第十七話 入隊希望者
約一ヶ月の任務から戻り、入院を経て、私たちはまた元気になった。
「今回は早く任務から戻れましたね。」
「うん。世界が平和で何より。」
タクミさんは表情を変えずに、八班の待機室で自身の仕事を片付けていた。
「今日は水飲みいきます?」
私の冗談にも、彼は表情を変えずに、パソコンの文字を打つ手を止めなかった。
しかし、嬉しそうに背筋がぴっと伸びたように見えた。
「ちょっと終わらせたい仕事があるから、先に行ってて。」
彼はそう言ってから間を空けて、
「それか、先にあの子のところにでも寄ってきたら?」
と言った。
「タクミさんもなんだかんだ、ミナのこと気にかけてくれてるんですねー」
私がそう言うと、彼はパソコンを動かす手を止め、言い返す。
「俺はお前のことを心配してるんだ!俺が止めてもどうせ行くだろ!」
私はその姿に、思わずニヤニヤしてしまった。
ーー
タクミさんが言ってくれたように、私は居酒屋に行く前に、ミナのところへ立ち寄った。
「宇宙防衛隊になります」
彼女の唐突な宣言。
彼女の言葉はまっすぐで、真剣だった。
ーータクミさんが言うとおり、彼女は「希望」なのかもしれない。
八班の希望になってくれるかもしれない。
私はそのように考えるようになった。
ーー
「そういえば、この間の官庁訪問で、うちの班への希望者いました?」
そう聞くと、タクミさんは目の前の水をちびちびのんだ。
「まぁ……ご想像の通りですよ」
彼はぼそっと言った。
八班は、私が入隊して以降入隊希望者がいなかった。
だからずっと二人のままだった。
それはもちろんあの事件の影響。
そして、私たちは過酷任務ばかり任せられる捨て駒班だから、希望者なんているわけないのだけど。
「さっきミナが、宇宙防衛隊に入りたいって言ったんですよ。」
「……ふーん」
タクミさんは何か考えるかのように、コップの中の水をグルグル回した。
「……相手のプログラム通り。宇宙防衛隊に入って、内側から壊す……」
「今回は!……その可能性は置いといて、希望の話をしませんか?」
私は彼の言葉を遮って言った。
「ミナがもし八班に入ってくれたら、私たちの班も変わると思いませんか?」
「……でも彼女はまだ未成年だろ。……六年後なんて、そもそも俺たちがこの班にいるかもわからない。」
「でも、未成年兵として入ったら?……未成年兵は倫理上問題になっているし、彼女がいれば上層部も過酷な任務を振ってこないですよ!」
しばらく沈黙が続いた。
タクミさんは再び、コップの水を回し出す。
「うーん…………なしかな。」
そう言った。
「……そもそもお前、弟を未成年兵で入れることを反対してただろ。」
「そうですね……」
確かにこの考えは、彼女のことを利用することと同じなのかもしれない。
「でも、私はミナの気持ちは応援しようと思います。」
彼女もいずれは一人で生きていく道を探さなくてはいけないのだから。
「……まあ、採用はされないだろうけど」
タクミさんは冷たく言った。




