18話:いざ新人戦!〜食欲は力なり〜
入部から2週間。いよいよ新人戦の日がやってきた。
ただの校内行事と侮るなかれ。王国最高峰の学生による実戦演習とあって、会場には騎士団関係者の姿もちらほら見える。土曜日だというのに、スタンドを埋め尽くした生徒たちの熱気で演習場はむせ返るようだった。
ルールはペア戦。新入生14人が2年生以上の先輩と組み、トーナメント形式で競う。
私のペアは、推薦者でもある3年のカルティナ先輩だ。先輩の魔力操作は群を抜いており、なんと「敵の攻撃をそのまま跳ね返す」という離れ業を使う。
相手が強い魔法を使えば使うほど、威力を増して反射される絶望のカウンター。その底知れなさに、対戦相手は一様に攻撃を躊躇うことになる。
*
「勝者、カルティナ・ヴィリアリナペア!」
審判の声とともに、わあっと会場が沸いた。
「次はいよいよ決勝戦だね。アリナちゃん、がんばろう!」
「はい、先輩!」
ひとまず、目標だった「討伐隊への参加切符」は手に入れた。けれど、私が目指すのは優勝商品。中身は勝ってからのお楽しみだそうだが、噂では食にまつわるものだとか。ここまできたら毟り取れるものは全て毟り取りたい。
「決勝の相手は、やっぱりジーク様たちでしょうか」
「ペアはアエムルスだし、その可能性が高いね」
アエムルス先輩は副部長で、カルティナ先輩を猛烈にライバル視している実力者だ。切磋琢磨し合う2人の関係は、見ていて清々しい。
「あ、あっちも決まったみたい」
反対側のコートから地響きのような歓声が届く。
「勝者、アエムルス・ジークペア!」
私たちは顔を見合わせ、深く頷き合った。
「じゃあ、作戦通りに」
「はい! 暴れまわりましょう!」
*
私たちの作戦はただ一つ。――『全力で暴れる』。
アエムルス先輩は鉄壁の防御魔法を得意とする。おそらく開始直後、どちらかを隔離して2対1の状況を作るはずだ。そして、閉じ込められるのは恐らく私。
「両者一礼。……始め!!」
合図と同時に、予想通り私の視界が遮断された。アエムルス先輩が私を強固な結界に閉じ込める。外ではカルティナ先輩に2人の猛攻が集まっているはずだ。
だが、先輩はその全ての攻撃を「反射」し、その軌道を一点――私へと集中させた。
内側からの私の打撃と、外側からの「反射」の衝撃。サンドイッチ状態になった結界はガラス細工のように砕け散り、私は最短距離でジーク様へと肉薄した。
「!?」
通常、距離を取るのが鉄則であるヒーラーが、身体強化を全開にして突っ込んでくる。その異常事態にジーク様の反応が一瞬遅れた。
「隙あり、です!」
私はその横っ腹へ、迷いのない回し蹴りを叩き込んだ。
「……っ、ぐっ!」
呻き声を上げながらも、ジーク様は咄嗟に体勢を立て直す。流石の体幹だが、至近距離で手数を繰り出す私に対して完全に防戦一方だ。
(ジーク様は、女の子に剣を向けるのを躊躇うタイプだものね!)
魔法攻撃ならともかく、生身の女の子を斬る覚悟はまだ彼にはない。そこを突いた零距離戦闘。これこそが、騎士道精神を逆手に取った私の対ジーク様の攻略方法だ。
「ジーク君、後ろだ!」
アエムルス先輩の叫びも虚しく、私の背後からカルティナ先輩の反射魔法がジーク様の防御を貫いた。
「あ……っ!」
その瞬間を見逃さず、私はジーク様に光の矢を浴びせる。同時にカルティナ先輩の魔法がアエムルス先輩を捉えた。
「そこまで! 勝者、カルティナ・ヴィリアリナペア!!」
一瞬の静寂のあと、今日一番の歓声が演習場を揺らした。
ジーク様は苦笑しながら剣を収め、私に手を差し出してくれた。
「完敗だよ、アリナ嬢。まさかあんな勢いで蹴りに来るとは思わなかった」
「ふふ、勝負の世界は非情ですから!」
表彰台に上がった私に、カルティナ先輩が誇らしげに金色の封筒を差し出す。
「優勝おめでとう!これが副賞の目録だよ!」
いよいよお楽しみの時間。私は震える手で封筒を開け、中身を確認した。
『優勝賞品:学園食堂・1年間全メニュー無料パスポート』
その文字を目にした瞬間、私の頭から魔王討伐も断罪回避も吹き飛んだ。
「……っ、やった……!! 1年間、ステーキもパフェも食べ放題!!」
私の絶叫に、カルティナ先輩が微笑む
「そんなに喜んでくれるなんて、渡し甲斐があるね」
聖女の誉れよりも、何よりも。食費という名の「現実的な勝利」を手にした私は、その日、誰よりも輝く笑顔で優勝旗を掲げたのだった。
読んでいただきありがとうございます!
学園の食堂メニューはシェフが作っているため、どれも絶品です!!イチオシはハンバーグ。
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