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『最強探偵、異世界で攫われた相棒を探す旅に出る』  作者: れいじ
第一章 攫われた相棒

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第11話 魔王軍ライラック支部

第11話です。


ついに謎の空間へ潜入した総一。


その先に広がっていたのは、想像以上に大きな場所でした。


果たして、そこで何を知ることになるのか。


それでは、お楽しみください。

荷馬車が止まると、総一は積まれた木箱の陰から静かに周囲をうかがった。


 石造りの広い空間。


 天井には青白い魔石が等間隔に埋め込まれ、昼間のような明るさを保っている。


 荷物を運ぶ者。


 武器を整備する者。


 見回りをする者。


 目に入るだけでも数十体。


 その奥にも通路が幾つも続いていた。


「……でかいな」


 小さく呟く。


 ここまで大規模な施設だとは思っていなかった。


 荷馬車から次々と食料や木箱が降ろされていく。


 パン。


 干し肉。


 樽に入った水。


 そして魔石。


「生活してるってことか」


 ただの隠れ家ではない。


 一つの街のようだった。


 総一は気配遮断を維持したまま、木箱の陰から陰へ移動する。


 魔族たちが目の前を横切る。


 肩が触れそうな距離。


 それでも誰一人として総一に気付かない。


「便利だな、このスキル」


 思わず感心する。


 尾行だけではない。


 潜入にも向いている。


 そんなことを考えながら進んでいると、昨日尾行した黒髪の女が視界へ入った。


 女は周囲を確認し、人目のない通路へ入っていく。


 総一も距離を保ったまま後を追った。


 やがて女は立ち止まる。


 すると、身体が淡い光に包まれた。


「……!」


 次の瞬間。


 黒髪の美女は消えた。


 代わりに現れたのは、黒い角と細い尻尾を持つ魔族だった。


「……人間じゃなかったのか。」


総一は目を細める。


「姿を変えて潜り込んでたってわけか。」


 総一は心の中だけで呟く。


 あの女は人間ではなかった。


 魔族だったのだ。


 魔族の女は、そのまま奥の大きな部屋へ入っていく。


 総一も壁際を進み、扉の隙間から中をのぞいた。


 部屋の中央には巨大な椅子。


 そこへ座っていたのは、一体の巨大な魔族だった。


 身長は三メートル近い。


 全身を硬そうな深緑の鱗が覆い、鋭い牙が口元からのぞいている。


 恐竜を思わせる頭部。


 何より、その場にいるだけで空気が重い。


「あいつだけ別格か」


 総一は本能的に理解した。


 今まで戦った相手とは違う。


 そんな気配だった。


 魔族の女が片膝をつく。


「バリオス様。」


「おう、ダイアか。」


 低く響く声。


 部屋全体が震えたような錯覚を覚える。


「ライラック支部への物資搬入は予定通り完了しております。」


「ご苦労。」


「食料、魔石ともに順調です。」


 総一は眉をひそめる。


(支部……。)


 その一言で理解した。


 ここは魔王軍の拠点。


 ライラック支部だった。


 バリオスは腕を組む。


「勇者はどうした。」


「勇者シンは予定通りライラックを離れました。」


「そうか。」


「現在は王都へ向かっていると思われます。」


 予定通り。


 その言葉から、この一連の出来事が魔王軍の計画だったことが分かる。


 ダイアは続ける。


「魔王様も例の女を無事お連れになりました。」


 総一の表情が変わる。


(薫。)


 胸の奥がわずかに熱くなる。


 少なくとも生きている。


 その事実だけで十分だった。


「魔王様は大量の特殊魔石を消費して転移された。」


 バリオスが静かに言う。


「二度と同じ手は使えん。」


「承知しております。」


 やはり簡単に使える魔法ではないらしい。


 総一は心の中で整理していく。


 すると、ダイアの表情が少し曇った。


「ですが、一つ問題があります。」


「言え。」


「例の女と共にいた男です。」


 総一は息を止めた。


「現在も素性が分かっておりません。」


「街へ潜伏させた者たちも捜索しておりますが、発見には至っておりません。」


 バリオスは目を閉じる。


 しばらく沈黙が流れた。


「七人か。」


「はい。」


「勇者討伐へ向かった幹部七名も未だ帰還しておりません。」


 ダイアの声が少しだけ低くなる。


「勇者だけで七人を相手にしたとは考えにくいかと。」


 バリオスもゆっくり頷いた。


「私もそう思う。」


「魔王様がお連れになった女。」


「その連れの男。」


「そいつが関わっている可能性が高い。」


 総一は静かに苦笑した。


(俺を探してるのか。)


「その男を最優先で探せ。」


 バリオスの声が部屋へ響く。


「正体を突き止めろ。」


「見つけ次第、私へ報告しろ。」


「決して独断で戦うな。」


「はっ!」


 部屋にいた魔族たちが一斉に頭を下げる。


 総一はゆっくりと後ろへ下がった。


 これ以上聞く必要はない。


 十分すぎる収穫だった。


 薫は生きている。


 ここは魔王軍ライラック支部。


 そして敵は、自分の存在を警戒している。


「さて……。」


 総一は来た通路を見つめる。


 そこで、あることに気付いた。


「帰りはどうする。」


 結界は外から入る時だけではない。


 中からも自由には開いていない。


 誰かが出入りしなければ外へ出られない。


「……入ることしか考えてなかったな。」


 思わず苦笑する。


 探偵としては珍しい失敗だった。


 だが焦る必要はない。


 誰かが出入りするまで待てばいい。


 そう考えた、その時だった。


「巡回を増やせ。」


 バリオスの声が奥から響く。


「侵入者がいる可能性も考えろ。」


 総一の表情がわずかに引き締まる。


 直後、通路の奥から複数の足音が近付いてきた。


 一人ではない。


 二人、三人……いや、それ以上。


 総一はすぐ近くに積まれていた木箱の陰へ身を滑り込ませ、息を潜めた。


 足音は、ゆっくりとこちらへ近付いてくる。


 気配遮断は効いている。


 それでも、この数だ。


 一つでも判断を誤れば終わる。


 総一は静かに拳を握った。


「……さあ、どうする。」

第11話を読んでいただき、ありがとうございました!


ついに潜入した場所の正体が、魔王軍のライラック支部だと判明しました。


そして総一にとって何より大きかったのは、薫が生きていると分かったこと。


かなり重要な情報を手に入れましたが……今度は帰れません(笑)


無事に魔王軍の拠点から脱出できるのか。


続きが気になりましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります!


次回もよろしくお願いします!

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