第二十一話 桜の咲かない四月
小学校の門の前に立っていた桜の木。
新学期のその日は、ほとんどの花びらが散って、葉に生え変わっていた。
「次、桜が咲く頃には、みんな中学生だね」
そう友達と話していると、近くにいた事務員の人が言った。
「実はこの木、来年までには切っちゃうのよ」
近くに住む家の人から、落ち葉やドクガについてクレームが入ったらしく、伐採することが決まったらしい。
残っていた一つの花が、さみしそうに揺れていた。
ーーー
第一地球は新年度を迎えた。
四月に新年度を迎えるのは、日本と同じだった。
しかし、第一地球の四月は、暖かくなるわけでもなく、花が咲くわけでもなく、虫や蛙の鳴き声が聞こえるわけでもない。
人間のために無駄が削ぎ落とされているこの惑星は、私にはとても冷たく感じられた。
そんな惑星にも、温かい人はいた。
「ミナ!今日はねー、防衛隊のパンフレットを持ってきたんだー!」
宇宙防衛隊のナツキさんは、任務の合間をぬって、よく私に会いに来てくれていた。
それが仕事の一環なのか、よく分からなかったけれど、その人の笑顔は私の心を照らしてくれる気がした。
ナツキさんは宇宙防衛隊の採用パンフレットを見ながら、一人で楽しそうに喋っている。
……そうだ。この間、この人に宇宙防衛隊になりたいことを伝えたんだ。
何とかして、第七地球を取り戻したかった。
第七地球を滅ぼした、第ニ地球が許せなかった。
そして何よりも、自分だけが生き残った意味を探したかった。
そのための手段に、宇宙防衛隊になることしか考えられなかった。
「ナツキさんのいる部隊って、どんな仕事をするんですか?」
自身の部隊のページを見ていた、ナツキさんに問うた。
「第二地球とは戦えますか?」
しかし、彼女から返ってきた答えは、期待していたものとは違っていた。
「第二地球は、平和主義の惑星だから。戦ったことのある部隊なんていないよ。」
……は?
平和主義?
「そんなわけないよっ!みんなを殺しておいて!」
私は怒りで声を震わせながら言った。
その様子を見て、彼女が慌ててつけ足す。
「……平和主義ってのは、第二地球が自称しているだけで、実際に平和的思想かっていったら、別なんだけどね!でもね……」
真剣な顔つきになる。
「実際、彼らは自分たちの軍隊を持っていないし、自ら交戦もしないの。」
「それならなんで……」
「軍隊を持っていないとしても、防衛力は必要。それで彼らは防衛用の兵器開発に力を入れてきた。今回のR2A爆弾も防衛用の兵器の一つ。」
「……防衛?」
「周りの地球をなくして、自分たちが唯一の地球になれば、自分たちを守れるって考えてるってこと。……第七地球は実験に使われたんだよ。このままだと、他の地球も、自分たちが気づかないうちになくなっちゃうかも。」
「……」
桜の葉っぱは、青々と茂ったまま消えていく




