13話:新入部員顔合わせ
3日後。厳しい入部試験が終了し、新入部員の顔合わせが行われた。
魔道騎士部の入部基準はレベル35以上。志願者の中からさらに試験を突破できるのは10名のみ。そこに推薦枠の4名を加え、今年は14名が門を叩くことになった。
推薦枠にはジーク様もいた。一通り自己紹介が済んだところで、カルティナ先輩がパン! と景気よく手を叩く。
「さて、試験組の皆さん。推薦枠なんてずるい、そう思いますよねー!?」
突然の煽りに、新入生の何人かが「たしかに」という顔で頷く。
「そこで! 試験組対推薦組で勝負していただきます! 使用できるのは魔法と練習用の木刀。推薦枠の皆さんは、ここで負けたら即退部……なんてこともあるかもしれないので、頑張ってくださいね!」
「ええっ!?」
(聞いてないですよ!?)
理不尽な通告と共に、絶対に負けられない戦いの火蓋が切られた。
*
作戦時間は10分。私たちは4人で円陣を組み、得意魔法を共有する。
この世界には『HP』の概念がある。怪我や病気だけでなく、HPがゼロになっても人は死ぬ。
ただ、この世界のルールとして、魔物が使う「闇属性魔法」以外では、どんなに攻撃を受けてもHPが「1」残るようになっている。つまり、魔法だけではトドメを刺せない。その代わり、HPが1割を切ると強烈な眩暈と吐き気で動けなくなる。
(魔法で死なない設定のせいで、みんな逆に一切容赦しないんだよね……)
勝敗はどちらかのチームが全滅するか、20分経過した時点で動ける人数が多い方の勝ち。推薦組は4人、試験組は10人。数的優位はあちらにある。
「まず、真っ先に回復役の君が狙われるだろう」
ジーク様が冷静に分析する。
「だから全員で守っ――」
「では、私が囮になりますね」
「え?」
ジーク様の言葉を遮る形になってしまった。
「すみません、今何か……?」
「……いや、それもアリかもしれないな」
ジーク様は私の頭上をチラリと見て頷いた。レベル40の彼には、私のレベル50が辛うじて見えているはずだ。相手が束になっても私を落とせないと判断したのだろう。
回復役を囮にするという狂気の作戦に困惑する他の2名を説得し、私を餌に敵を誘い込み、3人が挟み撃ちにするという布陣が決まった。
*
試合開始から5分後。
演習場に立っているのは、わずか4人――私たち推薦組だけだった。
「やったー! 退部回避!」
皆でハイタッチして喜ぶ。
ジーク様の腕前は流石だった。水魔法を纏わせた剣で敵陣に斬り込み、一気に5人を無力化した。他の2人も連携が素晴らしく、周囲をよく見て動いていた。
「ひ、光属性が前線で囮になるなんて、考えられない……」
地面に這いつくばった相手チームの子が、恨めしそうにうめく。そんなにとんでもない作戦だったのだろうか。
転がっている皆に、私は範囲回復魔法を放った。
「!? これが、聖女様の……!」
本来は単体にしか使えない回復魔法を、一定範囲の全員に、しかも全回復。聖属性特有の『奇跡』を目の当たりにして、新入生たちが騒然となる。
それを見届けると、カルティナ先輩がニコリと笑った。
「さあ! 完治したならもう1戦いけますね!」
「ええっ!?」
「次はこの2人対、残り全員でやりましょうか!」
指名されたのは、私とジーク様。
「2対12ですか!?」
「負けてしまった皆さん、今度こそ目にもの見せてやりなさい!」
2試合目の結果は――圧勝だった。
さすが武門の名門シルベール家。ジーク様の戦況把握能力と剣技は頭一つ抜けている。私は集中攻撃を弾きつつ、彼を回復していただけ。気付けば全員がまた地面に転がっていた。
「ふふふ……今年の1年生も有望ですね! では次は、2年生チームと勝負です!」
「えええええっ!?」
その後、2年生との対抗戦が始まった。先輩たちの連携は、新入生とは比較にならないほど異次元だったが、私が無限に回復し続ける「ゾンビ戦法」でなんとか勝利をもぎ取った。
魔力切れの生徒が続出し、今日の顔合わせは幕を閉じた。
(疲れたー! でも楽しかった!)
久しぶりに思いっきり魔法を使い、充実感に包まれながら寮への道を歩く。
(明日の部活も楽しみ!)
お風呂でゆっくり体を休めよう。そう浮かれながら、私は鼻歌混じりに寮の門をくぐった。
*
「すごいね彼女。誰に鍛えられたんだろう」
高等部と大学部のメンバーが、講義室のモニターでこっそり観戦していた。
聖女ヴィリアリナ。彼女が操る「光属性」は本来、回復効率は高いが防御と攻撃は他に比べて脆弱なはずの属性だ。しかし彼女は、10名からの集中攻撃を微動だにせず防ぎ、遠隔で精密な回復を飛ばしてみせた。
観戦していたヴォルクには、その独特な戦い方に心当たりがあった。しかし、彼女がいつどこであの『師』と接触したのか、経路が不明すぎる。
(レベルといい、戦い方といい……何者なんだ?)
困惑する彼の後ろで、戦闘狂の部員たちが目を爛々と輝かせていた。
「あの光の壁を攻略するには……」
「あの回復量を上回る火力があれば……」
「ああ、早く……」
(((戦ってみたい!!)))
聖女への畏敬の念などどこへやら。騎士部の精鋭たちは、新たな強敵の出現に、歓喜の震えを隠せずにいた。




