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魔力適性Eの落ちこぼれ、俺だけが武器を複製できる  作者: 狙撃犬
第1章 最下位からの始まり

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第12話 Eランクの実力

 翌日。


 学校は、昨日までの騒ぎが嘘だったかのように通常授業へ戻っていた。


 校内ダンジョンは封鎖されたままだが、それ以外の授業は予定通り行われるらしい。


 俺としては、あの放送のことが頭から離れなかった。


『適合者を確認』


『第二適合者』


 そして、父さんの名前。


 気になることはいくらでもある。


 それでも――今は目の前の授業に集中するしかない。


「今日は実戦形式の模擬戦を行う」


 教官がそう告げた瞬間、教室が少しざわついた。


「今回の模擬戦では、武器の使用を許可する。ただし、殺傷能力の高い武器は禁止だ」


 生徒たちが次々と訓練場へ移動していく。


 俺もその後に続いた。


「黒瀬」


 途中で鳴海に声をかけられた。


「昨日のこと、考えてたか?」


「まあな」


「俺もだ」


 鳴海は少しだけ笑う。


「だから今日は、お前の戦い方をちゃんと見せてもらう」


「……別に大したものじゃないぞ」


「それを決めるのは俺じゃない。実際に戦ったやつだ」


 そう言って、鳴海は先に訓練場へ向かった。


 俺も続く。


 そして。


 訓練場の中央に立ったところで、教官が対戦表を読み上げた。


「第一試合。黒瀬悠真対――高橋蓮斗」


 周囲から、少しだけ笑い声が聞こえた。


「高橋か」


「黒瀬、運悪いな」


「いや、逆じゃない?」


「確かに。相手が黒瀬なら楽勝だろ」


 高橋蓮斗。


 校内ランキングは百位前後。


 魔力適性はB。


 身体強化を得意とする生徒で、これまでの俺ならまともに戦っても勝ち目はなかった。


 高橋が訓練場へ入ってくる。


「悪いな、黒瀬」


「何が?」


「本気でやるから」


「……こっちもそのつもりだ」


 開始位置につく。


 教官が手を上げた。


「――開始!」


 直後。


 高橋の姿が消えた。


「速っ……!」


 誰かが声を上げる。


 身体強化。


 以前の俺なら、目で追うことすらできなかった速度。


 だが。


 今は違う。


 足音。


 床を踏む位置。


 魔力の流れ。


 全部見える。


「そこだ」


 右。


 高橋が拳を振り抜く。


 俺は一歩だけ後ろへ下がった。


 拳が鼻先をかすめる。


「な――」


 高橋の顔が歪む。


「避けた?」


 俺は答えない。


 右手を前へ出す。


「――武装精製」


 光が集まる。


 一本の剣が現れた。


「またそれか!」


 高橋が突っ込んでくる。


 拳が剣にぶつかった。


 ガキィン!


 刀身が大きく揺れる。


 次の瞬間。


 剣に亀裂が入った。


「……!」


 そのまま砕ける。


 周囲から笑い声が漏れた。


「ほら、やっぱりあの武器すぐ壊れるじゃん!」


「Eランクじゃそんなもんだろ!」


 俺は砕けた剣を見る。


 そして。


 笑った。


「……なるほど」


 第二層で戦ったときに、気づいたことがある。


 俺の武器は弱い。


 だからこそ。


 使い方を変えればいい。


「もう一本」


 右手に魔力を集める。


 再び剣が生まれた。


「なっ……」


 高橋が止まる。


「また作った?」


「そうだけど」


「そんなに連続で作れるのかよ!」


「やってみたら、できた」


 高橋が舌打ちする。


「だったら、全部壊してやる!」


 再び突っ込んでくる。


 俺は剣を構えた。


 真正面から受ける。


 一撃。


 剣が壊れる。


「また!」


 すぐに二本目。


 受ける。


 壊れる。


 三本目。


 壊れる。


「くそっ!」


 高橋が苛立ち始める。


 俺は気づいていた。


 高橋の動きが、少しずつ単純になっている。


 焦っている。


 最初は速かった。


 けれど今は、ただ俺の武器を壊すことだけを考えている。


 なら。


「次はこれだ」


 俺は剣を消す。


「武装精製――ブーストソード」


 剣身に淡い光が走った。


「……何だ、それ」


「使ってみる」


 踏み込む。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 身体が軽い。


 今まで届かなかった距離が、一瞬で消える。


「速――」


 高橋が腕を上げる。


 遅い。


 俺は拳をかわし、その懐へ入った。


「終わりだ」


 剣の腹で、高橋の胸当てを叩く。


 ドンッ!


 高橋の身体が数メートル吹き飛んだ。


 床を転がり、止まる。


 訓練場が静まり返った。


「……勝者」


 教官が一瞬言葉を失ってから、告げる。


「黒瀬悠真!」


 一拍遅れて。


 訓練場がざわめいた。


「今の見た?」


「高橋を一撃?」


「いや、あれ身体強化使ってたよな?」


「黒瀬が?」


 俺は息を整えながら、右手を見る。


 ブーストソードはまだ消えていない。


 以前なら、ここまで身体能力を引き上げることすらできなかった。


 第二層で死にかけた。


 あの黒鎧と戦った。


 あのときから。


 俺は少しずつ変わっている。


「黒瀬くん」


 天音が駆け寄ってきた。


「すごかった!」


「そうか?」


「うん。前とは全然違う」


 天音が嬉しそうに笑う。


「なんか……戦い方が変わったね」


「俺もそう思う」


 そのとき。


「次の試合、準備しろ」


 教官の声が響いた。


「黒瀬、第二試合もお前だ」


「え?」


「対戦相手は――」


 教官が対戦表を見る。


「佐伯拓真」


 周囲から再びざわめきが起きた。


「佐伯って、ランキング八十位くらいだろ?」


「黒瀬、連戦かよ」


「さすがに次は無理だろ」


 俺は訓練場へ戻る。


 向かい側から、一人の男子生徒が歩いてきた。


「さっきの戦い、見てた」


「そう」


「運がよかったな」


「……そうかな」


「高橋は接近戦しかできない。俺とは相性が違う」


 佐伯が手を掲げる。


 青白い魔力が集まった。


「俺は魔法型だ」


 炎の球が浮かぶ。


 周囲から歓声が上がる。


「炎属性!」


「佐伯の得意技だ!」


 俺はその炎を見る。


 強い。


 高橋とはまるで違う。


 遠距離から攻撃してくるなら、さっきの戦い方は通用しない。


 でも。


 俺には。


 もう一つある。


「――武装精製」


 右手に剣が現れる。


 刀身を炎が包み込んだ。


「……え?」


 佐伯の顔が固まる。


 観客席も静かになる。


「それ……炎?」


「そう」


 俺は剣を構えた。


「俺も使える」


 教官が手を上げる。


「――開始!」


 佐伯が炎を放つ。


 火球が一直線に飛んでくる。


 俺は避けない。


 フレアブレイドを振る。


 炎と炎がぶつかる。


 爆発。


 視界が白く染まる。


「黒瀬!」


 天音の声が聞こえた。


 煙の向こう。


 俺は立っていた。


「……まだ終わってない」


 フレアブレイドの炎が、さらに強くなる。


 俺は剣を握り直した。


「次は、こっちから行く」


 一歩。


 踏み込む。


 佐伯が慌てて次の魔法を構える。


 遅い。


 俺は炎をまとった剣を振り抜いた。


 魔法陣ごと弾き飛ばす。


 佐伯の身体が後ろへ飛ぶ。


 そして。


 壁際で止まった。


 静寂。


 教官が確認する。


「……戦闘続行は?」


 佐伯は立ち上がろうとした。


 しかし、足に力が入らない。


「……無理です」


「勝者――黒瀬悠真」


 今度は、誰も笑わなかった。


 さっきまで俺を見ていた目が変わっている。


 驚き。


 戸惑い。


 そして。


 少しの恐怖。


 俺はそんな視線を受けながら、訓練場を出た。


「黒瀬」


 鳴海が待っていた。


「二試合連続で勝つとはな」


「ありがとう」


「だが」


 鳴海は笑った。


「まだ俺とは戦ってない」


「……そうだな」


 鳴海が拳を軽く握る。


「楽しみにしてる」


 その言葉に、俺も笑った。


 以前なら。


 絶対に勝てないと思っていた。


 でも今は。


 少しだけ。


 届くかもしれないと思える。


     ◇


 その日の夕方。


 学校のランキングが更新された。


 掲示板の前に生徒たちが集まっている。


「ランキング出たぞ!」


「誰が上がった?」


「えーっと……」


 一人の生徒が画面をスクロールする。


 そして。


「黒瀬……?」


 名前が見つかった。


 俺も後ろから画面を見る。


 そこには。


 ――黒瀬悠真。


 総合順位。


 256位 → 198位。


「……198位」


 たった一日。


 それだけで五十人以上を抜いた。


 まだ上には百九十七人いる。


 それでも。


 俺は初めて、自分の順位を見て嬉しいと思った。


 最弱。


 落ちこぼれ。


 Eランク。


 そんな言葉ばかり聞いてきた。


 だけど。


 少なくとも今日。


 俺は証明した。


 Eランクでも。


 戦える。


 いや――。


「……もっと上に行ける」


 そう呟いた瞬間。


 ランキング画面が一瞬だけ暗くなった。


 そして誰にも見られることなく。


 小さな文字が表示される。


 ――E-CLASS。


 ――IDENTIFICATION:ACTIVE。


 その下に。


 誰にも読めないほど一瞬だけ表示された文字。


 ENEMY。


 次の瞬間。


 画面は何事もなかったかのように元へ戻った。

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