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『最強探偵、異世界で攫われた相棒を探す旅に出る』  作者: れいじ
第一章 攫われた相棒

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第16話 レベルストーン

第16話です。


捕らえたダイアが持ちかけた取引。


魔王の居場所も、薫の居場所も知らないという彼女が差し出したのは、一つの透明な石でした。


その石から、総一たちの次の目的地が見えてきます。


それでは、お楽しみください。

「あなたが欲しがっているものを、私は持っている」


 ダイアはそう言って、総一をまっすぐ見つめた。


 周囲では戦いがほぼ終わっていた。


 バリオスを失った魔族たちは戦意をなくし、シンたちによって武器を取り上げられている。


 だが、総一にとって重要なのはそちらではなかった。


「薫の居場所を知ってるのか?」


「知らないわ」


 即答だった。


 総一の眉がわずかに動く。


「魔王の居場所は?」


「それも知らない」


「……お前、さっき取引って言ったよな?」


「言ったわ」


「今のところ、何の役にも立ってないぞ」


 ダイアは気にした様子もなく、小さく息を吐いた。


「魔王様の居場所を知っている魔族なんて、ごく一部よ。私が知らないものは教えられないでしょう?」


 嘘をついているようには見えない。


 総一は黙ってダイアを見る。


 長年探偵をやってきた。


 嘘をつく人間は何人も見てきたが、少なくとも今の言葉に不自然さは感じなかった。


「じゃあ、何を知ってる?」


「その前に一つ」


 ダイアが総一の顔をじっと見る。


「以前、私を尾けていたのもあなたね?」


「……気づいてたのか?」


「確信はなかったわ。誰かに見られているような感覚があっただけ」


 総一は少し驚いた。


 あの時は気配遮断を使っていた。


 支部の中でも、総一のすぐ近くを魔族が通り過ぎている。それでも誰一人として気づかなかった。


「大したもんだな」


「これでも諜報が仕事だから」


「諜報?」


「私はこの支部の所属じゃない。マリア様の直属よ。バリオス様のもとには派遣されていただけ」


 初めて聞く名前だった。


「マリア?」


「私の上司。それ以上は教えない」


「ケチだな」


「敵同士でしょう?」


「それもそうか」


 総一が肩をすくめる。


 捕まっているというのに、ダイアは妙に落ち着いていた。


 力で逃げられないことは理解している。


 だからこそ、別の方法を探している。


 総一はそう感じていた。


「それで、取引材料ってのは?」


「これよ」


 ダイアがゆっくりと懐へ手を入れる。


 総一はその動きを警戒したが、取り出されたのは武器ではなかった。


 小さな透明の石。


 光を受けて淡く輝いている。


「宝石……ですか?」


 近くまで来ていたサリーが首を傾げる。


 シンも石を見つめた。


「綺麗ですね。かなり高価なものに見えます」


「そうでしょうね。人間はこれを宝石として扱っているから」


「違うのか?」


 総一が尋ねる。


 ダイアは透明な石を指先で摘まんだ。


「魔石よ」


「これが?」


 シンが驚く。


「魔石は黒いはずです」


「それが人間の常識ね」


 ダイアは薄く笑った。


「でも、本当は逆。魔石は純度が高くなるほど色を失っていく。あなたたちが普段使っている黒い魔石は、純度の低いものよ」


 ナバルが眉を寄せる。


「待て。なら人間は、これほど純度の高い魔石を宝石だと思って売り買いしているというのか?」


「そういうこと」


「なぜ今まで誰も気づかなかった?」


「使えないからよ」


 ダイアは石を掲げた。


「正確には、普通の魔法使いでは扱えない。純度が高すぎる魔石から力を引き出すには、それに見合うだけの魔法力が必要になるの」


 総一は透明な石を見つめる。


 見た目だけなら、本当にただの宝石だった。


「使える奴が使ったら?」


「桁違いの力を発揮する」


 ダイアの声から、わずかに軽さが消えた。


「大規模な魔法にも使える。普通の魔石を大量に用意しなければならないような魔法でも、これなら話が変わる」


「……なるほどな」


 総一の脳裏に、一つの光景が浮かんだ。


 薫が攫われた夜。


 突然現れた魔王。


 そして、薫を連れて消えた。


「転移にも使えるのか?」


 ダイアが一瞬だけ黙った。


 それだけで十分だった。


「使えるんだな」


「本当に嫌な男ね」


「探偵だったんでね」


 ダイアが小さく息を吐いた。


「魔王軍では、特に純度の高いものをレベルストーンと呼んでいるわ」


「レベルストーン……」


 シンが繰り返す。


「人間側では聞いたことがありません」


「当然よ。上層部でも知る者は限られているもの」


 総一は腕を組んだ。


「それを魔王軍が集めてる?」


 今度はダイアの目がわずかに細くなった。


「察しがいいわね」


「何のためだ?」


「知らない」


「またそれか」


「本当に知らないのよ。ただ、上から集めるよう指示が出ている。それもかなりの量をね」


 総一の表情から笑みが消えた。


 薫が攫われた。


 そして魔王軍は、莫大な力を秘めた魔石を集めている。


 関係があると決まったわけではない。


 だが、無視するには引っかかる。


「薫と関係あるのか?」


「それは私に聞かれても分からないわ」


 ダイアはそう言うと、突然、透明な石を総一へ放った。


「ほら」


「おっと」


 総一が反射的に受け取る。


 その瞬間だった。


 ボンッ!


 足元から白い煙が一気に広がった。


「総一さん!」


「ダイア!」


 シンの声が響く。


 総一はすぐに煙の外へ飛び出した。


 視線を巡らせる。


「……速いな」


 すでにダイアは森の奥にいた。


 しかも、かなり遠い。


 煙幕と同時に、瞬間的に速度を跳ね上げる魔法を使ったらしい。


 あっという間に、その姿が木々の向こうへ消えた。


 遅れてシンたちが煙から出てくる。


「追いましょう!」


 シンが剣を握る。


 だが総一は動かなかった。


「いや、いい」


「でも!」


「追えば捕まえられるかもしれんが……」


 総一は手のひらを開いた。


 そこには、ダイアが投げた透明な石が残っている。


「こっちはちゃんと置いていった」


 ナバルが呆れたように総一を見る。


「お前、あれだけ強いくせに逃げられるんだな」


「……次は捕まえる」


「少し悔しそうですね」


 サリーが小さく笑った。


「うるさいな」


 総一はレベルストーンを光へかざした。


 透明な石の奥で、わずかに光が揺れているように見える。


 薫へつながっている保証はない。


 それでも、何もなかった昨日までとは違う。


「総一さん」


 シンが石を見ながら口を開いた。


「一つ、心当たりがあります」


「何だ?」


「ビジュールです」


「ビジュール?」


「宝石の街と呼ばれています。世界各地から宝石が集まる大きな街です。宝石商だけでなく、富豪や貴族も多く訪れます」


 総一は手の中の石へ目を落とした。


「人間はこいつを宝石だと思ってる」


「はい。ならビジュールにも、同じものがあるかもしれません」


 ナバルも頷く。


「そして魔王軍がレベルストーンを集めているなら、奴らもビジュールに目をつける可能性があるな」


「可能性どころか、もう入り込んでても不思議じゃないだろ」


 総一は透明な石を握った。


 魔王の居場所は分からない。


 薫がどこにいるのかも分からない。


 それでも、ようやく一本の細い糸が見えた。


「決まりだな」


 総一は顔を上げる。


「次はビジュールだ」


 その街に何が待っているのかは分からない。


 ただ一つだけ確かなことがある。


 魔王軍もまた、この美しい石を探している。


 ならば、その先に薫へ続く手掛かりがあるはずだった。

第16話を読んでいただき、ありがとうございました!


ダイアには逃げられてしまいました。


総一、異世界に来て初めてちょっと悔しそうです(笑)


そして新たに登場した「レベルストーン」。


人間には宝石だと思われている石を、なぜ魔王軍は集めているのか。


薫との関係もまだ分かりませんが、ようやく次の手掛かりが見えてきました。


次の目的地は、宝石の街ビジュール。


ここから総一の旅も本格的に動き始めます。


続きも読んでいただけると嬉しいです!

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