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魔力適性Eの落ちこぼれ、俺だけが武器を複製できる  作者: 狙撃犬
Chapter 0 — Echoes of Twenty Years Ago

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Chapter 0.6 — Something Is Wrong

二人が冒険者として活動を始めてから、いくつかのダンジョンを攻略した。


最初は小さなダンジョンばかりだった。


出てくる魔物も弱く、危険を感じる場面はほとんどない。


それでも、二人にとっては十分に楽しかった。


未知の場所へ入り、知らない魔物と戦い、誰も見たことのない場所を見つける。


蓮司が冒険者になりたかった理由は、まさにそこにあった。


「なあ、玲奈」


「何?」


「そろそろ、もっと深いところまで行ってみないか?」


ある日の帰り道、蓮司が突然そう言った。


玲奈は隣を歩きながら考える。


「……今までで一番深くても五階層でしょ」


「だからこそだよ」


「危険も増えるわ」


「分かってる」


蓮司は少しだけ真剣な顔をした。


「でも、いつまでも浅いところだけじゃ、本当のダンジョンは分からないだろ?」


玲奈は蓮司を見る。


その表情には、いつもの好奇心が浮かんでいた。


「……そうね」


「じゃあ!」


「ただし、準備をしてから」


「分かった!」


*


二人が目をつけたのは、街から少し離れた場所にあるダンジョンだった。


発見されてからまだ数年。


すでに十階層までは攻略されているものの、それより先は未攻略。


探索者の間では、そこそこ有名な場所だった。


「ここか」


入り口を見上げ、蓮司が呟く。


大きな岩壁に開いた穴。


その奥には、暗闇が広がっている。


「十階層より先は、まだ誰も攻略してないらしい」


玲奈が資料を確認する。


「十階層までは地図がある。でも、それより下は何があるか分からない」


「最高だな」


「怖くないの?」


「怖いよ」


蓮司は即答した。


「でも、楽しみの方が大きい」


玲奈は呆れたように笑う。


「本当に変わらないわね」


「昔からそうだろ?」


「そうだったわね」


二人は顔を見合わせる。


そして、ダンジョンの中へ入っていった。


*


一階層。


二階層。


三階層。


地図を確認しながら、二人は順調に進んでいく。


以前よりも魔物は強い。


それでも、蓮司が前衛で敵を引きつけ、玲奈が魔術で援護する。


二人の連携は、以前とは比べものにならないほど自然になっていた。


「右!」


玲奈の声に反応して、蓮司が横へ跳ぶ。


その直後、蓮司がいた場所を魔物の爪が通り過ぎた。


「――集え、我が魔力。形を成し、彼方を穿つ光となれ」


「《光弾》!」


魔物の身体に光弾が直撃する。


蓮司は間髪入れずに距離を詰め、剣を振り下ろした。


魔物が消滅する。


「よし!」


「今の動き、良かったわ」


「だろ?」


「調子に乗らない」


「はい」


そんなやり取りをしながら、二人はさらに奥へ進んでいった。


*


十階層。


ここから先は、二人にとって未知の領域だった。


「……本当に何も分からないな」


蓮司が地図を見る。


十階層の先には、何も書かれていない。


「じゃあ行きましょう」


玲奈が前を見る。


階段の先には、暗闇が広がっていた。


二人は慎重に足を進める。


十一階層。


そこは、それまでの階層とは明らかに違っていた。


壁の材質。


空気。


魔力の濃さ。


どれも今までとは違う。


「……変ね」


玲奈が壁に手を触れる。


「何が?」


「魔力が流れてる」


「壁の中に?」


「ええ」


玲奈は目を閉じる。


「このダンジョン……まだ私たちが知らない仕組みがあるのかもしれない」


蓮司は周囲を見渡した。


「だったら、もっと見てみよう」


「慎重にね」


二人はさらに奥へ進んだ。


しばらくすると、通路の先に大きな扉が現れた。


「扉?」


蓮司が近づく。


その横には、古い文字が刻まれている。


玲奈が読み取ろうとした、その時だった。


「待って」


「どうした?」


「これ……」


玲奈の視線が、扉の横にある小さな金属板へ向く。


そこには、ダンジョンから採取された魔力石についての研究記録が残されていた。


「研究施設?」


「どうしてこんな場所に……」


二人は顔を見合わせる。


記録には、魔力石の性質や魔術に関する研究内容が書かれていた。


その中に、二人が知らない言葉があった。


『魔術器官』


「魔術器官……?」


蓮司が読み上げる。


玲奈は資料を読み進めていく。


「魔術を発動するための器官……」


「そんなもの、人間の身体にあるのか?」


「私も聞いたことがない」


さらにページをめくる。


そこには、驚くべき研究結果が記されていた。


魔術器官を他人へ移植する。


そして――


移植された人間が、元の持ち主の固有魔術を使用できる可能性。


「……これ」


玲奈の声が止まる。


蓮司も言葉を失った。


「つまり……」


しばらくして、蓮司が呟く。


「人間から人間へ、魔術を渡せるってことか?」


玲奈は答えられなかった。


そんな技術が存在するなら。


強力な固有魔術を持つ人間の器官を、別の人間へ移植できる。


それは、ただの医学研究ではない。


使い方次第では――。


「……危険すぎる」


玲奈が小さく呟いた。


そのとき。


「おい!」


突然、後ろから声が聞こえた。


二人が振り返る。


そこには、別の探索者たちが立っていた。


「ここから先は立入禁止だ」


「え?」


「研究施設が残ってる。勝手に入るな」


探索者たちは二人から資料を取り上げると、そのまま奥へ進んでいった。


蓮司が玲奈を見る。


「……何だったんだ?」


「分からない」


玲奈は手元に残った一枚の資料を見る。


そこには、小さくこう書かれていた。


『研究継続の必要性について』


*


数日後。


この研究は大きな問題として報道されることになった。


他人の魔術器官を移植することで、元の持ち主の固有魔術を引き継ぐことができる。


その事実は世間に大きな衝撃を与えた。


しかし同時に、人体への危険性や人間の尊厳を損なう可能性が指摘され、強い批判を受けることになる。


最終的に政府は研究の中止を決定した。


魔術器官の移植によって他人の固有魔術を引き継ぐ研究は、非人道的な研究として禁止された。


研究施設も閉鎖され、関連する資料の多くは公開されなかった。


世間では、それで終わったことになった。


――少なくとも。


表向きには。

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