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聖島ロンゴミニアド 1

 サマーシーズン到来ッ!!!


 空を見上げれば、雲一つない青空が見える。ここ、リントヴルムは、俺が元居た地球ではドイツである。つまり日本よりも緯度が高く、殺人的な暑さを誇る故郷に比べると、格段に過ごしやすい。


感想(レビュー):しかしまぁ、結構間が開きましたね。前回の話、三馬鹿の婚約式が行われたのは5月半ばでしたので、およそ2ヶ月が経過しています》


 まぁ、わざわざ掘り下げるような出来事が無かったというか、どれもこれも、三行どころか一行で説明できそうだったし……。


 とりあえず、あの後に起きたことを時系列順に列挙していこう。


 まず騎乗士(キャバリエ)訓練場に不時着させた軍艦だが、出どころが辿れそうな情報は全く見つからなかった。まぁ、これは予想通りではある。証拠が見つかるようなら自爆なんてする必要はない。


 では撃墜した推定騎操剣(シュヴァリエ)の操縦者を尋問したいところだったのだが、こちらはこちらで、なんと全員、コクピット内で拳銃自殺していた。


 どないなっとんねん。いや、ホンマにどないなっとんねん。というのも、マリウス教は元ネタのキリスト教同様、自死はタブーとされているのだ。


 俺たちが迎撃した推定騎操剣(シュヴァリエ)だけではない。グレイたちを襲った2機に、軍艦も艦橋を自爆させている。死人に口なしとはよく言ったものだが、こいつら、ちょっと命を粗末にし過ぎじゃね?



 命は、命は力なんだぞ……!



 ―――……貴方も結構な数をブチ殺しておりますわよね?


 それはそれ、これはこれ。どうせ死ぬなら俺たちに有益な情報を吐いてから死んでほしい。


 ―――に、人間の屑……!


《感想:平常運転ですね》


 客観的に見れば、襲撃者たちからは身元すら判明していない。まぁ、俺はル・ペイジヴォントだとアタリを付けているんだが、それを証明させるだけの根拠も証拠も用意できていない。


 ただし、一つだけ判明したことがある。奴らの使用していたビーム兵装から、いびつな、質の悪いドラゴンスフィアが見つかったのだ。


 ドラゴンスフィアについて、出てくるのが久々な気もするし一応解説しておこう。雑に言えば、ビーム兵装につかう重粒子の発生器だ。


 そしてリア曰く、ドラゴンスフィアの作り方を知っているのはリア一人だけとのことである。俺たちもドラゴンスフィアは作れないし、俺たちが作ったビーム兵装も、全てリアから提供されたドラゴンスフィアが組み込まれている。



 次。婚約式の妨害にやってきた、ヴュルテンベルク辺境軍について。こいつらに関しては、困った問題が二つ起きた。


 ヴュルテンベルク辺境伯がル・ペイジヴォントと通じていることを証言してくれれば色々と解決したんだが、どうも辺境伯は勝利の美酒(ズィークヴェルン)に搭乗していたらしい。


 考えてみればこれは当然で、騎士団長や宰相子息の婚約式に武力で介入なんてやらかすとなると、意見するにしても許してもらうにしても、当主の頭を下げなければ始まらない。


 で、そこにビームをぶち込まれてしまったんだよな。見事に艦橋を消し飛ばしていたんで、肉片の一つも残ってないと思う。


 まぁ運よく艦橋にいなかったとしても、そのあと俺が艦を爆砕してしまったんで生きていないだろうけど。


 ―――というか今更ですけど、艦橋以外のクルーを全員殺戮しておりますわよね……?


 あのままだと墜落死するか、ジェネレーターの爆発に巻き込まれるかだから、俺が何もしなくても全員死んでるはずなんでノーカルマでフィニッシュです。パラシュートも俺が開発したばかりだから艦内配備なんてされてないだろうし、仮に脱出したとしても地面に向かって真っ逆さまだ。


 助けれるんなら俺も助けたいところだったんだけどね。艦を動かせる人員って結構貴重だし。


 つーわけで、これが困ったこと一つ目。辺境伯、国境の最前線を治める貴族が死んでしまった。一応、彼には跡取り息子がいるのだが、これがまだ9歳と若過ぎるんで、頼りにするわけにもいかない。


 そして困ったこと二つ目が、ヴュルテンベルク辺境軍だ。旗艦を撃墜され、辺境伯を殺された彼らは戦意マシマシ殺意カラメ。報復のためにも今すぐ宣戦布告すべきだと主張する、国内でも屈指の過激派集団と化してしまった。


 こちとら昨年末に一発戦争やらかしたばかりなんで落ち着いてほしい。戦争を仕掛けるとか以前の問題で、東側は俺たちが王都を落とすまでの時間稼ぎで結構な消耗になった上に、西側のヴュルテンベルク軍だって今回の件で壊滅状態だ。


 そうそう、敵兵からは情報が取れず、ヴュルテンベルク辺境伯も戦死してしまっているので、最後の頼みの綱として、辺境軍の連中が何か知っているんじゃないかと期待していたのだが、こいつら何も知らなかった。これは果たして、良かったのか悪かったのか。


《感想:知っていれば敵勢の確定が出来ますが、即座に戦争になってもおかしくはありませんからね》


 というわけで、血気盛んなヴュルテンベルク辺境軍、その全員は王国騎士団開催壱式獅子(アインス・ローヴェ)操縦訓練(ブートキャンプ)に突っ込んだ。


 旧式の地上機じゃあ、空戦型の相手は難しいからね。ついでに、彼らはたった2機の壱式獅子にいいようにやられてしまっている。その壱式獅子の習熟が出来ると考えれば、全員喜んで参加してくれた。


 士気が高過ぎてレオニスは抑えるのに苦労しているらしいが、そこは俺の知ったことではない。つーか、よくよく思い返してみれば、こうなったのはレオニスの婚約騒動が全ての元凶なんで、そのくらいは自分で解決してほしい。


 で、婚約式の戦闘を最後に、敵の介入はピタリと止んだ。俺たちが学園に引きこもっていたんで手を出せなかったという可能性もあるかもしれないが、静かなものだった。


 ……事後処理のために学園に来たヴュルテンベルク辺境伯の子息、ターレン君(9歳)と出会ったリリーナが暴走したことを除いて。年齢も近いことだしと、ゴルディナー領から義弟を呼んだ方がいいかなーって考えたりもしてたんだが、思いとどまっていて本当に良かった。心の底からそう思う。


 そして最後に、突然やってきたクロスマンについて。



 何も分からない。俺は考えるのをやめた。



《感想:他は色々頑張って水増ししたのに、最後の最後だけ本当に一行じゃないですか》


 しょーがねーだろマジで何にも分かんねーんだから。なんなんあれ。


 結論だけ言えば、俺やリアはこの2ヶ月、愛機を改修したり新型機の開発に力を入れながら、平和に、安全に、そして退屈に、夏休み初日という今日を迎えたというわけだ。


 ……にしても、始硬剣(カレトヴルッフ)の改修は着々と進んでいるんだが、俺の新型機、一体いつになったら完成するんだろうなぁ。さすがにあの機構は制作難易度が高過ぎたか?


 ●


「それでは、カタリナさん、リリーナさん。あとのことはよろしくお願いしますわね」


 と、俺は二人の取り巻き令嬢に向かって、そう言った。その二人の後ろに見えるのは、騎乗士(キャバリエ)訓練場に並ぶ4隻の大食(ファレファイ)級輸送艦だ。それぞれの艦内には、壱式獅子(アインス・ローヴェ)が満載されている。


「はい、私たちにお任せください」


「マリア様も、どうかお身体にお気を付けて」


 二人に頼んだのは、壱式獅子用に開発した二つの換装式(リプリシング)全装甲(アーマー)機構(システム)用外装、その運用試験だった。


 海に面するネルランド領では、水陸両用型の壱式獅子(アインス・ローヴェ)水中型(ミーア)を。巨大な森林地帯をもつクリスタリア領では、壱式獅子・都市型(アーバン)を。


 そして壱式獅子を操縦するのは、ヴュルテンベルク辺境軍の皆さんというわけだ。2ヶ月の習熟訓練を経て、大人数で改善点を洗い出す段階に入ったというわけだ。量産試験機の零式獅子(ディーン・ローヴェ)は三馬鹿それぞれの好みに合わせて開発したのに対して、正式量産機である壱式獅子用のアーマーまで同じようにするわけにはいかない。そして、


「ターレン君のお世話も私にお任せください!!!」


 ヴュルテンベルク辺境軍が向かう関係で、ターレンも彼らと一緒に行くことになる。当然といえば当然だ。


 辺境軍の連中が壱式獅子を持ってル・ペイジヴォントに突撃しないように、辺境伯の忘れ形見であるターレンを人質として王都側に残すべきではという意見も(驚くことにポンコツ策士であるヴァイトから)出たりもしたんだが、父を喪ったばかりの子供であることを考えると、ターレンにとっても顔見知りの多い辺境軍と一緒に行動させた方がいいという方向で話がまとまった。


 ちなみに故郷に戻すことだけはありえない。ル・ペイジヴォント軍がどこまで入り込んでいるのかが不明だからだ。


 ……ところで、ル・ペイジヴォント軍って長いんで、今後はル軍って略していい? だめ?


「うんうん、そうですわね。カタリナさん、リリーナさんがターレン君を性的な意味で食わないように頼みますわね」


「そうですね。あの子は海を見たいって言ってたんで、こっちで預かることになると思います」


「そ、そんな!? ずるいわ、カタリナ!」


「今のリリーナに預けるのは、私もまったく安心できないしなぁ……」


 そして、俺は二人を見送った。二人の旅路と、ターレン君の貞操の無事を祈りながら。


感想(レビュー):にしてもあの二人、久々に出た気がしますね》


 いやいやいや、ちょくちょく出てきてたよね? レオニスたちの婚約式にも参加していたし。グレイの時だって一緒に作戦を練ってたし。


《感想:いいですか、マスター。表現されていないということは、いないのと同じということですよ》


 いや表現しろよ! ちゃんと書いといてやれよ!! 背表紙に『MORE』『DEBAN』って看板持った二人が出てきちゃうだろ!?


《感想:まぁまぁ。こちらも準備をいたしましょう。後ろにリギアのメイドが控えていますよ》


 露骨に話題を変えてきたな……。まぁいい。乗ってやろう。


「マリアお嬢様。準備が整いました。いつでも出発できます」


 と、後ろからそう話しかけられたからな。


 カタリナたちの後ろに輸送艦が控えていたように、俺の後ろにも一隻の軍艦が待機していた。


 振り向けば、その姿が見える。かっちりとしたメイド服を着込んだ茶髪ショートボブの美少女。リギアの世話役兼護衛兼盗撮魔のエミリアだ。


 ドライコインの指摘がないと、俺はこいつに盗撮されていることに一生気付かなかったと思う。まぁ写真の行き先はリギアだろうし、この身体は俺のじゃなくてマリアのだし、割とどうでもいいんだけど。


 ―――どうでもよくはありませんわよー!?


否定(ネガティブ):いえ、そちらの盗撮メイドのことではなく》


 オメーが記述しないといないのと同じなんていうからだろうが!


 ともかく、エミリアの後ろに、それがあった。


 先ほど見送った平べったい四隻、速度を犠牲に輸送量を優先した大食(ファレファイ)級輸送艦とは違い、その姿は細長い。より正確に表現するなら、胴体を伸ばした、全身純白のカタツムリだ。


 輸送量よりも移動速度、そして艦としての戦闘能力を優先した傲慢(アロガンツ)級戦艦、その名も、傲慢(アロガンツ)雪鷺(ラィア)


 グリプスが使っていた高速艦を参考に開発した、獅子(ローヴェ)型運用艦の試作型だ。艦内搭載機数は6機と、10機以上を余裕で搭載できる大食(ファレファイ)級と比べると格段に少ない。だが、これには理由がある。仮に搭載数が多くても、換装式(リプリシング)全装甲(アーマー)機構(システム)の換装速度まで高速化出来る訳ではないのだ。なので、搭載数を増やすのではなく、運用艦自体を増やすしか解決策がない。この部分は専用運用艦故の、というか換装式全装甲機構のデメリットではあるな。


 そして色と状況から予想が付くだろうけれど、第一王子親衛隊で運用される。ちなみに習熟と運用検証試験もこの2ヶ月の間に大急ぎで終わらせてもらった。


 この辺、さすが第一王子親衛隊。前身が傭兵団という設定なので、装備の更新も頻繁に発生する。つまり、もともと新兵器に対する柔軟性が高いのだ。


 加えて、傲慢(アロガンツ)雪鷺(ラィア)の甲板には、第一王子親衛隊仕様の壱式獅子(アインス・ローヴェ)が三機並んでいる。


「わかりましたわ、エミリアさん。すぐに参ります」


 そう答えると、エミリアはお辞儀を一つ。俺が歩きだすと、その後ろからついてきた気配がする。


 ついでに補足しておこう。外に出ている三機の壱式獅子を除けば、傲慢(アロガンツ)雪鷺(ラィア)に搭載されている機体は、俺の薔薇獅子(ローズ・ローヴェ)にリギアの不知恐怖(ナインフリット)と、始硬剣(カレトヴルッフ)天竺葵・改(ノイエ・ゲラーニェ)を合体させた始硬剣(カレトヴルッフ)(ヴェンデルン)。リアは俺のように空中合体できないので、最初から合体形態だ。


 そして、リアがこの国に来るときに一緒に来た三機。竜護騎(ドラグーン)と呼ばれる分類の人型兵器で、あの機体はカティガンという名前だ。


 これで、傲慢(アロガンツ)雪鷺(ラィア)の艦内搭載数である六機ピッタリだ。というかカティガン三機を詰め込む必要があったので、本来の艦載想定機である三機の壱式獅子を甲板に置く羽目になった。緊急時には直掩機として運用するから大丈夫らしい。


 で、このメンツでいったいどこに行くのか。まぁカティガンを艦載している時点でバレバレだろうし、劣悪なドラゴンスフィアだって見つかっているけど、、一応言っておこう。


 ロンゴミニアドへの、リアの里帰りだ。

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