第十九話 遠い記憶
私の一番遠い記憶。
それは三歳のころ、三月のまだ寒い日だった。
病院のベッドの上で、産まれたばかりの妹・未希を、お母さんが抱いていた。
ピンク色の服を着たお母さんの髪はぼさぼさに下ろされていて、その隙間から優しい笑顔がちらりとのぞく。
病院食のお肉を、まだ小さい未希に食べさせるふりをしていた。
(ステーキ、いいなぁ)
そんなことを思っていた。
家族四人、笑顔があふれる温かい記憶。
お母さんは少し疲れている様子だったけど、とても嬉しそうだった。
「ミナと初めて会ったときも、すごく嬉しかったのよ」
そう教えてくれた。
ーー
私の誕生日は八月十六日だった。
私はあまり、家族以外の人に誕生日を祝われたことはない。
八月十六日は、夏休みで、終戦の次の日で、そして、お盆に来ていたご先祖様があの世に帰ってしまう悲しい日だった。
今日はそんな八月十六日。
遠くにある第七地球にとって。
『第七地球は戦争が多い危険な惑星で……』
テレビから報じられる私のふるさとは、いつも冷たくて、思いやりのない場所だ。
だけど私が知っているふるさとの記憶は、温かくて、優しいものだった。
悲しいこともあるけれど、寄り添うこともできた。辛いこともあるけれど、手を取り合って、助け合うこともできた。
私はずっと忘れないでいよう。優しい記憶も、温かい記憶も。
私が忘れたら、それは無くなってしまうから。
「……来年は、精霊馬を作ろう。」
お盆は、亡くなった人に思いを馳せる、優しい行事だ。




