第十二話 希望
少女と再び接触した後のナツキは、随分落ち込んでいて、説教する気になれなかった。
彼女は、少女が第七地球の人々が亡くなってしまったことを知らなかったのに、不用意に自分が伝えてしまったことをひどく後悔していた。
……だから、身勝手な行動をするなって言ったのに。
「でも、ナツキが言わなくたって、彼女はいずれ知ることになったんだし……」
そう言って、目の前のグラスをぐっと飲んだ。
「彼女、本当は何者なんでしょう?タクミさんの言うとおり、生物兵器なんでしょうか?」
「うーん……」
先日、第七地球への爆弾投下について、第二地球から正式に声明が出た。
使用されたのは、やはり開発途中と噂のあったR2A爆弾だった。
そのR2A爆弾は、第四地球に投下されたO2B爆弾より威力が強いのではないか、とは言われていたが、性質は全く異なるものだった。
人間を、骨も着ている服すら残さず、一瞬に蒸発させ消し去る。生き残る余地を与えない。街や植物はそのままに、動物だけを標的にして。
わざわざ声明を出したのは、惑星連盟側への威嚇のためだろうけど……。
第二地球の技術が、惑星連盟側…宇宙防衛隊の技術を完全に上回ってしまっている。
相手がどんな技術を持っているのかは未知数だ。
少女の正体はどんな可能性だって考えられる。
そもそも、彼女の身体検査で異常がないのも、結果が改ざんされているからという可能性もある。
「もしかしたらですけど、時限的に彼女の記憶が書き換えられているのかも。」
ナツキは言った。
「本当は第二地球の側の人、あるいはロボットで、第七地球の記憶を埋め込まれた。だからこちらの検査で嘘が見抜けなかった。……ある日彼女がすべてを思い出した時……」
「どんな可能性も考えられるよ。」
彼女の言葉を遮った。酔った頭で続けた。
「彼女の存在は希望なのかもしれないし。」
「希望って言ったって、第七地球の人はもういないではないですか……」
ナツキは俯いて言った。
「うん。第七地球の人にとっても彼女は希望かもしれないけど……」
これを言葉にすると、涙が出てしまうけれど
「もしかしたらさ……彼女は死んだ仲間の生まれ変わりかもしれないだろ……?」
手で涙を必死に押さえる。
「……きっと、俺のことを復讐しにきたんだ……」
抑えきれなくて、裏声が出てしまう。
テーブルに突っ伏して、しゃくり上げながら泣いた。
そんな訳がない。
自分でも何を言っているんだろう、と思う。
ナツキも呆れた様子だった。
「……なんでタクミさんの方が泣くんですか……」
そう言って、隣で同じように泣き始めた。




