第二十話 平和主義
ーー不満があるならナツキが異動しなよ
そう言われて異動する私ではなく、私たち二人は宇宙船の中で新年度を迎えた。
「お待たせしましたー!賞味期限キレキレスペシャルです!」
そう言いながら料理を机の上に並べる。
今週は私が炊事担当だった。
「だから冷凍のにしとけっていったのに」
「そうなんですけどー、どうしても手料理を作りたくって」
「……なんで?」
「料理に自信をなくしたというか」
「はあ……」
首をかしげながら、タクミさんは料理を口に運ぶ。
「おいしいよ。賞味期限切れてるなんて、言われなきゃ分からないよ。」
「ならいいんですけど……」
彼は手に持ったスプーンをサクサクと動かし、あっという間に食べ終わってしまった。
それを見て、私も自分の手を動かして見つめる。
痛み一つもない、きれいな手。
「……何というか、最近任務が普通というか、普通の鬼族とばかり戦ってますね。昨日の鬼族の巣窟も、慎重に行った割に大したことなかったですし。」
彼は立ち上がり、食器を厨房へ運びながら頷く。
「噂によると、第二地球と鬼族の一部とで、何か怪しい動きがあるらしい。その鬼族の中に、重要指定鬼族もいるんだとか。」
「第二地球は本格的に、鬼族と手を組むつもりなんですね」
「だからそのうち、また偵察任務が来るよ。」
「……じゃあ今は、嵐の前の静けさってことですね」
ーーー
第一地球に戻り、今日はミナへ宇宙防衛隊の採用パンフレットを持って行った。
「各部隊のこととか、試験のこととか、色々書いてあるから見てみて!」
『地球の平和を守り抜く』そう表紙に大きく書かれたパンフレットは、随分私たちの仕事が華々しく、希望に満ち溢れているように錯覚させる。
「タクミさん、いないかなー」
パンフレットをパラパラめくりながら、特殊戦闘部隊のページを探す。
「げー。部隊長」
しかし、部隊長の写真が載った特殊戦闘部隊の紹介ページの後ろに、ちゃんと各班の紹介欄があった。
各班長が自身の班の紹介文を書いている。
「見てみて!うちの班!……なになに、『我が班は上官と隊員間に確固たる信頼関係があり、立場を超えた自由な意見交換が日常的に行われている風通しの良さが最大の自慢です』……ってまあ二人しかいないんだけどね。ものは言いようね!」
だけど少し、くすぐったい気持ちになった。
「というかタクミさん、若い時の写真を使い回ししすぎでしょ!何年前の写真よこれ」
「あの」
笑っている私とは反対に、真剣な顔でミナが言う。
「ナツキさんのいる部隊って、どんな仕事をするんですか?」
「……え?あぁ普段は鬼族とばかり戦っているけど、結構地味な任務も多かったり。まあ何でも屋ってとこかな!」
「第二地球とは戦えますか?」
彼女の問いに、言葉に詰まる。
「私たちは戦ったことはないけど……」
それは、宇宙防衛隊全体に言えること。
直接第二地球と戦ったことがある部隊なんていない。
第二地球は惑星連盟に加入しておらず、宇宙防衛隊の仮想敵ではある。
それでも長年、戦争が起きることはなかった。
それに……
「……ミナは少し、勘違いしてるのかも」
第二地球は、そんな惑星ではない。
だって……
「第二地球は、平和主義の惑星だから」




