第四話 SOS
ーー私も一緒に行く
そうナツキに握られた手を、慌てて振り払った。
「班長命令だ。従え。」
そう強い口調で言い放つ。
今回の任務はいつもと違う。
敵は人間でも鬼族でも星獣でもない。
それよりずっと恐ろしい。
「いつも言っているじゃないですか。私を巻き込みたくないからって、何でも一人でやろうとしないでください!」
防護服を介して発せられる彼女の声は、くぐもっているが、はっきりと耳に届く。
「いつもとは違うんだ。お前のことを守ってあげられない。どんな危険な残留粒子が残っているか分からない。死ぬかもしれない。生きて帰ってこられても、障害が残るかもしれない。」
「私だってわかってます!」
「それに…」
視線を揺らしながら言葉を探した。
「…ナツキは女性だし、労働基準法で、母体機能に悪影響を及ぼす場所の業務はできないって決まっているから。ナツキだって将来、お母さんになるかもしれないんだし。」
本当はその法律は、俺達連盟公務員には適用除外だった。
法律でさえも俺達のことは守ってくれない。
「……母親にはなりませんよ。私は。」
ああ言えばこう言う彼女のことを、考えることが疲れてしまった。
彼女が入隊し、八班に入ってから5年経つが、彼女は昔から追い払っても追い払ってもしつこくついてくる人だった。
結局、今回の任務にも彼女はついてきた。
結局自分は彼女が被爆しないことを祈るしかできなかった。
しかし、探索用の小型機に乗り換え、第七地球に彼女と降り立つと、その心配がなくなるくらい、上空から見る町はきれいなままだった。
「…あれ…………」
ナツキが呟いた。
町は黒煙を上げることも瓦礫にまみれてることもなく、建物もきれいに残されていた。
まさか、自分が任務内容を聞き間違えたか?
確かに、第二地球側から第七地球側へミサイルらしきものが発射された可能性があると、司令部は言っていたはずだが……
「それか軌道がそれて、無事だったんでしょうか?」
ナツキが言うとおりであって欲しかったが、俺は一つの違和感を見つけてしまった。
「ほら、あの交差点で自動車が事故を起こしてる。ここだけじゃなくてあそこも。」
そう言いながら指を差した。よく見ると、動いている車が1台もない。
「なぜこんなに立て続けに事故が……」
ナツキがそう呟いた時、耳に付けている通信機からで電子音がした。
ピー・ピーピーピー・ピー
自分の耳だけでなく、ナツキの耳につけている通信機からも響いた。
しばらく聞かない音だったので、脳が理解するのに時間がかかった。
ナツキと顔を見合わせた。
ーーこれは……八班のSOS信号だ。




