↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力適性Eの落ちこぼれ、俺だけが武器を複製できる  作者: 狙撃犬
第1章 最下位からの始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/40

第17話 「89位」

 鳴海との模擬戦が終わった翌日。


 学校中が、その話題で持ちきりだった。


「昨日の試合見た?」


「見た見た! 最後の一撃ヤバかったな!」


「黒瀬、マジで156位の動きじゃなかったぞ」


「鳴海先輩相手にあそこまでやるって……」


 教室へ向かう廊下でも、そんな声が聞こえてくる。


 俺はなるべく気にしないように歩いた。


 昨日の試合。


 俺は負けた。


 最後に立っていたのは鳴海だった。


 それは間違いない。


 だけど。


 不思議と悔しくなかった。


 むしろ。


「……次は勝つ」


 自然とそう思っていた。


「黒瀬くん」


 後ろから声がした。


 振り返る。


 天音が走ってくる。


「おはよう」


「おはよう」


「昨日の試合、すごかったね」


「見てたのか?」


「うん。最初から最後まで」


 天音は少し笑った。


「正直、途中からどっちが勝つか分からなかった」


「俺は最後まで分からなかったよ」


「でも、負けたのに嬉しそう」


「そうか?」


「うん」


 俺は少し考える。


「……強い奴と戦うのって、面白いんだな」


「今さら?」


「今までは勝つことしか考えてなかったから」


 昨日、鳴海と戦って分かった。


 勝つだけじゃない。


 自分より強い相手と戦えば、自分に足りないものが見えてくる。


 そして。


 もっと強くなりたいと思える。


「黒瀬くん、変わったね」


「そうか?」


「うん」


 天音はそう言って笑った。


 そのとき。


 校内放送が鳴った。


『全校生徒に連絡します』


 教室の空気が変わる。


『昨日行われた模擬戦の結果を受け、本日付でランキングの更新を行います』


 ざわざわと声が広がる。


 俺も教室のモニターを見る。


『対象者――黒瀬悠真』


 画面に俺の名前が表示された。


『旧ランキング――156位』


 そして。


 一瞬の間。


『新ランキング――89位』


「……89?」


 思わず声が出た。


 周囲も一斉に騒ぎ始める。


「89位!?」


「一気に100位以内じゃん!」


「鳴海先輩とあれだけ戦ったからか!」


「Eランクで89位ってどうなってんだよ!」


 俺は画面を見つめる。


 89位。


 昨日まで156位だった。


 一気に67人を追い抜いたことになる。


「……早すぎないか?」


 自分でもそう思う。


 けれど。


 モニターには続きが表示されていた。


『ランキング更新理由――高位者との戦闘評価』


『模擬戦における戦闘能力を再評価』


『魔力適性と実戦能力の乖離を確認』


 まただ。


 魔力適性と実戦能力。


 俺の評価は、ずっとそこが噛み合っていない。


 そのとき。


 教室の後ろから声がした。


「……やっぱりな」


 振り向く。


 鳴海だった。


「鳴海?」


「昨日の戦いで、学校側もようやく認めたんだろ」


 鳴海は腕を組む。


「お前は、少なくとも156位にいるような奴じゃない」


「じゃあ89位も低い?」


「当然だ」


 即答だった。


「……厳しいな」


「事実だ」


 鳴海はそう言ってから、少し笑う。


「俺も昨日、お前を評価し直した」


「本当に?」


「ああ」


 鳴海は俺を見る。


「お前は強い」


 短い言葉だった。


 でも。


 その一言には、昨日までとは違う重みがあった。


「ありがとう」


「ただし」


 鳴海の目が鋭くなる。


「俺を追い越したと思うなよ」


「まだ追いついてもないだろ」


「そういう意味じゃない」


 鳴海は轟鉄の柄に手を置く。


「ランキング42位は、そんな簡単な場所じゃない」


 そう言って、教室を出ていった。


 俺はその背中を見る。


「……次は勝つからな」


 小さく呟いた。


     ◇


 昼休み。


 俺は一人で食堂へ向かっていた。


 すると。


「黒瀬」


 知らない男子生徒に呼び止められた。


「何?」


「俺、ランキング68位」


「……そうなんだ」


「今日の放課後、空いてるか?」


「まさか」


「ああ」


 男子生徒は笑った。


「模擬戦しようぜ」


 その言葉に。


 周囲がざわつく。


「もう挑戦者が来たぞ」


「89位になったばっかりなのに」


「68位ってかなり上じゃん」


 俺は少し考えた。


 昨日の鳴海との戦いで分かった。


 もっと戦いたい。


 もっと自分の武器を試したい。


「いいよ」


 俺は答えた。


「放課後、訓練場で」


「決まりだな」


 男子生徒は笑って去っていく。


 俺も歩き出した。


 その直後。


 右手が少しだけ熱くなった。


「……?」


 青白い印。


 昨日から時々反応している。


 気になって手を見る。


 何もない。


 でも。


 ほんの一瞬。


 視界の端に文字が浮かんだ。


『対象情報を更新』


『戦闘経験――蓄積中』


 そして。


『E-CLASS――解析継続』


「……またE-CLASSか」


 俺は眉をひそめる。


 今まで何度も見てきた表示。


 だけど。


 その意味はまだ分からない。


     ◇


 放課後。


 訓練場。


 俺とランキング68位の男子生徒は向かい合っていた。


「俺の能力は『硬化』だ」


 男が腕を構える。


「接近戦なら負けない」


「分かった」


 開始の合図。


 男が突っ込んでくる。


 速い。


 でも。


 鳴海ほどじゃない。


「武装精製」


 剣を作る。


 男の拳を避ける。


 斬る。


 ――ガキン!


 剣が弾かれた。


「硬い……!」


「そう簡単には通らないぞ!」


 男が笑う。


 俺は距離を取った。


 なら。


 武器を変える。


「グロウソード」


 伸びる剣。


 床に突き刺す。


 一気に距離を詰める。


「なっ!」


 男の背後へ回る。


「ここだ!」


 剣を振る。


 男が振り返る。


 遅い。


 俺の剣が肩を捉えた。


「ぐっ!」


 男が膝をつく。


「……参った」


 開始から。


 一分も経っていない。


 訓練場が静まり返る。


 俺は剣を消した。


「ありがとうございました」


 周囲から声が上がる。


「また勝ったぞ……」


「68位を?」


「しかも一分以内……」


 俺は思った。


 昨日までとは違う。


 明らかに。


 戦い方が変わっている。


 武器を作る。


 使う。


 壊れる。


 また作る。


 それだけだったはずなのに。


 今は。


 相手を見て。


 武器を選べる。


 戦うほど。


 自分の中に何かが積み上がっている。


 その理由は分からない。


 ただ。


 強くなっている。


 その実感だけはあった。


     ◇


 その日の夜。


 学校のランキング管理室。


 誰もいない部屋で、一つの画面だけが動いていた。


『黒瀬悠真』


『魔力適性――E』


『現在ランキング――89』


 管理者が画面を見る。


「……また上がったか」


 その下には、通常のランキングには表示されない情報。


『E-CLASS』


『ERROR――NO DATA』


『ENEMY――ACTIVE』


 管理者は眉をひそめた。


「Error……か?」


 画面を閉じようとする。


 しかし。


 一瞬だけ。


 別の文字が表示された。


『ENEMY――ACTIVE』


『対象:黒瀬悠真』


 管理者の指が止まる。


「……これは」


 だが。


 次の瞬間には消えていた。


 残ったのは。


『ERROR――NO DATA』


 だけだった。


「……気のせいか」


 管理者はそう呟き、画面を閉じた。


     ◇


 俺は知らない。


 学校が俺をどう評価しているのか。


 自分のEランクが何を意味するのか。


 そして。


 俺の右手に刻まれた印が何なのか。


 ただ一つ分かっている。


 もっと強くなる。


 鳴海に勝つ。


 ランキングを上げる。


 そして。


 いつか――。


 このEランクという数字の意味を、自分自身で確かめる。


 そのためなら。


「明日も戦うか」


 俺はベッドに倒れ込んだ。


 スマートフォンを見る。


 ランキング画面。


 89位。


 つい数日前まで、256位だった。


 その数字を見て。


 少しだけ笑った。


 まだまだだ。


 100位を切っただけ。


 上には、88人いる。


 その中には。


 鳴海恒一もいる。


「……待ってろよ」


 俺はスマートフォンを伏せた。


 その直後。


 画面が一度だけ点灯する。


 俺が触れていないのに。


『次の対戦相手――ランキング31位』


 その文字が浮かんだ。


 そして。


 画面の奥で。


 あの三本線の紋章が、ゆっくりと明滅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。