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魔力適性Eの落ちこぼれ、俺だけが武器を複製できる  作者: 狙撃犬
第1章 最下位からの始まり

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第18話 学園四極

 ランキングが更新されてから、三日が経った。


 黒瀬悠真。


 89位。


 その数字にも、少しずつ慣れてきた。


 少なくとも、周りの反応には。


「黒瀬、お前また勝ったらしいな」


「昨日も模擬戦してただろ?」


「89位になってから何回戦ってるんだよ」


 廊下を歩くだけで声をかけられる。


 少し前まで、俺に話しかけてくる人なんてほとんどいなかった。


 魔力適性E。


 落ちこぼれ。


 ランキング256位。


 それが俺だった。


 今は違う。


 だけど。


「……まだ89位か」


 掲示板を見る。


 自分の名前より上には、88人いる。


 鳴海恒一。


 42位。


 そして、そのさらに上。


 1位。


 神崎蓮。


「黒瀬くん」


 後ろから天音の声がした。


「またランキング見てるの?」


「ああ」


「89位になってから、毎日見てない?」


「そうか?」


「そうだよ」


 天音が笑う。


「そんなに気になる?」


「気になる」


 俺は正直に答えた。


「鳴海には負けた」


「うん」


「でも、あいつと戦ったおかげで分かったこともある」


 武器を変えるだけでは足りない。


 相手を見る。


 動きを読む。


 自分の戦い方を磨く。


 それができれば、もっと上へ行ける。


「それに」


 俺はランキング表の上を見る。


「もっと強い奴がいる」


 天音も掲示板を見る。


「神崎くん?」


「ああ」


「それだけじゃないよ」


「え?」


 天音がランキング表を指差した。


「神崎くんだけじゃなくて、上位四人」


「上位四人?」


「知らないの?」


 天音は少し驚いた顔をした。


「この学校では有名だよ」


 俺は掲示板を見る。


 上位の名前。


 一位。


 二位。


 三位。


 四位。


「この四人を、みんな『学園四極』って呼んでるの」


「学園四極……」


「うん。ランキング上位ってだけじゃなくて、戦い方そのものが別格なんだって」


 俺は四人の名前を眺めた。


 その中に。


 知っている名前が一つある。


 神崎蓮。


 ランキング一位。


 魔力適性S。


 能力――雷帝。


 俺がまだ一度も戦ったことのない相手。


「……四人か」


「黒瀬くん?」


「いや」


 俺は笑った。


「面白そうだなって」


     ◇


 その日の放課後。


 俺は訓練場へ向かっていた。


 ランキング戦を申し込むつもりだった。


 89位。


 ここからさらに上がる。


 鳴海に負けたままなのも気になる。


 だったら。


 戦うしかない。


 訓練場の扉を開けた。


「……あれ?」


 誰もいない。


 と思った。


「黒瀬」


 声がした。


「……!」


 振り返る。


 そこにいたのは。


「神崎……?」


 ランキング一位。


 神崎蓮だった。


「何してるんだ?」


「それはこっちの台詞だ」


 神崎は壁にもたれながら俺を見る。


「お前がここに来ると思っていた」


「俺を?」


「ああ」


「なんで?」


「ランキングを見ていれば分かる」


 神崎は俺の方へ歩いてくる。


「89位」


「……そうだな」


「鳴海と戦った」


「ああ」


「そして負けた」


「……それも合ってる」


 神崎は少しだけ笑った。


「それでも、ランキングは大きく上がった」


「学校が評価してくれたからな」


「違う」


 神崎は言った。


「お前自身が変わったからだ」


 俺は黙った。


「数日前のお前と、今のお前では戦い方が違う」


「……見てたのか?」


「全部じゃない」


 神崎は右手を上げた。


 その瞬間。


 バチッ、と小さな雷が走った。


「ただ、噂くらいは聞いている」


 空気が変わる。


 これが。


 ランキング一位。


「黒瀬」


「なんだ?」


「一度、戦ってみるか?」


 心臓が跳ねた。


「……いいのか?」


「本気の模擬戦じゃない」


 神崎は構えない。


「一度だけ、お前の実力を見たい」


「分かった」


 俺は右手を前に出した。


「武装精製」


 一本の剣が現れる。


 神崎の目が剣を見る。


「それがお前の武器か」


「そうだ」


「……面白い」


 神崎が一歩踏み出す。


 次の瞬間。


 視界から消えた。


「――っ!」


 反射的に横へ飛ぶ。


 俺がいた場所を雷が走った。


「速い……!」


 神崎はすでに反対側にいる。


「避けたか」


 俺は剣を構える。


 もう一度。


 雷。


 俺は避ける。


 床が弾ける。


「くっ……!」


 速すぎる。


 鳴海とは違う。


 鳴海は一撃の重さ。


 神崎は速度と魔力。


 同じ上位でも、戦い方がまるで違う。


「武装精製!」


 俺はグロウソードを作る。


 床に突き刺す。


 一気に距離を取る。


 神崎が追ってくる。


「逃げるだけか?」


「まさか!」


 俺はグロウソードを消した。


 そして。


「ブーストソード!」


 身体能力を強化する。


 踏み込む。


 一気に近づく。


「……!」


 神崎の目が細くなる。


 俺は剣を振った。


 神崎が雷をまとった腕で受ける。


 ――ガキン!


 剣が弾かれる。


 その瞬間。


 俺は剣を消した。


「なに?」


「武装精製!」


 フレアブレイド。


 炎をまとった剣が生まれる。


 神崎の雷とぶつかる。


 ――バチィッ!


 炎と雷が弾ける。


「……っ!」


 神崎が一歩下がった。


 ほんの一歩。


 だけど。


 確かに。


 神崎の足が動いた。


「……」


 俺も驚いていた。


 神崎も自分の足を見る。


「今の……」


 訓練場が静かになる。


「俺を押したのか?」


 神崎が顔を上げる。


「……たまたまだ」


「いや」


 神崎が笑った。


「今のはお前の実力だ」


 その瞬間。


 神崎の周囲に雷が集まる。


「でも」


 空気が震える。


「ここからは、俺の番だ」


「……!」


 雷が爆発する。


 俺は反射的に剣を構えた。


 だが。


 次の瞬間には。


 神崎が目の前にいた。


「速――」


 言葉を最後まで言えなかった。


 剣が弾かれる。


 身体が後ろへ吹き飛ぶ。


「ぐっ!」


 床を転がる。


 立ち上がろうとする。


 だが。


 目の前には、すでに神崎がいた。


 雷をまとった拳が、俺の目の前で止まる。


「ここまでだ」


「……」


 俺は息を切らしながら神崎を見る。


 何もできなかった。


 さっき一歩下がらせた。


 それだけ。


 そこから先は。


 完全に神崎の方が上だった。


「……強いな」


「お前も悪くない」


 神崎は手を下ろす。


「正直、少し驚いた」


「少し?」


「ああ」


 神崎は笑う。


「89位にしては、な」


「……それ、褒めてるのか?」


「褒めてる」


 神崎は踵を返す。


「ただし」


「?」


「俺に追いつくつもりなら、もっと強くなれ」


 神崎は振り返らない。


「今のお前じゃ、まだ全然足りない」


 扉が閉まる。


 俺はしばらく、その場に立っていた。


「……全然足りない、か」


 悔しい。


 でも。


 嫌じゃない。


 むしろ。


 身体の奥が熱くなっている。


 神崎に勝てなかった。


 当然だ。


 ランキングは89位。


 神崎は1位。


 それでも。


 一度だけ。


 俺は神崎を動かした。


「……一歩」


 たった一歩。


 それだけだった。


 でも。


 届かないわけじゃない。


 そう思えた。


     ◇


 帰り道。


 俺はスマートフォンを取り出した。


 ランキングを開く。


 89位。


 その上に、88人。


 そして。


 さらにその先に、学園四極。


「……まだまだだな」


 俺は呟いた。


 鳴海にも負けた。


 神崎にも勝てない。


 それでも。


 少し前の俺なら、神崎の攻撃を避けることすらできなかった。


 今日は。


 一歩だけ。


 あいつを動かした。


「だったら」


 俺は拳を握る。


「次は二歩だ」


 その瞬間。


 右手の青白い印が光った。


 視界の端に文字が浮かぶ。


『戦闘データ更新』


『高位適合者との接触を確認』


『武装情報――解析率上昇』


「……高位適合者?」


 聞いたことのない言葉だった。


 表示はすぐに消える。


 俺は首を傾げながら歩き出した。


 その頃。


 学校のランキング管理室では、一つの画面が表示されていた。


『黒瀬悠真』


『現在ランキング――89位』


『魔力適性――E』


 その下。


 通常のランキングには存在しない項目。


『E-CLASS』


『ERROR――NO DATA』


『ENEMY――ACTIVE』


 そして。


 新しい文字が一つ。


『HIGH-CLASS CONTACT――CONFIRMED』


 画面の奥で。


 三本線の紋章が、一瞬だけ明滅した。

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