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『最強探偵、異世界で攫われた相棒を探す旅に出る』  作者: れいじ
第一章 攫われた相棒

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第15話 大幹部バリオス

第15話です。


大幹部バリオスと対峙する総一。


勇者シンやナバルすら苦戦した相手に、総一はどう戦うのか。


そして、戦いの先で新たな手掛かりが動き始めます。


それでは、お楽しみください。

「シン。そいつは俺がやる」


 総一が前へ出る。


 バリオスの巨大な瞳が、ゆっくりと総一へ向いた。


「貴様が?」


「ああ」


「勇者ですら私の一撃を受けきれぬ。それでも前へ出るか」


「まあ、やってみないと分からんだろ」


 軽く答えながらも、総一はバリオスから目を離さなかった。


 シンが慌てて立ち上がる。


「総一さん、危険です!」


「分かってる。お前は周りを頼む」


「でも」


「シン!」


 ナバルの声が飛ぶ。


 別方向から迫っていた魔族の剣を、大盾で受け止める。


「今はこっちだ!」


「……はい!」


 シンは迷いを振り切るように剣を握り直した。


 周囲には、まだ数え切れないほどの魔族がいる。


 ナバルが盾で攻撃を受け、その隙をシンが斬り込む。傷を負えば、すぐにサリーの回復魔法が飛んだ。


 三人の役割が、少しずつ噛み合い始めていた。


「なるほど」


 バリオスが総一を見下ろす。


「仲間を逃がすための時間稼ぎか」


「違うな」


「ならば何だ」


「お前に聞きたいことがある」


 総一の表情から笑みが消える。


「だから、しばらく付き合ってもらう」


「……面白い」


 バリオスが地面を蹴った。


 巨体が一瞬で目の前まで迫る。


 拳。


 総一は首を傾けるだけでかわした。


 風圧が頬をかすめる。


 二撃目。


 三撃目。


 爪を振るい、尾を薙ぎ払い、続けて拳を叩き込む。


 だが、一発も当たらない。


「なぜだ!」


 バリオスの声に苛立ちが混じる。


「さっきから逃げてばかりではないか!」


「そう見えるか?」


「何?」


 総一はバリオスの拳をかわしながら、その動きを観察していた。


 速い。


 力もある。


 七人の幹部とは比べ物にならない。


 シンやナバルが苦戦するのも当然だった。


 それでも。


(俺には関係ないか)


 問題は別にある。


 どれくらいの力なら、殺さずに倒せるのか。


 総一自身にも分からなかった。


 この世界へ来てから、本気で殴った相手など一人もいない。


「総一さん!」


 サリーの声が響く。


 振り返ると、数体の魔族がシンたちを囲んでいた。


 ナバルが盾で攻撃を受けているが、左右からさらに魔族が迫る。


 その一瞬をバリオスは見逃さなかった。


「隙だらけだ!」


 巨大な拳が総一の顔面へ迫る。


 総一は反射的に右手を上げた。


 バシッ。


 拳が止まる。


「……なに?」


 バリオスの目が見開かれた。


 総一は片手だけで、その巨大な拳を受け止めていた。


「嘘だろ……」


 離れた場所で、ナバルが思わず呟く。


 サリーも魔法を唱える手を止めかける。


「総一さん……」


 シンだけは驚きながらも、どこか納得したような表情をしていた。


「やっぱり……」


 総一は三人の視線に気づき、小さくため息をつく。


「……まあ、いいか」


「何がだ!」


 バリオスが腕を引こうとする。


 動かない。


 総一の指が、拳を完全に押さえ込んでいる。


「貴様……何者だ」


「ただの冒険者」


「ふざけるな!」


 バリオスがもう片方の拳を振り下ろす。


 総一は手を離すと、わずかに身体を沈めた。


「悪いな」


 一歩。


 バリオスの懐へ入る。


「ちょっと寝てもらうぞ」


 腹へ拳を打ち込んだ。


 力は抑えた。


 つもりだった。


 轟音が響く。


 バリオスの巨体が地面から浮いた。


「……え?」


 総一の目が丸くなる。


 バリオスは凄まじい勢いで後方へ飛び、木を一本、二本となぎ倒す。


 さらに奥の岩へ激突。


 大きな岩が砕け、土煙が舞い上がった。


 森が静まり返る。


 敵も味方も、一瞬動きを止めた。


 総一は自分の拳を見る。


「……やりすぎた?」


 土煙が晴れていく。


 バリオスは倒れたまま動かない。


 総一は急いで近づき、身体を確認した。


 しばらくして、ゆっくり立ち上がる。


「総一さん?」


 シンが恐る恐る声を掛ける。


 総一は気まずそうに頭をかいた。


「加減、間違えた」


「……」


 ナバルが大盾を構えたまま固まっている。


「加減を間違えて、大幹部を倒す奴がいるか?」


「ここにいたな」


「自分で言うな」


 サリーが困ったような顔をする。


「総一さん、バリオスからお話を聞くつもりだったんですよね?」


「その予定だった」


「では……」


「困ったな」


 総一は倒れたバリオスを見下ろした。


 魔王の居場所。


 薫の居場所。


 聞きたいことはいくらでもあった。


 その時だった。


 森の端で、灰色の外套が揺れた。


 総一の目が細くなる。


 ダイアだ。


 バリオスが倒されたことで、周囲の魔族たちは完全に混乱している。


 その隙に、静かに森の奥へ離れようとしていた。


「おい」


 ダイアの肩がわずかに動く。


 だが、振り返らない。


 そのまま走り出した。


「待てって」


 総一が地面を蹴る。


 次の瞬間には、ダイアの進路へ立っていた。


「……!」


 ダイアが急停止する。


「速すぎるでしょ」


「よく言われる」


「今、初めて聞いたけど」


「細かいことは気にするな」


 ダイアが腰の短剣へ手を伸ばす。


 総一はその手首を掴んだ。


「抵抗しない方がいい」


「バリオス様をああした後で言われても、説得力がないわね」


「安心しろ」


 総一は少しだけ笑う。


「今度はちゃんと加減する」


「それが一番怖いんだけど」


 ダイアは短剣から手を離した。


 抵抗しても意味がない。


 そう判断したらしい。


 周囲では、バリオスを失った魔族たちが次々と武器を捨て始めていた。


 シンたちもこちらへ近づいてくる。


 総一はダイアから手を離さず尋ねた。


「いくつか聞きたいことがある」


「でしょうね」


「魔王についてだ」


 ダイアは少しだけ目を細めた。


「それと、魔王が連れ去った女」


 その言葉に、総一の表情が変わる。


 ダイアはそれを見逃さなかった。


「やっぱり」


「何がだ?」


「あなたが欲しいのは魔王軍を倒したという名誉じゃない」


 ダイアは静かに総一を見る。


「あの女を取り戻すための情報」


 総一は答えなかった。


 だが、それだけで十分だった。


 ダイアの口元に小さな笑みが浮かぶ。


「なら、取引しましょう」


「取引?」


「ええ」


 ダイアは捕らえられているにもかかわらず、落ち着いていた。


「あなたが欲しがっているものを、私は持っている」


 総一は黙って彼女を見つめる。


 戦いは終わった。


 だが、本当に必要なものを手に入れるための勝負は、これからだった。

第15話を読んでいただき、ありがとうございました!


ついに総一VSバリオスでした。


本人はかなり加減したつもりだったんですが……また間違えました(笑)


そして逃げようとしたダイアを確保。


ここからは戦いではなく、薫へ近づくための情報戦になります。


ダイアの言う「取引」とは何なのか。


続きが気になりましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります!


次回もよろしくお願いします!

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