69.親子対決その後
その頃、リゾルーテンとフェルマーテンは親子共に完全に無我夢中になり、互いの隙を狙った打ち合いと、力比べとが続いていた。
何度か互いにかすり傷を負わせながら、決定的な打撃は無い。
親衛隊員たちもこんな見ものの試合を見るのは初めてのことだった。
定期的に開かれる御前試合でも、隊長のリゾルーテンは試合に参加せず、息子のフェルマーテンもこんな鬼気迫るような戦いぶりを見せたことが無かったからだ。
リゾルーテンとフェルマーテン親子が北の国出身でありながら重用されていることを快く思っていない、一部のコーダ上流貴族子弟の親衛隊員も、彼らの本当の強さを目の当たりにしてその迫力にすっかり呑まれていた。
しかし、疲労が動きをにぶらせ始めた頃、父は遅まきながらふと我に返る。
剣を合わせてお互いの顔が近いときに、小声で話しかける。
「おい、このまま続ければ、どちらが勝って明日の旅に行くことになっても、支障が出るぞ」
「俺は負けられない。何がなんでも親父に勝つ!」
ここまで練習試合をしてきて、ほぼ互角だろう、ということが分かってきた。 リゾルーテンには息子の成長が嬉しく頼もしかった。
「では引き分けでどうだ」
「引き分けでも俺を旅に行かせてくれるのか?」
「楽しい試合を途中で中断するのは心残りだが、このままでは二人とも潰れる。それは本望ではないからな。お前に実力があることは分かった」
「やった……!」
「まだ止めるなよ。最後に一撃、俺にくらわすのを許してやる。足か腕に来い」
「なんでだ?」
「いいから来い」
力比べの状態からいったん二人は後ろに飛びのいて離れると、再びフェルが打ちかかった。
(足……!)
リゾルーテンはその一撃を受けようとする様子を見せたが、一瞬ふらついた。
(あ……わざとか)
フェルは父の目を見ながら、打ち込む力を少しゆるめたつもりだった。
ボクッ
鈍い音がして、低い姿勢からの打撃がすねを横からとらえていた。
「ううあああっ!!」
低いうめき声を上げてリゾルーテンがすねを抱えて転がる。
(え? そんなに?)
思った以上のダメージを受けた様子にとまどい、立ったまま汗を流しながら父を見つめるフェルの前に、
「隊長!」「隊長!」と口々に叫びながら駆け寄る部下たち。
「あああ、骨が折れたかもしれん。明日からの旅は責任取ってフェルマーテンに行ってもらうしかないな」




