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悪役令嬢がいじめてこないのでストーリーが進まない! 〜もしかして私は、悪役令嬢がヒロインの物語で断罪される元ヒロインですか!?〜  作者: うみの もずく
1年1学期

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20/26

20話:悪役不在の世界でストーリーを動かせ!

 学生生活とレベリングを謳歌していた私だが、もちろん魔王討伐を忘れたわけではない。

 リリアージュの聖書とゲームの内容を照らし合わせ、情報を整理していた私は、ある重大な問題にぶち当たっていた。

 

(『破魔の聖剣(はまのせいけん)』はどうやって入手すればいいんだろう……?)

 ゲームではリリアージュが、小説版では「悪役聖女」である私が呼び寄せる魔物がドロップする破魔の聖剣。闇属性特効を持つその剣は、魔王討伐に必須のキーアイテムだ。

 しかし、お互いを害する気など毛頭ない今、魔物を呼び寄せるはずの「悪役」がこの世界には存在しない。

 

(そもそも、王都にどうやってあんな強力な魔物を呼び寄せたっていうの?)

 ここは警備隊も騎士団も目を光らせる国の首都だ。

 ゲームの中ボス級の個体を、よりによってアレン様の目の前に出現させられたのはなぜか。

(協力者がいた? でも、接触のトリガーは何……?)

 

「……聖女の対立を望む『誰か』がいる?」

 ポツリと漏れた呟きだったが、口に出してみれば、それは妙に現実味を帯びた可能性に思えた。

 

 *

 

「アレン様。好きになってもいいですか?」

「……一体、何を企んでいるんだい?」

 

 今日は珍しく、生徒会室でアレン様と2人きり。

 願ってもない好機に、私は昨日練り上げた作戦の実行を宣言した。

 

 何故王都にあれだけのレベルの魔物が現れるのかは、一晩考えても分からなかった。

 なので私は、「小説のシナリオを無理矢理進める」という作戦に出ることにした。

 ゲームでも小説でも魔物を呼び寄せるのは、アレン様に選ばれなかった方の聖女――つまり、今は私だ。この世界で「悪役」の役回りを押しつけられている私が、「アレン様を狙っている」という噂をあえて流す。そうして接触してくる不穏な人物がいないか炙り出し、あわよくば破魔の聖剣の在り処を突き止める。これが私なりのストーリーの進め方である。

 

「企むなんて心外な。アレン様の魅力に気づいただけですよ?」

「なぜだろう、愛の告白には1ミリも聞こえないんだが……」

「失礼な! 私にだって好きな人の1人や2人くらい、いますよ!」

 

 振り返れば前世含めて思い当たる節はなかったが、今は横に置いておく。

 

「それに、私にはリリアージュがいる」

「そんなこと知っていますよ。ちゃんとリリアにも話しておきますから」

「なぜリリアージュにまで……?」

「心配させないためですよ」

 

 当然だと言わんばかりに答える。

 リリアが「アリナが本気で王子に惚れた」と勘違いして、心を痛めては困る。王子への宣言を終えたら、真っ先に彼女へ種明かしをするつもりだった。

 

「……本当に、何を企んでいるんだい?」

「ですから、アレン様の魅力に気づいたんですって! それでは、失礼します!」

 

 納得いかなそうな王子の視線を背中に浴びながら、私はリリアを探して生徒会室を飛び出した。

 

 *

 

 彼女は図書館で自習をしていた。

 数冊の本を傍らに置き、真剣にページをめくるリリアージュの姿を見つける。

 

「リリア」

 正面に座り、小声で呼びかける。

「あら? アリナちゃんも調べ物?」

 顔を上げた彼女が微笑む。

 

 周囲を確認すると、リリアとお近づきになりたい生徒たちが、遠巻きにこちらを伺っていた。

 

(噂を広めるには、最高のシチュエーションね)

 私は、わざと周囲に聞こえるよう、少しだけボリュームを上げて言った。

 

「ねぇ、リリア。アレン様を私に譲ってくれない?」

「えっ!? な……んで……っ」

 驚愕に目を見開くリリアージュ。

 説明なしにぶち上げた茶番は、彼女のあまりに純粋なリアクションによって、恐ろしいほどの説得力を帯びていく。

 

 周囲に戸惑いの波紋が広がるのを見届けた私は、リリアに折り畳んだ紙を差し出した。

 

『あとで説明するから生徒会室に来て!』

 

 中身を確認したリリアが小さく頷いたのを見届け、私は足早に図書館を後にした。

 

 *

 

「アリナちゃん、さっきの話って……?」

「大丈夫、本気で譲ってなんて思ってないから! 安心して!」

 生徒会室へ戻ってきた彼女に、私は全力で弁明した。

 

 昨日一晩考えても、まともな説明は思いつかなかった。結局、予言の書とされている『リリアージュの聖書』にそう記されていた、という理由で押し切ることにする。

 

「聖書に……? ということは、アリナちゃんもアレン様を好きになっちゃうの?」

「あんなに仲睦まじい2人の間に割って入る気はないよ! アレン様は素敵だけど、リリアに勝てるわけもないしね」

(というか、もしアレン様を落としでもしたら、『魅了をかけた』として断罪コース一直線だもの……)

 想像した未来の光景に身震いする。

 

「これで、魔王討伐に必要な武器が手に入るかもしれないの。少しの間、不安にさせてごめんね?」

 リリアを宥めていると、ちょうど彼女の迎えがやってきた。

 

 1人になり、寮へ向かいながら私は『破魔の聖剣』を落とす中ボスの攻略情報を思い出す。

(ボスのレベルはどれくらいだったっけ。……やっぱり、強力なアタッカーが欲しいな)

 リリアにこれ以上の不安を感じさせないためにも、一刻も早く剣を手に入れたい。

 

 王都への魔物運搬ルートを突き止め、できれば街へ運び込まれる前に叩く――。

 

「さあ、来い!魔物でも、協力者でも!」

 

 夕闇を溶かし込み始めた空の下、私は1人、固く拳を握りしめた。

読んでいただきありがとうございます!

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