表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢がいじめてこないのでストーリーが進まない! 〜もしかして私は、悪役令嬢がヒロインの物語で断罪される元ヒロインですか!?〜  作者: うみの もずく
1年1学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/26

21話:聖女の初陣① 夏休みの始まり

討伐隊編スタートです!

 7月末。明日から夏休みという学園の空気は、どこか浮き足立っていた。

 領地へ帰省する者、演劇を観に行く者、旅行の計画を立てる者……あちこちから楽しげな声が聞こえてくる。


「アリナちゃんは休み中、実家に帰るの?」

「うーん、どうしようかな、討伐隊があること以外、何も決まってないや。カレンはどこか行くの?」

「私はね、なんと王立劇場のチケットが取れたの!! しかも『シガレット』よ!」


 王立劇場と言えば連日満員の超人気劇場。中でも切ない恋と復讐を描いた『シガレット』は、今一番の話題作である。


「いろんな人に声をかけて、やっと手に入れて……!もう本当に楽しみ!!」

 音楽に造詣の深い彼女は、劇中歌や舞台演奏にも期待を膨らませ、キラキラとした瞳で見所を語る。


「カレンの話を聞いてるだけでも凄く面白そう!!帰ってきたら感想聞かせてね!」

「もちろん!!」


 そんな賑やかな会話を遮るように教室の扉が開き、大量の書類を抱えた先生が現れた。


「皆さん、明日から夏休みですが、勉強もお忘れなきように。課題を配ります。休み明けに必ず提出してくださいね」

「「ええええ……!!」」

 一瞬で教室のテンションが氷点下まで下がる。

(なんでゲームの世界にまで宿題があるのよ……!)

 変なところで現実に忠実なこの世界に、心の中で机を叩いた。


 ――実はゲームではこの課題が、「勉強会」という攻略対象と仲を深めるイベントに繋がるのだが……恋愛イベントをすっ飛ばしていた私には知る由もなかった。


 *


 夏休みに入り、いよいよ初の討伐隊への参加の日がやってきた。参加が決まってから先輩たちに鍛えてもらった自負はあるが、どうしても不安もある。

 

 学園に集合し、馬車で目的地まで移動する。

 目的地は、東の地の魔物の住処との境界線。瘴気が濃くなれば高レベルの魔物が発生するため、定期的な「討伐隊」の派遣が必要な場所だ。

 

「現地では各隊の隊長の指示に従うこと!勝手な行動はしないように!」

 道中、現地での動きについてカルティナ先輩が指示を出す。基本的に学生は後方支援だというが、レベルの高い生徒や特定の魔法を使える場合は戦闘部隊に組み込まれることもあるようだ。

 

「アリナちゃんは多分光属性の部隊になるから、先輩の話をよく聞いてね!」

「はい!」

 今年大学部を卒業した先輩に、光属性の方がいたらしい。人伝にしか聞いたことがないので、会えるのが楽しみだ。

「それから、ヴォルク先輩は傭兵隊の隊長を務めます。戦場で会ったらシルベール隊長と呼ぶように!」

『はい!』

 

 公爵令息のヴォルク様は一つの大隊の長を務めると言う。本当に、何故攻略対象にいないないのか。魔王戦に1番参加してほしい人材である。


 基地に着き、学生は各隊に振り分けられる。私は光属性持ちの特殊枠で「特別救護員」が割り当てられた。

 白い制服に着替え控室に入った瞬間、部屋にいた一堂が一斉に振り向いた。突如浴びせられた視線にたじろいでいると、

 

「おお……これぞ聖なる御姿! お待ちしておりましたぞ、聖女様!!」

 15名ほどの男たちが一斉に跪いた。司祭のような服装から鎧姿、軍服まで、服装はバラバラだが身なりは一様に良い。

 

「顔を上げてください…!私はただの学生です」

 困惑して告げると、彼らはバッと顔を上げた。

「なんと慈悲深いお言葉……! 命をかけて聖女様をお守りいたします!」

 口をそろえて語る。

 

(自分の身くらいは守れるんだけどなぁ)

 どうやら鍛えられた成果を発揮する機会は無さそうだ。物足りなさを感じつつも、彼らの抱く「聖女像」を壊さないよう、精一杯の聖女スマイルを貼り付けた。


 そこからは彼らの聖女語りが始まった。聖女がいかに神聖で絶対的な存在か。どのような奇跡を起こしてきたか。彼らにとって、「聖女」は崇拝の対象だった。そして何度も聖教園ルミナージュへの転校を勧められた。

 

 貴族が目指す学校は主に2校、私達が通う王立学園と教会が運営する聖教園ルミナージュだ。

 聖教園は2代目聖女が建てた学校で、篤い聖女信仰だという。

 

「起床時と食前、就寝前に聖女様に感謝を伝えます。聖女様がいらしてくだされば、もちろん直接お祈りいたします!!」

(絶対嫌だ……)

 絶対に転校はしない。固く心に決め、貼り付けた笑顔で彼らの話を聞いた。

 

(疲れたなぁ…)

 彼らの聖女像を壊さぬように、リリアージュ風に振る舞っている私だが、聖女らしい居住まいというのは性に合わない。戦いの前だというのに先に精神が削られてきた。

(どうにか離れられないかな……)

 彼らをなんとか撒けないか考えていると――


『集合!!』

 

 風魔法に乗った低い号令が聞こえた。中央広場への全軍招集令だ。

(やっと解放される!)

 救われた思いで、私は広場へと急いだ。


 *

 

「諸君!良く集まってくれた!今回の編成は……」

 

 白の軍服に身を包んだ総大将のシルベール公爵が全軍に配置や戦略を伝える。ヴォルク様のお父様だ。精悍な顔つきと輝く銀髪に血筋を感じる。

 

 貴族隊、一般隊、傭兵隊の3隊からなる各隊の隊長が紹介される。

 

「傭兵隊長、ヴォルク」

 最後に呼ばれ、ヴォルク様が壇上に上がった。

 ほかの隊長が豪華絢爛な装飾付きの白い軍服を纏う中、ヴォルク様は実用性に特化した黒の軍服を着ていた。

 

(すごい……本当に隊長なんだ……)

 普段稽古をつけてもらっている人がなんだか遠くに感じる。尊敬の念でヴォルク様を見つめていた私。しかし、感心している場合ではなかった。

 

「今回、新たに覚醒した聖女殿も参加されている。」

 そう話し出したシルベール公爵と目が合う。

(えっ!?私!?!)

 

「壇上へ」

 

(ひええええ、先に言ってよー!)

 全軍の視線が私に突き刺さる。バクバクと跳ねる心臓を抑え、転ばないよう慎重に、震える脚で壇上への階段を登る。

 

(どうしよう、、何話そう……あっ!そうだ!)

「皆様に、神のご加護がありますように」

 私は右脚を引き、カーテシーと共に魔力を解放した。総大将と各隊長たちの足元から光の柱が現れ、彼らを包み込む。

「これは……聖域か。見事なものだ」

 少し驚いた様子のシルベール公爵は向き直ると、全軍に向けて告げた。

 

「諸君!我々には聖女殿もついている!魔物を打ち倒そうぞ!」

『おお!』

 

 大地を揺らすような、威勢のいい勝鬨(かちどき)が上がった。

ブックマーク、レビューいただけると、小躍りして喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ