第十四話 監視対象
病室で過ごした一週間が終わり、私はやっと解放されたらしい。
「翻訳マイクを貸し出しますが、こちらの備品なので、一ヶ月後に返却お願いします。今回かかった費用については後日請求書を送らせていただきますが……」
宇宙防衛隊の人がつらつらと今後のことを話しているが、頭に入らない。
私は返事もせずに、ただ座って聞き流していた。
剥ぎ取られていた服や靴、頭のリボンが返却される。
半分あったはずのリボンのストーンがなくなっていて、乱暴に扱われていたことが分かる。
私はこれから、第一地球という地球の政府が管轄している児童養護施設に行くことになるらしい。
十七歳まではそこで生活できるんだとか。
だけどそこでの生活費は、将来の私の借金になるらしい。
十八歳を迎えたら、私はどうなってしまうんだろう。
ふとよぎったが、もう考えることも疲れてしまった。
私は入院してた施設を離れ、宇宙船で第一地球という場所に送られた。
宇宙から見たその場所は、私が住んでいた地球と変わらないように見える。
だけど、そこには、家族も友達もいないんだと考えると再び涙が溢れてしまった。
私は宇宙船の中で、一人で泣いた。
ーー
宇宙船から降りると、またあの人がいた。
しかし、今回はいつもの黒い服を着ていなかった。
私服だろうか。
「……ミナちゃん、えっと…………退院おめでとう!」
この人はそう言うと、気まずそうな顔をした。
この人はいつも、何かを言った後に気まずそうな顔をする。
癖なのだろうか。
「……ご飯食べ行かない?……お腹すいたでしょ?」
なんでこの人は私に構うんだろう?
「あ、外で食べるの嫌だよね!……だったら私が家で振る舞うよ!」
正直一人になりたかった。迷惑だった。
でも仕方ない。きっとこの人も仕事なんだ。
よく分からないが、私は第一地球の敵だと疑われていたようだった。まだ監視対象なのだろう。
お腹も空いていたので、仕方なく彼女についていくことにした。
ーー
彼女が作る料理は美味しくなかった。
しかし、一週間もご飯を食べていなかったので、すぐに平らげてしまった。
「また何か困ったことがあったら言って!」
私を児童養護施設に案内した後、彼女はそう言って帰った。
ーー
しかし次の日、今度は児童養護施設に彼女がやってきた。
何か大きな袋を持ってきた。
「服一着しか持ってないでしょ?だから着ない服を持ってきたんだけど……」
そう言って、袋の中から服を取り出し、私の部屋の中で広げだした。
「……シャワー浴びてないから……」
私がそう言うと、彼女は一瞬何かを考え、部屋の隅の壁にあった全身鏡の前に移動した。
彼女が鏡をそっと押す。
全身鏡は扉になっていた。
「ここがシャワー室になっているから!」
そう私に説明した。
ーー
その次の日も彼女は来た。
「翻訳マイク、買ったんだ!」
彼女はそう言って、箱を持ってきた。
「……あ!お金とか気にしなくていいから!出世払いで……!」
私はぼーっと箱を見つめていた。
「『出世払い』って、一度言ってみたかったんだよね!あはは。」
彼女はそう一人で笑っている。
「これで、テレビとかも見れるでしょ?」
彼女が何もない壁を指で触れると、ぱっと映像が映った。
ーー
「宇宙共通語の勉強にもなるかもと思って本持ってきたんだけどさあ。私うっかりしててさぁ。翻訳眼鏡ないと文字読めないよねー。」
一週間たった後、彼女は紙袋から本を出しながら言った。
「明日からしばらく任務に出ちゃうから、任務から戻ったら、買ってくるね!」
彼女はそういった後、すぐに訂正した。
「……あーやっぱ買ってくる。」
「そんな……いいです!」
そう私が言うと、彼女は首を振った。
「すぐ戻ってくるから!」
「でも悪いですし……」
「任務に行ったら、戻ってこれないかもしれないからさ。」
彼女は明るく言った。
その日を境に、ナツキさんはしばらくの間、私の部屋に来なくなった。




