Chapter 0.2 — The Meeting of Two
「……Aか」
検査室を出た蓮司は、手元の結果を眺めながら廊下を歩いていた。
「そんなに見ても、結果は変わらないわよ」
隣を歩く玲奈が言う。
「分かってる。でも、まだ実感なくてさ」
「私もAだった」
「二人ともAか。なんかすごいな」
「ただの偶然でしょ」
「そうかもしれないけど……」
蓮司は検査結果を見つめた。
「これで、本当に冒険者を目指せるんだな」
玲奈が足を緩める。
「そこまでして、なりたい?」
「なりたい」
今度は迷わなかった。
「どうして?」
「どうしてって……」
蓮司は少し考え、窓の外へ目を向けた。
「小さい頃に見たダンジョンが忘れられないんだ」
「テレビで?」
「ああ。まだ誰も行ったことのない場所があるって聞いてさ」
蓮司は楽しそうに笑った。
「その先に何があるのか、自分で見てみたい」
「それだけ?」
「それだけで十分だろ」
「命を懸けるには、随分と子どもっぽい理由ね」
「そうかもな」
蓮司は肩をすくめる。
「でも、誰かが見つけたものを後から知るんじゃなくて、自分で見つけたいんだ」
玲奈は少し黙ってから、口を開いた。
「……私は知りたい」
「何を?」
「ダンジョンが何なのか」
蓮司が玲奈を見る。
「二十年前まで存在しなかった。なのに突然現れて、魔力石まで生み出した」
玲奈は歩きながら続ける。
「今では当たり前になってるけど、考えてみれば変な話よ」
「確かにな」
「だから、私はその答えを探したい」
「じゃあ、ちょうどいいな」
「何が?」
「俺は見たい。お前は知りたい」
蓮司が笑う。
「二人で行けば、両方できるだろ」
玲奈は一瞬だけ目を丸くした。
「……随分と簡単に言うのね」
「難しいから面白いんじゃないか?」
「本当にそういうところ、変わってる」
「褒め言葉?」
「違う」
二人は笑いながら階段を下りていく。
その途中、玲奈の視線が蓮司の腰に向いた。
「そういえば、その剣」
「これ?」
蓮司が柄に手を置く。
「親父からもらった。昔から使ってるんだ」
「結構古いわね」
「見た目だけだって。今まで壊れたことないぞ」
「大切にしてる?」
「そりゃな」
蓮司は少し嬉しそうに答えた。
「いつかこいつと一緒に、ダンジョンの奥まで行くんだ」
「剣と一緒に?」
「相棒ってこと」
「……変なの」
「またそれかよ」
施設の外へ出る。
朝の風が二人の間を通り抜けた。
「じゃあ、まずは準備ね」
玲奈が言う。
「おう」
「装備を揃えて、ダンジョンについて調べる」
「分かった」
「勝手に先へ行かない」
「それは……」
「蓮司?」
「分かりました」
玲奈が小さく笑った。
二人は並んで歩き始める。
その腰で揺れる一本の剣が、朝の光を受けた。
ほんの一瞬。
刀身の奥で、赤い光が揺れた。
玲奈が振り返る。
けれど、そこには何もなかった。
「……気のせいか」
小さく呟いて、玲奈も歩き出した。




