32.過去からの誕生日プレゼント(3)
『アッチェル、お誕生日おめでとう。
お前もう16か。信じられん。時間が経つのは早いよなあ。
俺もついこの間まで16だったんだぜ?
それはともかく、誕生日プレゼントに、このすごいお宝をやるよ。
これはすごいんだ。
絶対に売ったり、人に言いふらすな。
絶対に人に触らせるな。
この袋から長い時間出しておくのもだめだ。
ああ、こんなことは口で話せばいいな。
わざわざ手紙に書くことはなかった。
これについてお前に話すのがわくわくして待ちきれないよ。
真ん中の宝石はサファイアだぜ?
鑑定してもらったから間違いない。
俺はこれからも、家を留守にしてあちこち出歩くだろうが、
念のために言っておく。
アッチェル、お前のことがとても大切だ。
(照れるな)
ただ、俺は昔からの性分で、旅に出ずにはいられないんだ。
母さんを長いこと一人にしたこともあったけど、
心が離れたわけじゃない。
遠くにいてもいつも思っている。
せっかく俺らしくもなく手紙なんか書いたことだし、
何かいいことを言ってやろうか。
“他人の人生を生きるな。自分の人生を生きろ”
どうだ。なかなか名言だろう?
俺が考えたんだったか、誰かが言ったんだったかは忘れたが、
まあ、それはどうでもいい。
他人ってのは、俺も父親だけど、他人ってことだからな。
まあ、そこんとこを覚えとけ。
お前とゆっくり話す時間も作らないとな。
だが、今はちょっと忙しいんだ。
それが、すごいんだよ。早く話したくてたまらない。
ああ、こんなことをこの手紙に書いても仕方ないな。
とにかく、誕生日、おめでとう。
アッチェラード・カリーム』
この、肝心なことが書かれていない手紙に、苦笑し脱力しながらも、アッチェルの目頭は熱くなった。




