異物
‡‡‡
苦しい。
暑い。
なにか触れた。
邪魔。
息を整える。
臭い所だ。
なんでこんなところに居るんだっけ?
口になにか固いものを押付けてくる変な生き物を振り払う。
[モモモ…モ…モモ……]
目の前の6本腕のタネが威嚇してくる。
うるさい。
ムカつく。
周りからも音がする。
胞子がザワついている。
[うるさい!!]
[…!!]
飛びかかる。
タネの動きで胞子が揺れる。
鞭尾鋒の突きを回避する。
生き物が動くと胞子が動く。
だから動きがよく見える。
[モモモモ……モモモ…]
[うるさい!僕は関係ない!]
取っ組み合いになる。
腕が多くたって、致命傷を先に与えた方の勝ちだ。
[モ…モモ…]
[今のお前らのほうが、よっぽと害獣だ]
タネの顎を掴んで引き裂く。
赤い血をぶちまけて動かなくなった。
鞭尾に身体を拘束される。
服を着たタネだ。
黄色いジャケット。
あれ?あのジャケットは
[ハ…ハハハハ………ルル…ルル…]
[………リズ?……リズをどうしたんだ!!]
鞭尾の拘束を解く。
二本腕のタネに飛びつこうとするが、さっき振り払った生き物が割って入る。
[邪魔だ!!]
手に持っている道具を狙うが、躱される。
動きが早い。胞子の流れもほとんど起きない。
何度も攻撃をするが、一向に反撃をしてこない。
[クソ!クソッ!!]
[ハハ…ルルル……]
[お前らにリズは渡さない!!]
さっきとは違う生き物が目に入る。
さっきのより大きい。
目を離した一瞬で、腕を後ろで抑えられた。
[離せ!!リズは僕が守るんだ!!]
暴れるけれど、強い力で抑えられる。
もう1匹、タネがやってきた。
二本腕だ。
そいつがゆっくり近づいてきて、僕の口を強引に開けさせた。
殺される。
そう思ったが、予想に反して、口に何かを入れられた。吐き出そうとするが、今度は口を抑えられる。
[ユユユ……]
‡‡‡
カリンから少し離れた所で座り、様子を見る。
荒れた道路はあちこちめくれていて、ここだけ少し胞子が少なくなっている。
カリンのガスマスクの音が聞こえてくる。寝ていると多く消費するのかもしれない。
暴れていたカリンは、まるで獣のような唸り声を発していた。何か、意味のある鳴き声なのだろうか?
カリンが目を覚ます。飛び起きて周りを確認している。めでたい奴だ。
瞳もいつものカリンに戻っている。
「え!なんで?寝てたんですか?僕」
「…なんか覚えてるか?夢でもいい」
「えっと……春?」
混乱が激しいようだ。横に居るタネが首を傾げる。
「全く。貴重な物だったんだぞ」
ユユが横で不貞腐れる。ユユに気づいたカリンが顔を赤らめながら驚く。
「え!?なんでここに…って、僕はまだ、信用してませんよ!」
「ハイハイ。それでいいよ…で、こいつはなんなんだ?」
ヴィンは、ケラ喰いであるユユを熱心に観察しては、スケッチブックに食いついている。言葉が耳に入ってないようだ。
「ユユが魅力的なんだろ」
「そうか…」
冗談を言ったつもりだったが、伝わってないみたいだ。
「ところで、あの実は一体何だったんだ?」
ユユが颯爽と現れ、暴れているカリンの口を開けさせ、何か植物の実を口に入れていたのを確かに見た。
「あれは、胞子を殺す実だ」
「…なるほど?つまり?」
「体内の胞子を死滅させる効果がある。らしい」
「そんなものを何故持ってるんだ?」
「…美味しい、から」
リズの異常性。タネの胞子発言。カリンの暴走。胞子を殺す実。結べそうな点が増えていく。
「それは、どこで採れる物なんだ?」
「おしえてもいいけど、条件がある。1つ。あんたの持ってるその銃を貰う。2つ。私をあんたらのコミュニティに連れてって」
久しぶりに会うのに強欲なやつだ。まずは空気銃を渡す。
「…撃てないじゃん」
「ボンベは渡せん。生命線だ」
「…わかった」
ユユはスリングを肩に通して、お飾りの空気銃を装備する。
「2つ目に関しては、こちらも条件がある」
「…何?」
「服を着ろ」
「…待ってて」
ユユは立ち上がり適当な建物に入っていく。スケッチしていたヴィンが名残惜しそうに手を伸ばした。
しばらくしてユユが戻ってくる。女性用のキャミソールと、下は男用のパンツを履いてきた。
絶望的にセンスがないが、ケラ喰いにセンスを求めるものでは無い。
「…よし、案内してくれ。ついでにもう少しまともな格好を探そう…」
「…ベゴニア。どう?」
「今んとこ大丈夫だ。ありがとう。ヴィン」
立ち上がると、カリンに切り付けられた脇腹が痛む。カリンが起きる前にヴィンと縫い合わせたが、激しい動きはしない方が良さそうだ。
「ほら、行くぞ」
ユユがカリンを無理やり起こす。起こしながら、カリンと静かに会話しているのを聞き逃さない。
「…お前と同じ匂いの女はどこだ」
「…リズの事?また誘拐しようとしてる?」
「あれは、あの男が、そうしろと言ってたから、そうしただけだ…」
「ふーん…リズは、今はコミュニティに居るよ」
「…そうか」




