入れてるの。アンリが工夫して料理に使うようになってから、評判になったのよ」


「へえ。それは食べてみたいな」


 総一の顔が明るくなった。


 美人で料理上手。


 ますます興味が湧いてくる。


 エリナバールに場所を教えてもらうと、総一は足取りも軽く食堂へ向かった。


     ◇


 アンリの食堂は、里の中心から少し離れた場所にあった。


 木造の小さな建物で、入口には手書きの看板が掛けられている。


 扉を開けると、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。


「いらっしゃいませ!」


 奥から聞こえてきたのは、よく知った声だった。


「あら、総一さん!」


「やあ、アンリちゃん。会いに来ちゃった」


「ふふっ、ありがとうございます。お食事ですか?」


「もちろん。それと、アンリちゃんの顔も見たくてね」


「もう、総一さんったら」


 アンリは笑いながら、空いている席へ案内してくれた。


 総一が注文したのは、鹿肉を使った煮込み料理だった。


 運ばれてきた皿には、柔らかそうな肉と野菜がたっぷり盛られている。


 一口食べた総一は、思わず目を見開いた。


「うまい!」


「本当ですか?」


「ああ。鹿肉ってもっと硬いと思ってたけど、すごく柔らかいな」


「下ごしらえに少し時間をかけてるんです」


「いやあ、料理もうまくて美人なんて、アンリちゃんは完璧だな」


「ふふっ、褒めすぎですよ」


 アンリは照れたように笑い、総一の向かいに腰を下ろした。


 ちょうど客足が落ち着いたところらしい。


 総一はその笑顔を眺めながら、思い切って口を開いた。


「ねえ、アンリちゃん。今度、俺とデートしようよ」


「デートですか?」


「そう。二人きりで森を散歩したり、美味しいものを食べたりさ」


「ふふっ、私のお店じゃ駄目ですか?」


「それじゃアンリちゃんが働いてるだろ。俺は二人きりになりたいんだよ」


「もう、総一さんったら」


 アンリは楽しそうに笑った。


「考えておきますね」


「本当? 期待していい?」


「さあ、どうでしょう?」


 いたずらっぽく微笑むアンリに、総一の頬が緩んだ。


 そのとき、アンリがふと思い出したように口を開いた。


「そういえば総一さん、魔族について調べてるんでしたっけ?」


「ん? ああ、そうなんだ。何か知ってるの?」


「実は、今朝のことなんですけど……」


 アンリは少し声を落とした。


「アネポワールを採りに森へ行ったんです。そしたら、魔族らしき人たちを見かけたんですよ」


「魔族?」


「はい。何人かいたんですけど、その人たちが突然現れた空間の中へ、次々と消えていったんです」


 総一は手にしていたグラスを置いた。


「……空間に消えた?」


「ええ。何もなかった場所に入口みたいなものが現れて、そこに入っていったんです」


「それって、エルフの里に入るときと似てないか?」


「私もそう思いました。同じような魔法なのかもしれません」


 総一の表情から、先ほどまでの緩んだ笑みが消えた。


 何人もの魔族が出入りする、隠された空間。


 偶然通りかかっただけとは考えにくい。


「アンリちゃん。その場所、覚えてる?」


「はい。いつもアネポワールを採りに行く場所の近くですから」


「なるほど……」


 もし魔族の拠点があるのなら、薫の手がかりにつながるかもしれない。


 総一は少し考え込み、それからアンリへ笑いかけた。


「ありがとう。大事なことを教えてもらったよ」


「お役に立てたなら嬉しいです」


 総一は残っていた料理を食べ終えると、席を立った。


「また来るよ。デートの返事も聞きたいしね」


「ふふっ、お待ちしてます」


     ◇


 夕方。


 ゴンザットの研究室では、興奮した声が響いていた。


「おいおい、本当に変化してるぞ!」


 机の上の試料には、これまで見られなかった小さな結晶が生まれていた。


 マリンは魔素の流れを調整しながら、落ち着いた様子で答える。


「やっぱりね。単純に魔素を増やすだけじゃ駄目なのよ。一定の流れを保つ必要があるみたい」


「それが分かれば大きな前進だ!」


 ボンズも驚きを隠せない。


 さらに、レベルストーンに蓄えられた魔力を一定量ずつ取り出す実験でも、マリンは安定した制御に成功していた。


「信じられん……。一日でここまで進むとはな」


 ゴンザットは試料を眺めながら、何度も頷いた。


「やっぱりお前に頼んで正解だったよ」


「まだ仮説が確かめられただけよ。完成したわけじゃないんだから」


「それでも十分だ!」


 ゴンザットの目は、研究を始めたばかりの少年のように輝いていた。


     ◇


 その頃。


 エルフの里から離れた場所で、一人の魔族が報告を行っていた。


「ジャネスト様。田端総一たちが、レベルスマウンテンの麓にあるエルフの里へ入った模様です」


「……エルフの里だと?」


 ジャネストの表情が険しくなった。


「はい。ただ、特殊な結界があるため、内部の様子までは確認できません」


「何をしているのか分からないのか?」


「申し訳ありません」


 ジャネストは黙り込んだ。


 脳裏に浮かぶのは、ビジュール近郊の拠点で対峙した男の姿だった。


 強力な雷撃をものともせず、氷の槍を素手で砕いた人間。


 あの男だけは、常識で考えてはいけない。


 しかも、レベルスマウンテンの近くでは、リトリスが新しい拠点を建設している。


 偶然なのか。


 それとも、何かを掴んでいるのか。


「……まずいな」


「何か問題でも?」


「いや、こちらの話だ」


 ジャネストはしばらく考え込み、低い声で命じた。


「キャナルに伝えろ。監視は続けろ。ただし、絶対に手を出すな」


「承知しました」


「それと、リトリスにも警告しておけ。あの男が近くにいるとな」


 部下が去ったあと、ジャネストは深く息を吐いた。


「……よりによって、あの場所に現れるとはな」


 彼はまだ知らない。


 その日の朝、建設中の拠点へ出入りする魔族の姿が、一人のエルフに目撃されていたことを。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


今回は美人エルフのアンリに会いに行った総一。


相変わらずの女好きですが、まさかそこで魔族の情報が手に入るとは(笑)。


一方、マリンたちの研究も大きく前進しました。


そして再び登場したジャネスト。


どうやら総一たちの近くで、魔王軍が新たな動きを見せているようです。


果たして総一は、この手掛かりから薫へ近づくことができるのでしょうか。


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次回もよろしくお願いします!

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