10話:テストの結果と聖女のしきたり
そして迎えた中間テスト。私は皆のおかげで満足のいく成績を収めることができた。
魔法の実技は満点。他の科目も、あんなに苦手だった歴史や帝国語を含めて90点を超え、全生徒中20位以内にこぎつけた。マナーだけは65点と平均をギリギリ超えた程度だったが、まあ及第点と言えるだろう。
「みなさん! 本当にありがとうございました!!」
全員が集まっている生徒会室で、がばっと120度のお辞儀をして感謝を伝える。
この場にいる面々は、もちろん全科目95点以上の化け物揃いだ。
「あそこから2週間でよく頑張ったね。マナーは……まあ、次に向けて頑張ろうか」
アラン王子から苦笑混じりのお褒めの言葉をいただく。
「魔法の実技は流石だね。僕、負けちゃったよ」
ハルト様も萌え袖を揺らしながら褒めてくれた。
「本当に、皆様にお時間をいただき……感謝感激です!」
「いいのよ、私にとっても良い復習になったわ」
「リリア……!」
リリアは今日も天使である。
*
さて、テストを乗り越えたところで、改めて魔王討伐について考える。
現在のレベルは、ライオス様・ハルト様が「35」、リリア・ジーク様が「40」、アラン王子が「45」。そして私が「50」だ。
目標のレベル60までは、まだ距離がある。ライオス様たちには今すぐにでもレベリングに向かってほしいが、公爵令息をホイホイ危険な場所に連れ出すわけにもいかず、ここが難航していた。
そして、建国史を学んだ私には、どうしても気になることがあった。
(歴代の聖女、王子と結婚して皇后になったか、魔王と相打ちで亡くなったかの2択なんだよね……)
初代聖女による建国から約千年。この国には定期的に聖女が現れているが、その末路は驚くほど固定されている。独身で寿命を迎えた者も、王子以外と添い遂げた者もいない。
おまけに魔王は、狙い澄ましたように「聖女がいる時代」にしか復活していないのだ。
(この流れ、私が魔王と相打ちになる運命なんじゃ……?)
さらに、サンクタリア王国には厄介な伝承があった。
聖女を皇后に迎えた王は、本来持たないはずの『聖属性魔法』を聖女から受け継ぐという。どうやら聖女は、初めてを捧げた相手に、自らの魔力特性を譲渡する性質があるらしいのだ。
(貞操も守らなきゃいけないのね。まあ、今のところ捧げる予定も相手もいないけど……)
北の山岳地帯にあるという魔王城。初代聖女が魔王を封印したとされるその土地は、瘴気が強すぎて近づけば正気を失うと言われている。今もそこから溢れる瘴気が魔物を生み出し、人々に襲いかかっているのだ。
(……あからさまに怪しい。でも、今の戦力で行くのはリスクが高すぎるしなぁ)
とりあえずは1番達成できそうな目標に取り組むことした。
*
「まずは、リリアにアラン王子を攻略してもらわなきゃね」
私はテストの打ち上げと称してリリアをカフェに誘い、恋バナに花を咲かせていた。
「アラン様は……私が『聖女』だから優しくしてくださるだけで……」
「そう? 同じ聖女の私には、社交辞令レベルの興味しか無さそうだけど?」
「婚約だって……元々病弱だった私に夢を見せたいと、両親が無理を言って……」
「王子なら、嫌なら断れるはずじゃない? 責任感だけであんなに優しくできないって」
「それは……」
「やっぱり、アラン王子もリリアのことが好きだと思うよ?」
「っ!///」
顔を真っ赤にしたリリアをニコニコと眺める。
自分に自信がない彼女は、「私が王子を籠絡なんて、迷惑なんじゃ……」となかなか行動に移せずにいた。
だが、私から見たアラン王子は、リリアをかなり気にかけている。私の『魅了』が通用しないほどに。顔色が悪ければ即座に気づき、定期的に贈り物を欠かさない。
(ベタ惚れじゃないですか……ごちそうさまです)
高校生の青い春に、ニヨニヨと口角が上がる。
「まずは、デートに誘ってみるとかどう?」
「デ、デート……!? そんな刺激的な……っ」
彼女はデートをなんだと思っているのだろう。
「婚約者なんだし、普通でしょ?」
「で、でも……」
いつもの「完璧な令嬢」はどこへやら、あわあわと慌てる年相応の少女。
(まずはできるとこから。リリアの王子攻略が1番達成が早そう!)
私は乾杯のカップを掲げながら、この恋のプロデュースに考えを巡らせた。
次回、3/6 22時更新予定です!




