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終末都市の塵芥  作者: Anzsake
ツユクサ:ヤクメ/やるべき事
96/132

繋ぐ

**


「…あ、止めて」


ジニアがトラックを停める。運転席で首を傾げるジニアと目を合わせ、ヒマワリに続いてトラックから降りる。


真夜中だったが、不思議とみんな起きていた。波の音がする。海が近い。


「ここ、どこら辺?」


「暗いからな。まだ分からん」


普段はこうならないよう、明るい時しか動かない。

今日こうしてるのは、何となくだ。


そういう突発的な衝動は、僕らにはよくある。


まだ夏は先だが、少し暑い。小さな草が揺れる音がする。潮風だろうか。


欠伸を堪えるサルビア。半分目の空いてないツユクサ。アジサイが灯を持ってくる。


「星…綺麗ですね」


遅れて降りてきたマリーが空を見上げる。つられて全員が見上げた。

アジサイが灯りを消して呟く。


「当時は街の灯りで全然見えなかったですもんね」


「そうか?割とこんなもんだったと思うが」


「田舎もんには見慣れた景色かぁあ…」


欠伸をしながらツユクサが言う。

それでも、山に囲まれたあの頃よりも遠くまで見える。


「あそこ、綺麗だね」


マリーが指さす方向は、たしか天の川だ。高い所にあるその星の帯は、子供の頃見た時よりも小さくなってる気がするが、それは自分が少し大きくなったからだろうか。


「なんか、人がたくさんいるみたいだね」


ヒマワリが呟く。小さく欠伸をしながらキキョウが返す。


「まぁ、今あれが見えるのも、ここに人が居なくなったからでしょうけど…」


そこから何分だったかは覚えていないけど、一言も話さずに夜空を見ていた。


座ったり、寝転んでみたり、各々が好きな体勢になる。

僕はずっと立ってた。


「…海の方行きませんか?」


マリーがそう言う。特に行かない理由もない。雑草を掻き分けて、バラバラな隊列で、それでも同じ方向に歩く。


真っ暗な海は、その先が見えない。


「そういや、外国の方も同じなのかね」


「この国だけそうなら、とっくに救援に来てるだろ」


少しの間の後、ヒマワリが言う。


「でも同じなら、きっと生きてるよね。あたし達が生きてるんだから」


**


ジニアは静かに寝息を立てている。酒が回ったのだろう。

横に寝かせて、しばらくは無言の時間が流れた。


酒を飲むと血が止まりにくいとはキキョウから聞いていた。忘れていたが。

初めこそ心配な赤を見たが、今は落ち着いている。


「酒を飲ますのは大丈夫だっただろうか…」


「どう転んでも仕方ないですから。ジニアも、死ぬことよりも、死んだ後に人を襲う方が嫌だと思いますよ」


ソハルは、ボーッとジニアを見つめている。何か話せれば良かったが、あいにく世間話のネタは無い。


「ベェ。お腹すいた」


タネがお腹が空いたと言うのは何時ぶりだろうか。


「…そうだな。周囲の安全も確保したい。僕とタネは1度外に出るよ」


「分かりました。お気をつけて」


ソハルがこちらを見る。


「ついて行って、いいですか?」


「…何のために?」


「この人に、ご飯を作りたいです」


以前、落人の籠で虫のスープを食べたのを思い出す。道具と材料があれば行けるだろうか。


「分かった。必要な物を一緒に集めに行こう」


「うん」




虫は目視圏内には居ない。近場の建物を漁ってみる。


民家はこういう時は頼りになる。災害時用の非常食は、残してあることが多い。

2件目の民家にて、未開封のペットボトルの水と、缶詰の非常食を見つけた。


そもそもパンデミックの時、重い水は運べなかったのだろう。いざと言う時にある非常食も、咄嗟に運べたのは1部だろう。


既にコミュニティの食料や水が整っていた回収員にとって、その手の物は持ち帰る価値は無い。


だからこそ、非常事態の今役に立てよう。


「食べれるの?」


ソハルが首を傾げて聞いてくる。この汚染環境に数年放置されていた食料だ。不安は分かる。


「保存技術は高い。味は落ちても、腐ることはあまりないよ」


ペットボトルや缶詰の外装を確認するが、傷はない。ソハルに渡すと、まじまじと見つめている。


「初めて見た」


「後で食べよう」


「うん」


パンデミックが5年前。この歳で閉鎖的な生活をしていれば、知らないのも仕方ない。


「さて、他の器具も持って行こうか」


「うん」




鍋。ガスコンロ。その他器具に非常食。


一通りを抱えて外に出る。虫が4匹道を歩いているので物陰に隠れる。


「…ちょっと待ってて。タネはソハルを守っててくれ」


斧を手に取る。一息吸って飛び出す。


一番後ろを歩く虫に斧を振り下ろす。一撃で首をはねる。直ぐに鎌から離れて次の目標に。


横なぎの攻撃を伏せて躱す。虫の頭を縦に割り、次の目標に銃を、空気銃がない。

当たり前だ。初めから持っていなかった。普段の癖であると思い込んでいた。


一瞬の隙が出来てしまう。すかさずタネのしっぽが飛んで来て、虫が1匹死ぬ。


残った1匹に距離を詰め、鎌を切り落としてトドメをさした。


「…タネ。ありがとう」


「だいじょぶ」


これで食材も集まった。食べた事はあるが、解体は未経験だ。


ソハルが虫の死体を観察する。


「解体、教わっていいか?」


「うん」


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