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『最強探偵、異世界で攫われた相棒を探す旅に出る』  作者: れいじ
第3章 レベルスマウンテン編

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第45話 レベルストーンの誕生

レベルストーンの正体を知り、驚きを隠せない総一たち。


ゴンザットが長年の研究で突き止めた、驚くべき秘密とは?


今回はレベルストーンの謎に迫ります。

「ちょっと待って! もう一回説明して!」


 マリンの声が研究室に響き渡った。


 ゴンザットは机の上に置いた容器を指差し、楽しそうに笑っている。


「だから、レベルストーンはマナバブーンの排泄物からできてるんだ」


「そんな馬鹿な話、信じられるわけないでしょ!」


「まあ、そうだろうな。俺も最初は信じられなかった」


 ゴンザットはそう言うと、棚の奥からいくつかの容器を取り出した。


「口で説明するより、実物を見せた方が早い」


 机の上に五つの容器が並べられる。


 最初の容器には、先ほど見せられた黒紫色の塊が入っていた。


「これが最近採取したものだ」


「それはもう分かったわよ」


 マリンは露骨に顔をしかめた。


「俺も今日、似たようなのを掴んだぞ」


 総一が言うと、マリンは嫌そうに睨んだ。


「思い出させないでよ。私は顔に浴びたんだから」


「そうだったな」


「他人事みたいに言わないで!」


 ゴンザットは二人のやり取りを面白そうに眺めていたが、次の容器を手に取った。


「これは一年前のものだ」


 中には同じような黒紫色の塊が入っていた。ただし、表面はすっかり硬くなり、石に近い質感へ変わっている。


「もう排泄物には見えませんね」


 サリーが少し驚いたように言う。


「実際、かなり硬い。だが、まだまだレベルストーンとは呼べない」


 続いて三つ目の容器が置かれた。


「こっちは十年前のものだ」


 黒紫色は薄くなり、表面の一部が透き通り始めていた。


「……綺麗になってる」


 マリンが思わず身を乗り出す。


「そうだろ?」


 ゴンザットの顔がほころぶ。


「魔素を浴び続けることで、少しずつ内部の状態が変わっていくんだ」


「十年でここまで変化するんですか?」


 シンが尋ねる。


「環境にもよる。魔素の濃さによって変化の速さが違うからな」


 ゴンザットは四つ目の容器を持ち上げた。


 そこには、わずかに紫色を残した半透明の石が入っていた。


「これは採掘場で見つけたものだ。正確な年代は分からないが、状態から考えて五十年以上は経っていると思う」


「ほとんど宝石だな」


 ナバルが感心したように呟く。


「これを拾ったら、普通に売れそうだ」


「残念だが、まだレベルストーンとしての価値はないぞ」


「売るとは言ってないだろ」


「顔に書いてあった」


「……よく見てるな」


 総一が笑うと、ナバルは肩をすくめた。


 最後にゴンザットが取り出したのは、完全に透明な石だった。


「そして、これがレベルストーンだ」


 マリンは並んだ五つの容器を順番に眺めた。


 黒紫色の塊が、少しずつ硬くなり、色を失い、最後には透明な石へ変わっている。


「……本当だったのね」


「ようやく信じたか?」


「こんなもの見せられたら、信じるしかないじゃない」


「自然の環境では、およそ百年かかると考えている」


「百年ですか……」


 サリーが目を丸くする。


「そんなに長い間、形が残っているものなんですね」


「いや、普通なら残らない」


 ゴンザットは近くの装置を指差した。


「魔素がなければ、いずれ分解されて消えてしまう。ここにあるものは、常に魔素を供給して保存しているんだ」


「じゃあ、山のどこに落ちていてもレベルストーンになるわけじゃないんですね」


 シンが尋ねる。


「その通り。長期間、濃い魔素を浴び続けられる場所でなければならない」


 総一は腕を組んだ。


「なるほどな。だからレベルスマウンテンで見つかるわけか」


「そういうことだ」


 そこで総一は、もう一つ気になっていたことを尋ねた。


「でも、それなら昔からあの山にマナバブーンがいたってことだよな?」


「もちろんだ」


 ゴンザットが頷く。


「五百年前どころじゃない。ずっと昔からいたはずだ」


「だったら、なんでエルフたちは気づかなかったんだ?」


「それは俺から説明します」


 ボンズが一枚の地図を広げた。


 レベルスマウンテンの地形が細かく描かれ、いくつもの場所に印がつけられている。


「昔のマナバブーンは数が少なく、山の中層辺りに隠れるように暮らしていたと考えられています」


「隠れていた?」


「ええ。あいつらは頭がよく、警戒心も強いんです。エルフが近づけば、先に気づいて姿を隠していたんでしょう」


「そういえば、俺たちも最初は木の上から見られてたな」


 総一が思い出す。


「すぐには襲ってこなかったですね」


 シンも頷いた。


「あれは相手を観察していたんだと思います」


 ボンズは地図の一角を指差した。


「実は、昔の採掘場もマナバブーンの生息地の一つだったんです」


「採掘場が?」


「はい。エルフが頻繁に出入りするようになってからは、あまり近づかなくなったようですが、完全に来なくなったわけじゃありません」


「魔素が濃いから?」


 マリンが尋ねる。


「その通りです。ときどき戻ってきて、そこで排泄する。その一部が長い年月をかけてレベルストーンになったと考えています」


 シンが地図を見つめた。


「でも、今はかなりの数がいますよね?」


「昔とは状況が違うんです」


 ボンズは山の上部へ指を動かした。


「マナバブーンは繁殖力がそれほど高くありません。ただ、あの山には天敵がいないんです。長い年月をかけて少しずつ増え、生息域を広げていきました」


「今じゃ山の至るところにいるってわけか」


 ナバルが呟く。


「ええ。そして数が増えるにつれて、エルフを見つけると襲うようになったんです」


「しかも、エルフの得意な魔法を食べる」


 マリンが苦々しそうに言った。


 ボンズが頷く。


「そうなんです。魔法で反撃するほど、向こうに餌を与えることになります」


「厄介な相手だな。あの拳も相当な威力だったぞ」


 ナバルは自分の盾を思い出したのか、顔をしかめた。


「騎士の盾がへこむなんて、そうあることじゃない」


「シンの剣も簡単には通らなかったもんな」


 総一が言う。


「ええ。あれだけ頑丈で、しかも魔法まで食べるとなると、普通の冒険者では厳しいと思います」


 ゴンザットは地図を眺めながら口を開いた。


「今では山の上部へ入るエルフもほとんどいない。どれだけレベルストーンが残っているのか、俺たちにも分からん」


「だったら、まだ大量に眠っている可能性もあるんですね」


 シンが尋ねる。


「可能性はある。ただし、期待しすぎない方がいい。さっきも言ったように、濃い魔素を浴び続けられる場所は限られてるからな」


 総一は地図を見ながら、ふと首を傾げた。


「そういや、あんたたちはよく採掘場へ行ってるんだろ? どうやってあいつらを避けてるんだ?」


「夜に行くんですよ」


 ボンズが答えた。


「夜?」


「マナバブーンは昼間に活動して、夜は眠ります。それも群れごとに決まった場所で、集団になって眠るんです」


「へえ。あいつらにも生活習慣があるんだな」


「それに、群れごとに縄張りがあります。長年観察していると、寝床の場所や縄張りの境界が分かってくるんですよ」


「つまり、そこを避けて通るわけか」


「そうです。ただし、絶対に安全というわけじゃありません」


 ゴンザットが笑いながら口を挟んだ。


「俺も一度、寝てるやつを起こしちまってな。あのときは死ぬかと思ったぞ」


「じいちゃんが余計なことするからだろ」


「珍しい石が落ちてたんだ。拾いたくなるだろ?」


「だからって寝床に近づくなよ」


 ボンズが呆れたようにため息をつく。


「よく八百年も生きてこられたな」


 ナバルが言うと、ゴンザットは得意げに笑った。


「運がいいんだよ、俺は」


「それは研究者としてどうなんだ?」


「運も実力のうちだろ?」


「便利な言葉だな」


 研究室に笑い声が広がった。


 その後、ゴンザットはレベルストーンの入った箱へ視線を戻した。


「さて、ここからが今の研究の話だ」


「まだあるの?」


 マリンが尋ねる。


「むしろ、ここからが本題だ」


 ゴンザットの表情が変わった。


「レベルストーンは魔力を増幅させるだけじゃない。大量の魔力を蓄え、必要に応じて放出することもできる」


「そこまでは私も知ってるわ」


「だろうな。だが、俺たちが今やりたいのは、その先だ」


 ゴンザットは最初に見せた黒紫色の塊を指差した。


「自然の中で百年かかるなら、人の手でその時間を縮められないかと思ってな」


「……まさか」


「そう。レベルストーンを人工的に作るんだ」


 シンとサリーが顔を見合わせた。


「そんなことができるんですか?」


「まだ分からん」


 ゴンザットはあっさり答えた。


「ただ、材料は分かった。必要な条件もある程度見えてきた。あとは、それを人工的に再現できるかどうかだ」


「もし成功したら、すごいことですよね」


 サリーが言う。


「今まで山で探すしかなかったものを、作れるようになるんですから」


「そうだろ?」


 ゴンザットが嬉しそうに頷いた。


 しかし、シンは少し考え込んでいた。


「……でも、それは魔族にとっても同じですよね」


 その言葉に、総一がシンを見た。


「どういうことだ?」


「ベルガたちは大量のレベルストーンを集めていました。もし人工的に作れるようになったら、魔族も大量に手に入れられるということです」


 研究室に、わずかな沈黙が落ちた。


「確かにな」


 ナバルが腕を組む。


「魔王軍が欲しがってるものを、いくらでも作れるようになったら厄介だ」


「だからといって、研究をやめるわけにもいかん」


 ゴンザットが静かに言った。


「まだ成功もしてない研究だ。それに、使い道を決めるのは研究者だけじゃないからな」


 総一は透明なレベルストーンを見つめた。


 ベルガがなぜこれほどの数を必要としているのか。


 その答えは、まだ分からない。


「まあ、今は研究を完成させる方が先だな」


 ゴンザットはそう言って、再びいつもの笑みを浮かべた。


「問題は、濃い魔素を安定して供給することだ。アルベルにも協力してもらってるが、簡単にはいかなくてな」


「それだけの魔素を維持するのは大変でしょうね」


 マリンが頷く。


「だろ? しかも、どれだけ濃くすればいいのかも分かってない」


「……面白い研究ではあるわね」


 その言葉を聞いた瞬間、ゴンザットの顔が明るくなった。


「そう思うか?」


「ええ。成功するかどうかは別だけど」


「十分だ」


 ゴンザットは満足そうに笑った。


 そして、マリンの顔をじっと見つめる。


「そこで、お前に頼みがある」


「……何よ」


「俺たちの研究に協力してくれないか?」


 マリンは一瞬、目を丸くした。


 ゴンザットの目は、少年のように輝いていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ついに明らかになったレベルストーンの誕生の秘密。


そして、ゴンザットが目指す人工生成の研究は成功するのでしょうか?


次回もお楽しみに!


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