第十五話 頼み事
連休最後の日、ナツキは突然訪ねてきた。
「折り入って!お願いしたいことがあるんですけど……!」
扉の先で、彼女はそう言って、手を擦り合わせている。
「……何?来る前に連絡ぐらいしてくれよ。前にも言ったけど、男性寮に来られると変な噂立てられるかもしれないからやめてくれって……」
「そんなの、今さらじゃないですかー!」
そう言って、部屋に入ってこようとする彼女を阻止する。
「今外出るから待って。」
ーー
「……お金を貸してほしいんですよねー」
言いづらそうに、彼女はそう言った。
「え、高額?」
「まぁ……」
彼女は笑いながら、頭を掻いた。
「いくらよ」
「二十万」
彼女がこのようにお金を借りてくることは初めてだった。
「俺にもお金ないこと知ってるだろう?……で、何に使うの?」
「……いやあ、弟が四月から中学生なんで、お金がいるんですよねぇ……」
彼女の弟たちとは、任務で彼女の故郷に寄ったときに、何回か会ったことがあった。
「もうそんな年齢。」
「早いような、遅いような。成人するまであと六年もあります。」
「ふーん、それで二十万……」
「あと、翻訳眼鏡を買いたいんですけど、あれ高すぎません?」
なるほど、彼女の真の使い道はこっちか。と思いながら、口座の残高を携帯で見てみる。
先日あんなに落ち込んでいたのに、彼女は少女への接触をやめない。
しつこいほど彼女は優しく、困っている人をほっとけない人なのだ。
「……あの子も、弟と同い年なんですよね。」
「……ふーん」
同い年って言ったって、本当の年齢かどうかは分からない。
「お金の切れ目は縁の切れ目」
そう言って彼女に二十万を渡した。
「そんなんで切れる縁じゃないじゃないですか!」
相変わらず、彼女は調子のいいことを言っている。
「こういうことで切れるんだ!ちゃんと返せよ!」
「ありがとうございます!」
彼女は短く頭を下げた。
「……しばらく酒は無しだな」
「水で我慢します」




