↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『最強探偵、異世界で攫われた相棒を探す旅に出る』  作者: れいじ
第二章 宝石の街と透明な石

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/33

第20話 モネという女

ビジュールでの調査を始めた総一。


昨日出会ったモネと一緒に宝石の仕入れ先を回ることになります。


美女との街歩きに浮かれる総一ですが、もちろん目的は忘れていません。


品薄になっている透明な石。


その原因を追っていくと、どうやら街の外で異変が起きているようです。

翌朝。


 総一は王家専用の宿を出ると、正面玄関の前で少しだけ伸びをした。


 ビジュールの朝は早い。


 大通りではすでに商人たちが店を開け、荷車が行き交っている。宝石店の窓には朝日が差し込み、磨かれた石が昨日よりも強く輝いて見えた。


「総一さん、本当に一人で行くんですか?」


 後ろからシンの声がする。


「一人じゃない。モネと一緒だ」


「それを聞いて余計に心配になりました」


「何が?」


「いろいろです」


 総一は肩をすくめた。


 シンたちは今日は冒険者ギルドへ向かう予定だった。


 ビジュール周辺で魔王軍らしい動きがないか、最近の依頼や目撃情報を調べるためだ。


 一方、総一は昨日知り合ったモネについて、宝石の仕入れ先を回ることになっていた。


 もちろん目的は透明な石について調べること。


 そのはずだった。


「お待たせ」


 聞き覚えのある声に振り返る。


 モネが歩いてきた。


 昨日とは少し違う服装だった。


 動きやすそうな細身のパンツに、身体へ沿う薄手の上着。派手ではないのに、長い脚と細い腰が自然に目に入る。


 総一は数秒黙った。


「……今日もいい街だな」


「街を見て言ってる?」


「もちろん」


「今、私しか見てなかったけど」


 モネが呆れたように笑う。


 シンは何も言わず、総一の肩を軽く叩いた。


「頑張ってください」


「何をだよ」


「いろいろです」


 昨日と同じ言葉を残し、シンはサリーたちの方へ向かっていった。


     ◇


「まずは西側の商会からね」


 モネは迷いなく大通りを歩いていく。


 総一はその隣についた。


「毎日こんな感じ?」


「だいたい。石を見て、値段を交渉して、買ったものを店へ卸す」


「結構歩くんだな」


「宝石は向こうから来てくれないもの」


「美人なら向こうから男が寄ってくるけどな」


「朝から元気ね」


「褒め言葉?」


「好きに受け取って」


 一軒目の商会では、店主がいくつかの石を並べた。


 赤。


 青。


 淡い緑。


 どれも総一には綺麗な宝石にしか見えない。


 モネは一つずつ手に取り、光へかざしていく。


「これは駄目」


「え?」


 店主が眉を上げる。


「表面は綺麗だけど、中に細い傷がある」


 総一も覗き込む。


「どこ?」


「ここ」


 指先で示されても分からない。


「……見えん」


「でしょうね」


 モネは少し楽しそうだった。


「こっちは?」


「悪くない。でもこの値段では買わないわ」


 そこから交渉が始まった。


 総一は横で黙って聞いていたが、思っていた以上に容赦がない。


 店主が値段を上げれば、その理由を一つずつ潰していく。


 石の大きさ。


 傷。


 最近の相場。


 他店の仕入れ値。


 最後には店主の方が苦笑していた。


「相変わらず厳しいな、モネ」


「商売ですから」


 店を出ると、総一は感心したように口笛を吹いた。


「強いな」


「何が?」


「交渉」


「私の顔しか見てないと思ってた」


「失礼だな。ちゃんと仕事も見てたぞ」


「それは意外ね」


「俺を何だと思ってるんだ」


 モネ思わずが吹き出した。


     ◇


 午前中だけで三軒の商会を回った。


 四軒目へ向かう途中、モネが足を止める。


「少し休まない?」


「賛成」


 二人が入ったのは、大通りから外れた小さな食堂だった。


 高級店が多いビジュールでは珍しく、値段も比較的まともだった。


 総一は料理表を見て安心した。


「この街にも良心ってあったんだな」


「昨日から値段ばかり気にしてるわね」


「金は大事だぞ」


「分かるけど、あなた見た目より細かいのね」


「褒められてる気がしないな」


 料理が運ばれてくる。


 煮込んだ肉と野菜。


 焼きたてのパン。


 総一は一口食べて頷いた。


「うまいな」


「ここは昔から来てるの」


「モネの行きつけか」


「そう」


「それ聞いたらもっと美味く感じてきた」


「あなたって本当に分かりやすいわね」


 モネは笑いながら水を飲んだ。


 しばらく食事を続けていると、モネがふと総一を見る。


「そういえば」


「ん?」


「あなた、どうして透明な石を探してるの?」


 総一の手が少し止まった。


「仕事?」


「まあ、そんなところ」


「昨日から見てると、商売には見えないけど」


「鋭いな」


「これでも人を見る仕事もしてるから」


 総一は少し迷った。


 レベルストーンのことまで話す必要はない。


 ただ、全部隠す必要もない気がした。


「人を探してる」


「人?」


「薫っていう女だ」


 モネの目が少し変わる。


「恋人?」


「相棒」


「相棒ね」


 妙に含みのある言い方だった。


「何だよ」


「別に」


「顔が別にじゃないぞ」


「長い付き合い?」


「まあな」


 総一はパンをちぎった。


「仕事もずっと一緒だった。腐れ縁みたいなもんだよ」


「それで、その人を探すために石が必要なの?」


「直接じゃない。でも、手掛かりになるかもしれない」


「大切な人なのね」


 総一は一瞬だけ黙った。


「面倒な女だよ」


「答えになってないわね」


「そういうところも鋭いな」


 モネはそれ以上聞かなかった。


 ただ、さっきまで総一を見る目とは少し違っていた。


「モネは?」


「何が?」


「男」


「随分急ね」


「俺だけ聞かれたら不公平だろ」


「いないわよ」


 総一の顔が明るくなる。


「本当?」


「その反応、失礼じゃない?」


「嬉しくて」


「仕事ばかりしてるから、長続きしないの」


「じゃあ俺なら」


「あなたはまず女性を見る回数を減らした方がいいわね」


「厳しいな」


「仕事柄、人を見る目はあるつもりだから」


「俺、結構いい男だぞ」


「自分で言う人は信用しないことにしてる」


 また軽くあしらわれる。


 それでも総一は楽しそうだった。


     ◇


 午後も何軒か仕入れ先を回った。


 総一はモネの横で話を聞きながら、少しずつ違和感を覚えていた。


 透明な石。


 昨日の店でも話に出ていた。


 今日訪れた商会でも、扱いが少ない。


 だが、まだ判断するには材料が足りない。


 夕方。


 最後に訪れたのは、街の外れにある小さな卸商だった。


「悪いな、モネ」


 店主は申し訳なさそうに頭をかいた。


「今日も透明なやつはない」


「また?」


 モネの表情が曇る。


「少しでもいいのよ」


「無理だ。入ってこないんだから仕方ない」


「他の商会も似たようなことを言ってたわ」


「そりゃそうだろうな」


 店主はため息をついた。


「例の採掘場が止まったままなんだから」


 総一の視線が上がった。


「採掘場?」


 店主が初めて総一を見る。


「誰だ?」


「知り合いよ」


 モネが答える。


「採掘場がどうしたの?」


「聞いてないのか?」


「詳しくは」


 店主は周囲を気にするように声を落とした。


「少し前から魔物が出るようになったらしい」


 モネの眉が寄る。


「魔物?」


「それも一匹や二匹じゃない。採掘に入れなくなってるって話だ」


 総一は黙ったまま聞いていた。


 透明な宝石の品薄。


 そして、その石が採れる場所で起きている異変。


 偶然かもしれない。


 だが、総一の中で二つの話がゆっくりとつながり始めていた。


 店を出ると、モネが隣を歩く総一を見る。


「急に静かになったわね」


「ちょっと考えてた」


「何を?」


 総一は夕暮れの街並みへ目を向けた。


「その採掘場」


 モネも足を止める。


「気になる?」


「かなりな」


 宝石の街で起きている小さな異変。


 どうやら、ただの品薄では終わらなさそうだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


モネと仕入れ先を回る中で見えてきた、透明な石の品薄。


そして最後に出てきた「魔物が現れ、採掘できなくなった採掘場」。


ただ石が手に入らなくなっただけなのか。


それとも、そこには何か別の理由があるのか。


総一の探偵としての勘も、少しずつ動き始めています。


次回、採掘場の異変をさらに追っていきます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。