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『最強探偵、異世界で攫われた相棒を探す旅に出る』  作者: れいじ
第一章 攫われた相棒

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第14話 待ち伏せ

魔王軍ライラック支部へ向かった総一たち。


まず突破しなければならないのは、入口を隠す結界。


総一が考えた侵入方法とは……。


それでは、第14話をお楽しみください。

 森の奥。


 総一たち四人は、何もない木立の前で足を止めていた。


 見えるのは夜の森だけだ。


 月明かりが枝葉の隙間から落ち、湿った土を淡く照らしている。少し離れた場所では虫の声も聞こえる。


 だが、この先に数百体の魔族が潜む支部がある。


 それを知っているだけで、静かな森の印象はまるで違っていた。


「ここなんだな?」


 ナバルが大盾を背負ったまま周囲を見渡す。


「ここだ」


 総一は短く答えた。


 ナバルは目の前の空間へ手を伸ばした。


 指先は何にも触れない。


「で、どうやって入るんだ?」


「それなんだけど」


 総一はサリーへ振り返った。


「サリー。ちょっと頼みがある」


「私ですか?」


「ああ。俺は魔法が使えないから、代わりに頼む。」


 サリーが目を丸くする。


「どんな魔法でしょう?」


「さあな。魔法のことはよくわからん」


「……はい?」


 総一は悪びれもせず続けた。


「昨日、魔族がここを開けるのを見た。何か言葉を唱えて、そのあと手をこう動かしてた」


 右手を上げ、記憶に残っている動きを再現する。


 サリーは総一の手元をじっと見つめた。


「それを覚えているんですか?」


「一回見たからな」


「普通は一回では覚えませんよ」


 ナバルが呆れたように言う。


「仕事柄、こういうのは得意なんだよ」


「一体何の仕事をしてたんだ」


「人探しとか、そういう仕事だ」


「ますます分からん」


 総一は気にせず、サリーへ魔族が唱えていた言葉を伝えた。


 一度。


 二度。


 サリーは小さく繰り返しながら確認する。


「発音はこれで合っていますか?」


「たぶんな」


「たぶんですか……」


「間違ってたら何も起きないだけだろ」


「爆発したりしませんよね?」


「それは俺に聞くな」


 サリーの表情が少し引きつった。


 シンが横から苦笑する。


「サリー、僕も一緒にいますから」


「そういう問題でしょうか……」


 それでもサリーは覚悟を決め、総一が示した場所へ立った。


 右手を前へ。


 指先をゆっくり動かしながら、教えられた言葉を唱える。


 淡い魔力が指先に集まっていく。


 何も起きない。


「……失敗でしょうか?」


「もう少し待ってみろ」


 総一が答えた直後だった。


 目の前の空間が、小さく揺れた。


「えっ?」


 サリーが声を漏らす。


 揺らぎは少しずつ大きくなり、やがて水面のような波紋となって広がっていく。


 その奥に、青白い光が見えた。


 魔王軍支部へ続く通路。


 シンが息を呑む。


「開いた……」


 ナバルも感心したように総一を見る。


「魔法を使えんのに、開け方だけ覚えてきたのか」


「まあな、魔法が使える奴がいればいけるかなって」


「妙なところで合理的だな」


 総一は返事をせず、開いた入口を見つめた。


 そして眉を寄せる。


 静かだった。


 前回は物資を運ぶ魔族たちの声が聞こえていた。


 荷車の音もあった。


 だが今は何も聞こえない。


 魔族の気配すら薄い。


「……待て」


 総一が右手を上げた。


 先へ進もうとしていたシンが足を止める。


「どうしました?」


「おかしい、静かすぎる」


 ナバルの顔から笑みが消えた。


 大盾を背中から降ろす。


「罠か?」


「分からん」


 総一は周囲へ視線を走らせた。


 木々。


 茂み。


 風に揺れる枝。


 一見すると何もない。


 だが、さっきまで鳴いていた虫の声が止まっている。


「……なるほどな」


 総一が小さく呟いた。


 その瞬間だった。


「気付くのが少し遅かったな」


 低い声が森に響いた。


 シンが剣を抜く。


 ナバルは素早くサリーの前へ出て、大盾を構えた。


 木々の間から、一体の魔族が姿を現す。


 続いてもう一体。


 さらにその後ろからも。


 十。


 二十。


 数える意味がなくなるほどの魔族が、森の闇から次々と姿を現した。


「囲まれています……」


 サリーが小さく息を呑む。


「見れば分かる」


 ナバルが盾越しに答える。


「嬉しくない歓迎だな」


 総一は周囲を確認した。


 完全に囲まれている。


 しかも支部の中だけではない。


 外側にも相当数を配置していたらしい。


 魔族たちの間が割れる。


 その奥から、巨大な影がゆっくりと歩いてきた。


 深緑の鱗。


 恐竜を思わせる頭部。


 巨大な身体。


 大幹部バリオス。


 以前、支部の中で見た時以上の威圧感だった。


「勇者シン」


 バリオスの視線がシンへ向く。


「王都へ向かったはずのお前が、随分早く戻ったものだ」


 シンが目を見開いた。


「なぜそれを……」


「ライラックには我々の目がある」


 その一言で総一は理解した。


 街に潜伏している魔族。


 シンが早馬で戻ってきた姿を見られていたのだ。


 バリオスは続ける。


「王都から戻った勇者が、再び森へ向かう」


「目的を考えるのは難しくない」


 ナバルが小さく舌打ちする。


「待ち伏せか」


「その通りだ」


 だが、バリオスの視線はすぐにシンから外れた。


 総一を見る。


「そして……」


 巨大な瞳が細くなる。


「もしかして貴様か」


「俺?」


「魔王様がお連れになった女と、行動を共にしていた男」


 総一は黙ってバリオスを見返した。


「ようやく見つけたぞ」


「そりゃどうも」


「貴様の名は?」


「初対面の男に聞くなら、そっちから名乗るもんじゃないか?」


 ナバルが横目で総一を見る。


「こんな状況でよく軽口が出るな」


「緊張しても意味ないしな」


「それはそうだが」


 バリオスの眉がわずかに動いた。


「我はは大幹部バリオス」


「俺は田端総一だ」


「タバタソウイチ……」


 その名を確かめるように呟く。


「そういえば勇者討伐へ向かった七人の幹部が帰還していない」


「その件に貴様が関わっていると見ている」


「さあな」


「隠す必要はない」


 バリオスが片手を上げた。


 周囲の魔族が一斉に武器を構える。


「ここで全員死ぬのだからな」


 空気が張り詰めた。


「来ます!」


 シンが叫ぶ。


 魔族たちが一斉に動き出した。


 最初に飛び込んできた三体を、シンの剣が迎え撃つ。


 一体目の剣を弾き、そのまま胴を斬る。


 横から迫った二体目へ身体を回転させ、鋭い蹴りを叩き込んだ。


「シン、右!」


「はい!」


 ナバルが大盾を地面へ叩きつける。


 魔族の槍が盾へ激突し、甲高い音を響かせた。


「サリー!」


「はい!」


 サリーの杖が光る。


 淡い光がシンとナバルを包み、身体へ力が戻っていく。


 三人の連携は早かった。


 総一も迫ってきた魔族の攻撃をかわす。


 一歩ずれる。


 拳を腹へ。


 それだけで魔族が崩れ落ちる。


 別の魔族が背後から斧を振り下ろす。


 総一は振り返りもせず半歩横へ移動した。


 斧が空を切る。


 肘を一発。


 また一体倒れる。


「なるべく目立ちたくないんだけどな」


 ぼやきながら周囲を見る。


 まだまだいる。


 その時。


 バリオスが動いた。


 地面が沈むほど強く踏み込む。


「勇者!」


 巨体からは想像できない速度だった。


 シンが反応し、剣を構える。


「来い!」


 バリオスの拳が振り抜かれた。


 シンは剣で受ける。


 次の瞬間。


「ぐっ!」


 身体ごと弾き飛ばされた。


「シン!」


 サリーが叫ぶ。


 ナバルがすぐ前へ出る。


「俺が受ける!」


 大盾を構えた直後、バリオスの二撃目が叩き込まれた。


 轟音。


 ナバルの足が地面を削りながら後方へ押されていく。


「なんて力だ……!」


 それでも倒れない。


 ナバルは歯を食いしばり、盾を支え続けた。


 バリオスがわずかに笑う。


「人間にしてはよく耐えた」


「褒められても酒は奢らんぞ」


「ナバルさん!」


 シンが立ち上がる。


 まだ戦える。


 だが、総一には分かっていた。


 今まで戦った幹部たちとは明らかに違う。


 このままシンたちに相手をさせれば危険だ。


 総一は一体の魔族を軽くいなしながら、バリオスへ視線を向けた。


 そして静かに前へ出る。


「シン」


「総一さん?」


「そいつは俺に任せてくれ」


 バリオスの巨大な瞳が、初めて総一を正面から捉えた。

第14話を読んでいただき、ありがとうございました!


こっそり支部へ乗り込むはずが、完全に待ち伏せされていました(笑)


そして、ついに大幹部バリオスが参戦。


シンやナバルでも簡単には止められない相手を前に、とうとう総一が出ます。


次回、総一VSバリオス!


続きが気になりましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。


次回もよろしくお願いします!

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