第九話 犯罪者
私が乗っていた乗り物は大きく速度を落とした。
窓の外に大きな恒星や惑星がはっきりと見え始める。
夢の中だと疑うような光景を、私はただぼうっと見ていた。
やがてこの乗り物は、宇宙に浮かぶ鉄でできたような飛行船の前で止まった。
音も立てずに飛行船の下部が開き、乗り物はそっと吸い込まれていった。
「歩け」
私は手錠をかけられたまま、"保護"した二人挟まれ、飛行船の中の暗い廊下を歩いた。
「~~~~~~」
ナツキという女の人が何かを言っているが、ヘッドマイクを男の人に取られたままなので何といっているか分からない。
「ここに入れ」
男の人に押されて入った部屋は、見たことのない機械がたくさん置いてあり、不気味な部屋だった。
(まるで犯罪者のように扱われている……)
男の人はヘッドマイクを外し、部屋にいた白衣を着た人達に何かを話し、
最後に敬礼をして、女性とともに部屋を出ていった。
「~~~~~~」
「~~~~~~」
白衣を着た人達が何かを会話している。
そして、私に近づいてきた。
「~~~~~~!」
険しい顔で、怒っている様子に見えた。
「~~~~~~」
一番年配らしき人が他の二人に何かを言うと、二人は私の肩と足を乱暴に掴み、持ち上げた。
「何をするのっ!離してよ!!」
必死に悲鳴を上げた。
ただ怖かった。
ベッドのようなものにくくりつけられ、トンネルのような機械に入れられる。
視界が塞がれる。ビビビビといった音が聞こえるが、身体が痛いわけではない。
でもこのまま殺されてしまうような気がして、怖くて、声をあげて泣いた。それでも機械は容赦なく、動きを止めない。
気づくと視界がぱっと明るくなる。
再び白衣の人に乱暴に背中を押され、身体を起こされる。そして次は、ヘルメットのような機械をつけられる。
ヘルメットは何にも突っかからずにすっと入った。
服だけでなく、髪のリボンもゴムも、相手に取られてしまったんだ……
一番年配らしき人が近づく。私の顔を睨んでいった。
「お前は第二地球の人間か?」
日本語だ。このヘルメットが翻訳機になっているんだ。
「……え」
「隠そうとしても無駄だ。本当のことをすべて言え。」
「……何のことですか?」
声を震わせて、言った。
「SOS信号を発信したそうだが、何の罠だ。」
「……何も分からないよ!私だって!!」
私の震えた叫び声がこの薄暗い部屋に響いた。
「班長」
落ち着いた声で、白衣の一人が言った。
「脳波に変化が見られません。嘘はついていないものかと。」
そう言って、医療ドラマで見るようなモニターをみていた。
すると、班長と呼ばれた男はしばらくの沈黙の後、口を開いた。
「……先に衛生部隊に引き渡そう」
ーー
次に私が連れてこられたのは病院のような場所だった。医者や看護師のような人がたくさんいた。
衛生部隊と呼ばれるこの人たちは、私を乱暴に扱うわけでもなく、表情も変えずに淡々と、私を検査しているようだった。
私はなされるがまま検査を受けた。
血液を注射器で抜かれたり、心拍を確認したり、一連の検査が終わると、看護師らしき人に個室のベッドに連れてこられた。
そこでやっと手錠が外された。
「これから一週間管理入院してもらいますので、部屋から出ないでください。これから点滴と導尿の管入れます。」
そうして私は朝か夜かも分からない部屋に閉じ込められることになった。
食事も出なかった。
お風呂にも入れなかった。
入院の間、私は地球のことは何も考えないようにした。
お腹が空いた。身体がベタついていて気持ち悪い。
とにかく時間が経つのがとても遅く、1週間が永遠のように感じた。
長い時間が経過したある時、部屋の扉からガラガラっと開いたのだ。
「やっほ!ミナちゃん元気ー?」
彼女は長い黒髪を揺らし、小さく手を挙げた。




