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『最強探偵、異世界で攫われた相棒を探す旅に出る』  作者: れいじ
第二章 宝石の街と透明な石

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第26話 同じ山

透明な石を巡る謎を追い続ける総一たち。


しかし、まだ分からないことばかり。


そこで総一は、一度それぞれが別々に情報を集めることにします。


バラバラに見えていた手掛かりは、どこにつながっていくのか。


今回もよろしくお願いします!

翌朝。


 王家専用宿の一室には、総一たちが集まっていた。


 テーブルの上にはビジュール周辺の地図が広げられている。


「マリン、ですか?」


 シンが聞き返した。


「昨日やっと名前を聞けた」


 総一は椅子にもたれながら答える。


 二日前、透明な石を一つずつ選んでいた謎の女。そして昨日、まったく別の姿で再び現れた女。


 変身魔法を使えること。


 透明な石を探していること。


 目的については何も話さなかったこと。


 総一は分かっている範囲を仲間に説明した。


「その方もレベルストーンを探しているのでしょうか?」


 サリーが首を傾げる。


「たぶんな。ただ、本物を知ってるかどうかまでは分からない」


「敵の可能性は?」


 シンの問いに、総一は少し考えた。


「今のところは何とも言えないな。少なくとも、最近になって石を片っ端から買ってる連中とは動き方が違う」


「総一さんは信用してるんですか?」


「美人だからな」


「それ、信用していい理由なんですか?」


 シンが困った顔をする。


「総一の場合、美人ってだけで判断が甘くなりそうだがな」


 ナバルまで口を挟み、サリーが小さく笑った。


「お前ら、俺を何だと思ってるんだよ」


 その時、扉がノックされた。


 入ってきたのはモネだった。


「朝から楽しそうね」


「俺がいじめられてた」


「それならいつものことでしょ」


「味方がいない」


 総一が肩を落とす。


 だが話が始まれば、空気はすぐに変わった。


 モネによると、透明度の高い石は相変わらず高値で取引されている。それどころか、大きな宝石店だけではなく、小さな店や職人のところまで買い手が現れ始めているという。


「このままだと、本当に街から透明な石がなくなるわよ」


「急いだ方がよさそうですね」


 シンの表情が引き締まる。


 総一は地図を見ながら、それぞれに目を向けた。


「じゃあ今日は分かれて調べよう。シンとサリーはギルド。採掘場と魔物の動きを調べてくれ」


「分かりました」


「私も行きます」


「モネは宝石の流れを追える?」


「それなら任せて」


 最後に総一はナバルを見る。


「俺は?」


「御者仲間に聞いてみてくれないか。最近、変な客や荷物を街の外へ運んでないか」


「馬車のことなら俺に任せろ」


「俺は街を回って、昨日の買い手をもう少し追ってみる」


 方針が決まり、一行は宿を出た。


     ◇


 午前の宝石街は、すでに多くの人で賑わっていた。


 総一は昨日までに回った店を中心に歩いていたが、怪しい買い手はなかなか現れない。


 そのまま大通りを抜けようとした時だった。


「総一」


 背後から女の声がした。


 振り返る。


 見知らぬ女が立っている。


 昨日より少し年上に見え、黒髪を後ろでまとめている。顔も体格も違う。


 総一は数秒見つめた。


「……マリン?」


「なんで分かるの?」


「いや、今俺の名前呼んだだろ」


「……そうだった」


 マリンが目を逸らした。


「今日は簡単だったな」


「忘れて」


「昨日はあんなに苦労したのに」


「忘れてって言ってるでしょ」


 総一は笑いながら近づいた。


「で、今日はどうした? 俺に会いたくなった?」


「違う」


 即答だった。


「昨日から変なのにつけられてるの」


 総一の笑みが消えた。


「いつから?」


「あなたと別れて少ししてから。今日もいる」


 マリンが視線を動かさずに言う。


「後ろの露店。青い服の男」


 総一は振り返らない。


 近くの店先に置かれた銀製の皿へ視線を落とす。


 磨かれた表面に、通りの景色がぼんやり映っていた。


 露店の前に一人の男がいる。


 商品を眺めているように見えるが、何も買おうとはしていない。


「……あいつか」


「あなたを見張ってた人じゃないの?」


「その可能性はあるな」


「心当たりがあるの?」


「少しだけな」


 総一は歩き出した。


「来て」


「どこへ?」


「せっかく向こうからついてきてくれてるんだ。案内してもらおう」


 マリンが眉を寄せる。


「捕まえないの?」


「あいつ一人捕まえても仕方ないだろ。誰に報告するのか、どこへ戻るのか。その方が大事だ」


 マリンは横を歩く総一をちらりと見た。


「……意外と考えてるのね」


「意外は余計だ」


「昨日は女の匂いを覚えてるとか言ってた人だし」


「まだ気にしてたのかよ」


 マリンの口元がわずかに緩んだ。


 二人はそのまま通りを歩く。


 監視役も距離を保ちながら動いていた。


 しばらくして、マリンが声を落とす。


「たぶん、あいつらと関係あると思う」


「あいつら?」


「私が住んでる山の近くに、半年くらい前から変な連中が住みついてるの」


 総一の足がわずかに遅くなる。


「半年?」


「それくらい。それから山の魔物も増えた。前はもっと静かな場所だったのに」


「それで石を探し始めた?」


 マリンが総一を見る。


「……どうしてそう思うの?」


「半年前から透明な石を探してる奴がいるって聞いてた」


 一瞬、マリンが黙った。


 それだけで十分だった。


「やっぱりマリンだったか」


「本当に嫌な人ね」


「褒め言葉として受け取っとく」


「褒めてない」


 総一はそれ以上聞かなかった。


 なぜ透明な石が必要なのか。


 山の連中と何があったのか。


 マリンが話さない以上、今は無理に聞く必要はない。


 ただ、一つだけ新しい情報が増えた。


 半年前。


 マリンが透明な石を探し始めた時期と、山に何者かが住みついた時期は同じだった。


     ◇


 夕方。


 総一が宿へ戻ると、全員がすでに集まっていた。


「どうだった?」


 総一が椅子へ座る。


 最初にシンが口を開いた。


「ギルドで調べました。最近、ビジュールの北西にある山の周辺で魔物の目撃が増えています」


「採掘場だけじゃないんです」


 サリーが続ける。


「山道で魔物に襲われたという報告も増えているそうです」


 総一は黙って地図を見る。


 次はモネだった。


「こっちも少し分かったわ。買われた透明な石の一部が、そのまま街の外へ運ばれてるみたい」


「行き先は?」


「そこまでは。でも北門を使ったって話は聞けた」


 そしてナバルが地図へ身を乗り出す。


「こっちも妙な話を聞いた」


 御者仲間に聞いて回ったところ、ここ数か月、街の外へ荷物を運ぶ妙な依頼が何度かあったという。


「行き先は北西だ。山の手前まで運んだら、そこで荷物を降ろせって言われるらしい」


「誰が頼んでる?」


「毎回違うそうだ。男だったり女だったり、年寄りだったこともあるらしい」


 総一の目が細くなる。


 変身魔法。


 透明な石。


 魔物。


 馬車。


 そして半年前に山へ現れた謎の集団。


 総一は地図の上で指を動かした。


 シンたちが聞いた魔物の目撃地点。


 モネが突き止めた北門。


 ナバルが聞いた馬車の行き先。


 そして、昼間マリンが話していた山。


 全部が重なる。


「総一さん……」


 シンも気づいたようだった。


 総一は地図の一点で指を止める。


「……ここだな」


 透明な石を巡る謎の先に、初めてはっきりとした場所が浮かび上がった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


今回はそれぞれが集めた情報が、ようやく一つにつながりました。


マリンが話した「半年前に山へ現れた謎の集団」。


増え始めた魔物、街の外へ運ばれる透明な石、そして北西へ向かう荷物。


どうやら総一たちが追ってきた謎の答えは、あの山にありそうです。


そして、マリン自身も今回の事件と無関係ではなさそうですね。


次回、総一たちはどう動くのか。


引き続きよろしくお願いします!

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