聖島ロンゴミニアド 2
本来であれば、ドラゴンスフィアもどきが見つかった時点で、即座にロンゴミニアドには向かいたかった。
ただしそれは、いくつかの理由で難しい。
まず、さすがに連絡もなしに向かうことはできない。初めにロンゴミニアドへと訪問を打診し、その承諾を得る必要がある。
次に、ここリントヴルムからロンゴミニアドまでの経路上の小さな国々から、上空の移動許可も貰わなければならない。
そして最後に、ロンゴミニアドへ向かうための足そのもの。ここが特に問題で、2ヶ月前の時点ではまだ存在しなかった。正確には、高速艦自体はいくつもあるものの、移動速度を優先するため、艦載キャパシティを始めとした、色々なものを限界まで削り込んでいる。だからそのせいで、8メートル級の騎乗士―――つまり、薔薇獅子を搭載できる高速艦が存在しなかったのだ。だからと言って、さすがに今さら旧式機だけでブリテン島までの旅は避けたい。たぶん、おそらく、……いや、絶対に戦闘に巻き込まれるだろうし。俺はアリスやリギアみたいに圧倒的な操縦技術を持っているわけではなく、超高性能な機体性能でアドバンテージを稼ぐタイプなんだ。
というわけで、ロンゴミニアドを始めとする関係各所からの承認、そしてこの傲慢雪鷺の建造のために、2ヶ月も後回しになってしまったのだ。
あとはまぁ、時期がちょうど夏休みにかぶったことで、俺たちの訪問が単なるリアの里帰り程度だと、俺たちを狙う敵が思ってもらえれば御の字ではある。ま、これはあまり期待していない。そんな間抜けはそうそういない。そんなことをしでかすのは、下手な創作の中だけの、都合のいい敵役だけだろうさ。
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艦内に用意された談話室に到着すると、そこには既に先客がいた。リギアとアリス、そしてリア。加えて見知らぬ妙齢の女性3名。この3人は全員、同じマントを身に着けており、そしてまぁ結構な美人で、
「女に囲まれて良い御身分ですわね、リギア様」
「女に囲まれていいゴミ分ですね、坊ちゃま」
俺とエミリアの言葉が重なった。
「いや、しょうがないだろ。俺も好きでこんな状態になっている訳じゃないし、そもそも部屋に集まったのはついさっきだ。……あとエミリア、なんかさっき変なニュアンスが含まれてなかった?」
「ハッ! 自意識過剰ですね。ハッ!」
「に、2回も笑いやがった……!」
何のフォローもせずに、エミリアはお茶を入れに部屋の奥へと足を向ける。うん。
安産型……!
《感想:どこ見てるんですか……》
そりゃケツに決まってんだろ。分かり切ったこと聞くなよ。
アリスが引いてくれた椅子に座り、俺は改めて3人の新参者を見据えた。
「それで、リア。そのお三方が、貴女と一緒に来ていた竜護騎の操縦者なのかしら?」
「あれ、みんながマリアセンパイと直接顔を合わせるのって、もしかして初めてっス?」
「そうですわね。リギア様やアリスは?」
「うちの連中の訓練に交じっているのを見たことがあるくらいだな」
「わたしも顔を知っているくらいですね」
「ありゃ、てっきりもう顔見知りだと思い込んでたっス。……なんでこんなことに?」
その言葉に、水色の髪の女性が口を開いた。
「色々と悪い方向に都合が噛み合った結果ですね。ヴィネリア殿下の周囲には、リギア様やマリア様がおられましたので。私たちがお傍に控えていると、それは皆さまの護衛を信頼していないという意味に取られてしまうと考え、積極的には近付かないようにしておりましたので」
続いて金髪の女性が、
「だから私たちは最初の頃、始硬剣や大猪の面倒を見たりしてたからね~」
「ああ、それでですわね。確かに、わたくしたちはわたくしたちで、それらにはあまり近付かないようにしておりましたし」
最後に、ピンク髪の少女が、
「そんでマリア様たちが改造に協力するようになった頃には、私たちはそっちの親衛隊の、壱式獅子の習熟訓練に参加するようになってたし。こういうのなんて言うんだっけ? 食い倒れ?」
「え~と~、……『入れ違い』ね、マギナちゃん」
と、金髪が訂正した。続いて水色が、オホン、と咳払いする。
「リギア様、マリア様、アリス様。遅ればせながらご挨拶を。ロンゴミニアド王国第三王女親衛隊、『カヴァス』。隊長のアンネ・カヴァスです」
続いて金髪が、
「副隊長のフィーナお姉ちゃんだよ~」
最後にピンク髪が、
「……ヒラ隊員のマギナ・カヴァスよ」
何か最後だけ型落ち感が……。『ヒラ隊員の』だけめっちゃ小声だったし。俺の視線から考えていることを察したのか、
「そ、そんな目で見るなぁ!」
と顔をそむけてしまった。そしてちょうどエミリアが紅茶を持ってきたのを各々が受け取る。
「お、あざま~す。ま、親衛隊と言ってもアン姉とフィー姉にマギィ、この3人しかいないんスけどね。ウチ、国だとあんま人望ないんで」
そういう深刻そうな問題をサラッと言わないで欲しいんだが。
「はぁ……。ところで、アンネさんとマギナさんはご姉妹ですの?」
「あはは~。違うっちゃ違うけど~、そうって言えばそうだね~」
何故か俺の質問にフィーナが答えた。
「フィー姉もカヴァス姓っスよ。ウチはこの3人とは、えーと、なんて言うんスっけ? ……棒姉妹?」
「ブッフ!?」「うわっ、何してんの汚っ!」
リギアが紅茶を噴出し、エミリアが即座に罵倒して、
「リアちゃ~ん? それを言うなら乳姉妹でしょ~? その言い間違い、余所じゃ絶対しないようにね~?」
「わふぁっらっふ、ふぁふぁっふぁふぁらふぁふぁひてふぉふぃっふ」
フィーナが口元を引きつらせながら、リアの頬を引っ張っていた。
「ヴィネリア殿下は国元では、少し立場が悪いものでして。私たちは万一の際に生家に迷惑がかからないようにと、みな家名を捨てているのです」
そんな騒動を全く厭わず、アンネが補足をしてくれる。
うん、成程ね。
うんうんうん、成程成程。
知らない設定だこれ!!!
《感想:まただよ》
言い訳を、言い訳をさせて欲しい……。
3つ目の原作乙女ゲーム、『貫いて、マキャヴェリズム』は、舞台となるル・ペイジヴォントについては色々と設定を詰めている。
だが、ロンゴミニアド、というかそもそも原作だと出身国の名前は『ロンゴミニアド』ではなく『クラレント』なんだが……。それは今は置いといて。
主人公ヴィネリアの祖国については、どうせ舞台にならないからと細かい内容を全然設定していないのだ。主人公の兄弟姉妹ですらキャラクター設定すら行っていない。数少ない例外は、国の名前の由来と、シナリオ上でル・ペイジヴォントまでやってくる数人の貴族くらいだ。
つーかなんで人望無いの? 立場が悪いって何? 原作ゲームだとそんな設定なかったんですけど?
え? これ聞いていいやつ? いや知っておかないとヤバい気もするんだけど、むっちゃデリケートな話じゃない? ギャルゲーだったら攻略ルートに入ってからようやく開示されるレベルくらいに重要な情報じゃない? 俺ヴィネリア攻略ルートに入った気は全くしてないんだけど?
その一瞬の硬直に差し込むように、『ピンポンパンポーン』と、間の抜けたチャイムがどこからともなく響いた。そして野太い男の声で、
『あ~~~、テステス、テステス。聞こえてる? オッケー? あー、傲慢雪鷺艦長、グレイモリー・レムナントだ。本艦はこれより5分後に離陸よてりっ……ゴホンッ、ンンッ、離陸予定!』
「噛んだ」
「噛みましたわね」
「噛んだっスね」
ちなみにグレイモリー・レムナントはレムナント傭兵団の元団長で、第一王子親衛隊の現隊長でもある48歳ナイスミドルである。ついでに男爵位。
『よってこれより、マグネットをアクティブに切り替える。5分後に備え、各自は離陸準備を進められたし。繰り返す。本艦は5分後に離陸予定。マグネットをアクティブ。各自離陸準備を進められたし。最後に、離陸直前に再度放送を入れるので注意されたし。以上、艦内放送しゅうりゅ、……艦内放送終了!』
噛んだことをごまかす様に、最後の言葉の途中から最初と同じ間抜けっぽいチャイムが流れる最中、足元が突然重くなった。放送で会った通りの『マグネットをアクティブ』というやつだ。高度の高速変移時に椅子などの非固定家具が飛び回るのを防ぐため、床を磁石化することで固定するのだ。これまでは存在しなかった、傲慢雪鷺からの新機能である。そして俺たちの靴もこの機能用に裏に金属板が仕込まれているので、足が床に引っ張られたというわけだ。
カツン、カツンと足音を立てながら、引っ張られる靴を煩わしそうに歩いて、エミリアも壁に取り付けられた棒に近付いていく。
……うん。
「素晴らしい忠義ですわね」
アンネの言葉に対しては、全力で笑顔を作り、そう答えるので精一杯だった。
ピンク髪、マギナの時よりは、うまく取り繕えたと思う。
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ふわり、と空に浮かんだ感じがする。ちょっと古めのエレベーターに乗った時のような感覚だ。その浮遊感がなくなると、足の重みがなくなり、
「移動が始まったようだな」
リギアが見ていた窓を俺も見ると、地上と比べ、かなり近くに見えるようになった雲が、高速で流れていた。上昇を終えた傲慢雪鷺は床のマグネットをネガティブ、つまりオフ状態になり、それによって身軽になったエミリアは早速どこからともなくモップを持ち出し、リギアが先ほど噴き出した紅茶痕を拭いている。
「先ほど、皆さんはリアの乳姉妹とおっしゃられておりましたが、ということは皆さん、お年も近しいということですわよね」
「そうですね。私とフィーナが16で、マギナは殿下と同じ15になります」
「ふむ」
発言者であるアンネを注視する。長い青髪をポニーテールにまとめている、釣り目の美人だ。身長は普通程度だが、胸は割とデカい。
次にフィーナを確認する。こちらは長い金髪をそのまま流していて、アンネとは対照的な垂れ目の美人だ。身長は3人の中で一番高いようで、そしてやはり乳がデカい。
最後に、マギナの姿を見る。ピンク髪をツインテールにしている、ぱっちりとした瞳の美人、というよりは美少女だ。美人ではなく美少女判定なのは、背の高さがリアやアリスと大差ないせいである。そしてマントに包まれているので体のラインが見え辛いのだが、それでもなお、その低身長に不釣り合いなデカいおっぱいを持っているのが分かる。トランジスタグラマーというやつだな。
そしてリアの胸は、まな板の如く平らであった。
「……なんスか?」
俺の視線に何か不穏なものを感じたのか、ジト目で見てくる。
「いえ、何でもありませんわ。ただ……」
「ただ?」
「三人と比べて、リアだけちんちくりんですわねぇ……」
「い、言ってはいけないことを言ったっスね!?」
そう言ったリアが、手をワキワキさせながら近付いてきた。
「なんですのその手は」
「手を通してその豊満な因子を分けてほしいだけっス!」
「それで本当に大きくなるのなら、その三人から豊満因子とやらはとっくに集まっておりますわよ」
腕をリアの頭につっかけて、届かないように―――
「ンアッ!?」
て、手のリーチ差よりもこっちの胸の長さの方が上だっただと……!?
「うおお、なんスかこれ……! 3人のおっぱいとも違う、服の上からでも指が埋まっていくっス……! リギアセンパイは毎日これのご相伴に預かっているんスか」
「預からせてなどおりませんわよ! ちょ、ちょっと皆さん、リアを止めてくださいまし!」
「「「いや、巻き込まれたくないですし」」」
こ、この女ども……!
「はいはいリアちゃん、その辺でね」
と、アリスが止めてくれた。
「マリア様のおっぱいを揉んでいいのはあたしだけだから」
「いやアリスにも認めておりませんわよ!?」
リアは自分『も』デカくなりたい派
アリスは自分『は』デカくならなくてもいい派




