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魔力適性Eの落ちこぼれ、俺だけが武器を複製できる  作者: 狙撃犬
第1章 最下位からの始まり

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第16話 魔力適性Bの優等生、俺だけが一本の剣を信じている

 訓練場の空気が変わった。


 俺と鳴海は、数メートルの距離を挟んで向かい合っている。


 俺の手には一本の剣。


 鳴海の手には、轟鉄。


 さっきまで何度も武器をぶつけ合った。


 俺の剣は、そのたびに砕けた。


 それでも作り直した。


 けれど。


 今度は違う。


 俺の魔力は、ほとんど残っていない。


 あと何本作れるか分からない。


 対して鳴海は、まだ轟鉄を握っている。


「……黒瀬」


 鳴海が口を開いた。


「これが最後だ」


「ああ」


 俺は剣を構える。


「俺も、そのつもりだ」


 開始の合図はない。


 先に動いた方が負ける。


 そんな気がした。


 だから。


 互いに動かなかった。


 数秒。


 十秒。


 時間だけが過ぎる。


 観客席から声は聞こえない。


 誰もが息を殺している。


 そして。


 鳴海が一歩踏み出した。


「――行くぞ!」


 轟鉄が振り下ろされる。


「っ!」


 俺は横へ飛ぶ。


 轟鉄が床を叩く。


 ――ドンッ!


 床が砕けた。


 その瞬間。


 俺は懐へ入る。


「もらった!」


 剣を振る。


 だが。


 鳴海は轟鉄を引き戻していた。


「なっ――」


 大剣とは思えない速さ。


 轟鉄の柄が俺の剣を弾く。


 体勢が崩れた。


 そこへ。


 鳴海の肩がぶつかる。


「ぐっ!」


 身体が吹き飛ぶ。


 床を転がる。


「黒瀬!」


 天音の声が聞こえた。


 俺はすぐに立ち上がる。


「……まだだ」


 口の中に鉄の味がする。


 それでも。


 まだ戦える。


 右手を前に出す。


「武装精製」


 剣が生まれる。


 鳴海が構える。


 俺は走った。


 剣を振る。


 鳴海は轟鉄で受ける。


 ――ガキン!


 剣が砕ける。


「もう一本!」


 新しい剣。


 振る。


 砕ける。


「もう一本!」


 また作る。


 砕ける。


 それでも。


 俺は止まらない。


「はあああっ!」


 剣を振り続ける。


 鳴海も一歩も引かない。


「来い、黒瀬!」


 轟鉄が唸る。


 俺の剣が砕ける。


 次の剣を作る。


 また砕ける。


 そのたびに、鳴海は轟鉄を振った。


 迷いがない。


 動きに無駄がない。


 ただ一つの剣を。


 何年も振り続けてきた人間の動きだった。


「……すごい」


 思わず声が漏れた。


 鳴海は聞こえたのか、ほんの少し笑った。


「そうだろ」


 轟鉄が振り下ろされる。


「俺は――」


 俺の剣が弾かれる。


「この剣しか、信じてこなかった!」


 轟鉄が迫る。


 俺は避ける。


 だが。


 次の一撃が来る。


 横薙ぎ。


 さらに逆袈裟。


 足払い。


 俺は必死に避ける。


「くっ……!」


 速い。


 重い。


 それだけじゃない。


 完全に読まれている。


 俺が武器を変えることまで計算されている。


「これが……鳴海の戦い方……」


 俺は距離を取った。


 息が荒い。


 もう、剣を作るだけの魔力も少ない。


 そのとき。


 鳴海が轟鉄を構え直した。


 その姿を見て。


 ふと。


 昨日のことを思い出した。


『俺は一度、才能に負けたんです』


 あの言葉。


 俺は今まで。


 鳴海がただ強い奴だと思っていた。


 ランキング42位。


 魔力適性B。


 重装。


 大剣。


 それだけだと思っていた。


 違った。


 こいつは。


 何年も。


 この一撃を積み重ねてきたんだ。


「……鳴海」


「なんだ」


「その剣、好きなのか?」


 鳴海が少し驚いた顔をした。


「……ああ」


 そして。


 初めて見るくらい、穏やかな顔で笑った。


「大好きだ」


 轟鉄を握り直す。


「俺の全部を知ってるからな」


 その言葉に。


 轟鉄が微かに光った。


「行くぞ、轟鉄」


 鳴海が踏み込む。


 速い。


 さっきまでよりも。


 さらに速い。


「――重装・全開!」


 魔力が爆発する。


 鳴海の身体が一気に加速した。


「……っ!」


 俺は剣を構える。


 逃げたら負ける。


 受けても負ける。


 なら。


「これしかない!」


 俺も踏み込む。


 右手に力を込める。


「武装精製!」


 最後の一本。


 今まで作ったどの剣よりも。


 強く。


 硬く。


 そして。


 長く。


 光が一本の剣へ集まっていく。


「行けええええっ!」


 鳴海も叫ぶ。


「轟鉄ぇぇぇぇ!」


 二人の剣がぶつかった。


 ――――ドォォォォン!!


 凄まじい衝撃が訓練場を揺らした。


 床に亀裂が走る。


 壁の魔力障壁が軋む。


 観客席から悲鳴が上がった。


「うわっ!」


「何だ今の!」


 煙が立ち込める。


 俺は歯を食いしばった。


「……まだ……!」


 剣を押し込む。


 鳴海も轟鉄を押し返す。


「負けるか……!」


 互いの武器が軋む。


 そして。


 俺の剣に亀裂が入った。


「……!」


 やっぱり。


 俺の武器では耐えられない。


 ――バキッ!


 剣が砕ける。


 俺の身体が前へ流れる。


 その瞬間。


 鳴海が轟鉄を止めた。


「……終わりだ」


「え?」


 轟鉄の刃が。


 俺の首元で止まっていた。


 あと数センチ。


 模擬戦なら。


 これで終わりだ。


 俺は息を吐く。


「……俺の負けか」


 鳴海はすぐに轟鉄を下ろした。


「いや」


「?」


「まだ分からない」


 鳴海は轟鉄を見る。


 刀身には。


 大きな亀裂が入っていた。


「轟鉄が、限界だった」


「……!」


 俺は目を見開いた。


 何年も使って。


 何度も修理して。


 それでも鳴海と一緒に戦い続けてきた大剣。


 その轟鉄が。


 初めて、大きく傷ついていた。


「……悪いな」


 鳴海は轟鉄に手を置いた。


「まだ俺と戦ってくれ」


 その瞬間。


 俺の右手が熱くなった。


「……また?」


 青白い印が光る。


 視界の端に文字が浮かぶ。


『武装情報――解析完了』


『対象:轟鉄』


『複製率――78%』


「……78?」


 俺は表示を見つめる。


 これまで見たことのない数字だった。


 だが。


 その下に。


 もう一つの表示が現れた。


『特殊条件を確認』


『所有者との結合情報を検出』


「……結合情報?」


 意味が分からない。


 表示はすぐに消えた。


 鳴海は気づいていない。


「黒瀬」


「ん?」


「今日は俺の勝ちだ」


「ああ」


 俺は素直に頷いた。


「認める」


 鳴海が少し驚いた顔をする。


「……素直だな」


「だって強かったから」


 俺は笑った。


「次は勝つ」


 鳴海も笑う。


「望むところだ」


 観客席から歓声が上がった。


「鳴海先輩!」


「すげえ!」


「黒瀬もヤバかったぞ!」


 その声を聞きながら。


 俺は轟鉄を見る。


 傷だらけの大剣。


 だけど。


 不思議だった。


 なぜか。


 父さんの写真に写っていた炎の剣と。


 この轟鉄が。


 頭の中で重なって見える。


 三本線の紋章。


 青白い光。


 そして。


『特殊条件を確認』


 あの文字。


「……まだ何かある」


 俺は小さく呟いた。


 鳴海は聞いていない。


 ただ。


 轟鉄を大切そうに抱えていた。


 このときの俺は、まだ知らなかった。


 轟鉄に残された情報が。


 父さんの過去へ繋がる手がかりになることを。


 そして。


 鳴海との戦いが終わったことで。


 俺のランキングが、大きく動くことを。

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