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魔力適性Eの落ちこぼれ、俺だけが武器を複製できる  作者: 狙撃犬
第1章 最下位からの始まり

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第29話 武器に込めた答え

第29話 武器に込めた答え


 轟音がフィールドを揺らした。


 榊原の放った大型魔導砲の魔力弾が、俺のすぐ横を通り過ぎる。


 地面が爆発し、砂煙が一気に舞い上がった。


「っ……!」


 俺は木刀を握ったまま、煙の中を走る。


 視界が悪い。


 それでも足を止めない。


「……黒瀬!」


 煙の向こうから榊原の声が聞こえた。


「まだ動けるのかよ!」


「そっちこそ!」


 俺が答える。


 だが、榊原の声には、さっきまでとは違う息遣いが混じっていた。


 ――荒い。


 俺だけじゃない。


 榊原も限界に近づいている。


 魔導展開。


 武器を作り出すだけなら、そこまで大きな魔力は必要ない。


 でも、一度に複数の武器を展開し、それぞれを操作し続けるとなれば話は別だ。


 さっきから榊原は、何度も武器を出している。


 銃。


 剣。


 盾。


 大型砲。


 そのたびに魔力を消費している。


「……っ」


 榊原が小さく息を吐いた。


 額には汗が浮かんでいる。


「さすがに……きつくなってきたな」


「だったら、もう武器を出さない方が――」


「それじゃ勝てないだろ」


 榊原が笑った。


 魔法陣が浮かぶ。


 魔導剣。


 俺は木刀を構える。


「まだやれる」


 剣が振り下ろされる。


 ガキィン!


 受け止めた瞬間、腕が痺れた。


 俺は横へ受け流す。


 そのまま木刀を振る。


 榊原が身体を引く。


 そして魔導剣が消えた。


「また変える!」


 次の瞬間、左右に二丁の魔導銃が展開された。


 魔弾が飛んでくる。


 俺は走った。


 右。


 左。


 一発目をかわす。


 二発目を木刀で弾く。


 三発目が足元をかすめた。


「くっ……!」


 俺はさらに前へ出る。


 榊原が銃を消す。


 しかし、次の魔法陣が浮かばない。


「……?」


 一瞬だけ、榊原の動きが止まった。


 その顔が苦しそうに歪む。


「榊原?」


「……悪い。ちょっとだけ魔力切れが近い」


 それでも榊原は笑っていた。


「でも、まだ終わってない」


 右手を前に出す。


 魔法陣が一つ。


 そこから魔導剣が現れる。


 俺は踏み込んだ。


 剣と木刀がぶつかる。


 一度。


 二度。


 三度。


 榊原の動きが少しずつ遅くなっていく。


 さっきまでなら、俺が一撃振る間に二つ、三つと武器を切り替えていた。


 今は違う。


 一つの武器を出したあと、次の展開までにわずかな間がある。


 俺はその隙を狙った。


「そこだ!」


 木刀を振る。


 榊原が剣で受ける。


 だが、押し切れない。


「……っ!」


 榊原の膝がわずかに沈んだ。


 俺はさらに踏み込む。


「まだ!」


 榊原が剣を消す。


 魔法陣。


 今度は盾。


 木刀が盾にぶつかる。


 ガンッ!


 榊原が後ろへ吹き飛ぶ。


 盾を消した。


 息がさらに荒くなっている。


「はぁ……はぁ……」


「もうやめた方がいい」


「それは無理」


 榊原が顔を上げる。


「ここまで来たんだ。最後までやる」


 その目には、まだ戦う意思があった。


「俺は武器を信じてない」


 榊原の周囲に、再び魔法陣が浮かぶ。


「だからこそ、その場で一番必要な武器を選ぶ」


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 魔法陣が増えていく。


「……でも」


 榊原の呼吸が大きく乱れる。


「武器を増やせば増やすほど……俺自身の魔力は減っていく」


 魔導銃が展開される。


「だから、これで終わらせる」


 さらに大型の魔法陣。


 魔力が吸い上げられていくのが分かるほど、空気が震えていた。


「魔導展開――フルバースト!」


 大量の魔導武器が一斉に展開された。


 銃口が俺を狙う。


 大型砲が魔力を集める。


 魔導剣が空中に浮かぶ。


 盾までが榊原の周囲に展開される。


 その瞬間――


 榊原の顔から血の気が引いた。


「……っ、はぁ……!」


 明らかに苦しそうだった。


「大丈夫か!」


「大丈夫……!」


 強がっているのが分かる。


 これだけの武器を同時に維持すれば、榊原の魔力は急速に削られる。


 たぶん、これが本当に最後だ。


「行くぞ、黒瀬!」


「来い、榊原!」


 魔弾が一斉に放たれた。


 俺は走る。


 右。


 左。


 魔弾をかわす。


 大型砲が放たれる。


 横へ飛ぶ。


 着地。


 魔導剣が振り下ろされる。


 木刀で受ける。


 弾く。


 次の魔弾。


 避ける。


 さらに一発。


 木刀で弾く。


「くっ……!」


 榊原の息が聞こえる。


 武器が一つ消えた。


 続いて、もう一つ。


 魔導銃が消えていく。


「……まだ!」


 榊原が魔力を込める。


 新しい武器を展開しようとする。


 だが――


 魔法陣が途中で消えた。


「……っ!」


 魔力が足りない。


 榊原の顔に焦りが浮かぶ。


 それでも残った武器を動かす。


 俺はその隙を見逃さなかった。


 踏み込む。


 魔弾をかわす。


 大型砲の射線から外れる。


 そして――


 榊原との距離を一気に詰めた。


「しまっ――!」


 榊原が最後の魔導剣を展開する。


 俺も木刀を構える。


 剣と木刀がぶつかった。


 ガキィン!


 互いの武器が弾かれる。


 もう一度。


 榊原が振る。


 俺が受ける。


 だが、今度は榊原の剣がわずかに遅れた。


 魔力が限界なのだ。


 俺は一歩踏み込んだ。


 木刀を振る。


 榊原が受けようとする。


 けれど――


 魔導剣が消えた。


 維持できなくなったのだ。


「……!」


 榊原の目が見開かれる。


 俺は木刀を止めようとした。


 だが、勢いは完全には止まらない。


 木刀が榊原の胸元を捉えた。


 ――ドンッ!


 榊原の身体が大きく吹き飛ぶ。


 そのまま地面を滑り、フィールドの端近くで止まった。


 静寂。


 俺は木刀を下ろした。


 そして、試合終了のアナウンスが響いた。


『勝者――黒瀬悠真!』


 歓声が上がる。


 俺はその場に立ったまま、荒い呼吸を繰り返した。


「……勝った」


 ようやく実感が湧いてきた。


 五十位。


 ついに、ここまで来た。


 少しして、榊原がゆっくりと身体を起こした。


「……負けたか」


「大丈夫か?」


「平気。魔力切れで身体が重いだけ」


 榊原は苦笑する。


「最後の一撃、ちゃんと止めようとしてたろ」


「……分かった?」


「分かるよ、それくらい」


 榊原が立ち上がる。


「でも、止めなくてよかった」


「え?」


「最後まで戦って負けた。それでいい」


 榊原は俺の木刀を見る。


「お前は一本を最後まで使った」


 そして、自分の手を見る。


「俺は最後まで武器を変え続けた」


「……ああ」


「どっちも、自分で選んだ戦い方だ」


 榊原が笑う。


「今日はお前の方が強かった。それだけだ」


 俺も笑った。


「ありがとう」


「こっちこそ」


 榊原が手を差し出す。


 俺はその手を握った。


「次は勝つからな」


「俺も負けるつもりはない」


「それでいい」


 俺たちは手を離した。


 戦い方は違う。


 考え方も違う。


 それでも、互いのやり方を否定する必要はなかった。


 俺は木刀を見つめる。


 さっき戦っている途中で感じた、あの不思議な感覚。


 知らない誰かの動きが、自分の中に流れ込んできたような感覚。


 あれが何だったのかは、まだ分からない。


 ただ――


 今日の戦いで、一つだけ確かなことがある。


 武器は消えても。


 戦いは消えない。


 経験は、自分の中に残る。


 俺は木刀を握り直した。


 五十位。


 ここから先には、もっと強い奴らがいる。


 神崎。


 鳴海。


 そして、まだ見たことのない上位ランカーたち。


 俺の戦いは、まだ終わらない。


 ――むしろ、ここからだった。

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