33.過去からの誕生日プレゼント(4)
父はアッチェルの16歳の誕生日プレゼントを用意して、こんなところへ隠しておいたのだ。
アッチェルはその日、16歳の誕生日をよく覚えている。父は、誕生日までには帰って来ると言って旅に出たのだった。
だが、叔父もらくだ仲間もみんな、あまり期待しない方がいいよ、と首を振っていた。
というのも、その数ヶ月前に、父と、その時行動を共にしていた仲間との乗っていたらくだ数頭が、乗り手も荷物も無く、オアシスの近くを彷徨っているのを発見されたからだ。
盗賊に襲われたに違いない、とのことだった。らくだ仲間が捜索してくれたものの、父の行方も生死も分からなかった。
だが、広い砂漠で行方不明になる、ということは死を意味し、死と見なされた。
父がいないときはこれまでもアッチェルが代理となっていたが、らくだ仲間や叔父にも説得されて、アッチェルが正式な店主となった。店主不在のままでは店が成り立たない、と。
確かにこれまで代理の時は、店番程度のことしかせず、物の売り買いに関しても父が帰って来たら売る、という予約しか受け付けていなかったのだ。
しかし、そのままで父を待っていたとしても商売が立ち行かないので、正式に父から店を引き継いだことにして、店主として商品の売り買いにも携わるようになったのだ。
しかし、アッチェルは父を待っていた。
行方不明というのは、気持ちが落ち着かないものだ。悲しんでいいのか、期待していいのか分からない。悲しんでしまうと、あきらめてしまったかのようなので、悲しまないようにしようと思う。しかし、期待してしまっても、帰って来る気配も無いことにだんだん消耗され、不安に苛まされる。
そんな中で、周囲にあきらめろと言われ続けながらも、誕生日までには帰って来る、という父の言葉を、やはり信じていたのだ。
アッチェルの誕生日の日、アッチェルは朝からずっと、待っていた。
夜には従妹のレーカが来てくれて、二人で誕生日祝いの料理を準備した。
だが、父が帰って来たら夕食を始めようと思っていたが、料理を前にして、食べずに夜が更けるまで待っても、父は帰って来なかった。
アッチェルは父の行方不明の知らせを聞いてから、この時初めて声を上げて泣いた。いつもより手間をかけて作った料理がすっかり冷えて並んでいるテーブルに、顔をうつぶせて、
「誕生日までには帰って来るって言ったのに! 約束を破ってひどい!」と、子供のように怒って泣いた。
レーカは何も言わずに、優しくアッチェルの背中をなでてくれた。
「父さん、私はもう17ですよ」
アッチェルは少しの間じっとして心を落ち着けてから、手紙を折り畳んで袋にしまうと、立ち上がった。
宝石を鑑定してもらった、と書いてあった。
馴染みの宝石店に違いない。
明日、旅に出発するため、時間があまりない。
アッチェルはすぐに宝石店へ向かった。




