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思い込みは祈りにも似て  作者: 黒楓
6/6

第6話 その終わりとは

 あの二日間は……仕事+プライベートではイケイケだったから……

 我ながら女って凄いって思ったよ。

 思いながらも彼の顔を見ると

 もう触れてた。

 うん、あちこち。


 日曜の午後はオーダーメイドのランジェリーを取りに行く予定だったから朝から三回シて、ひと休みしてから彼と出掛けた。


 ランジェリーのお店では「オレ、入って大丈夫?」ってやっぱりギョドってたけど、予めデパートで練習させて置いたから昨日よりはマシだった。


 で、私がここのメーカーのランジェリーの良さを力説したら「確かに()()()()()()手触りもデザインも違うね」って感心してた。


 うん、当然! 彼にも見せて触らせたよ。

 つうか、ホテル戻ってから私、そのランジェリーに着替えたから

「脱がせて!」ってせがんで彼にプレッシャーを掛けてやった。


 話は前後したけど、有名な中華料理店で食事した後、腹ごなしで大きな庭園を散策した。

 都心にはこういったところがいくつもあるのがいいよね。

 加奈、初デートは庭園にしよ!

 さて、滞在しているホテルへ戻ってその日最後の逢瀬を交わした後、私は彼に尋ねた。


「今、持ってるスマホは会社の? それとも個人?」


「会社、学生時代のスマホは解約した」


「アナタは私と……これからもお付き合いしてくれる?」


「もちろん!」


「だったら一つ条件がある。明日が月曜で本当に悪いんだけど、今すぐスマホを買いに行って! 私とのお付き合いに会社のスマホを使うのは良くない」


「大丈夫だよ! オレの上司だってスマホは会社支給のだけだよ」


 私は大きく頭を振った。

「ご家族や友人と……今の私とでは立場が違い過ぎる。これだけは念頭に置かなければいけない。お金は私が出すから!」と彼に無理矢理、財布の中の10万円を押し付けた。


 彼は大きくため息をついたけど……どこに隠していたのだろう? かなり大きめの百貨店の包みを私に手渡した。


「素敵な週末を過ごさせてくれたせめてものお礼」


「開けていい?」


「もちろん」


 白い化粧箱の蓋を取ると素敵な絵の入った額が表れた。

 リソグラフだ!

 鉛筆で『7/36』と書かれてある。


 その時、やっぱり素敵な人だと私は思った。

 だからこのリソグラフは今でもリビングに飾ってるよ。

 でも……ここが絶頂だったんだよね。


 この私の言葉に……加奈は涙を零して私の胸にギューッと顔を埋める。


「大丈夫だよ」

 私は加奈の頭を撫でて別れのわけを教えてあげる。


「待ち合わせに遅れて来た彼から微かに女のにおいがしたんだ。その時は胸が焦げそうになったけど、まだ我慢できた。けれどデート中に信じられない事をされた」


 加奈が顔を上げる。

「何をされたんですか?」


「喫茶店で私を目の前にして居眠りしやがった」


「ええっ??!」


「私は彼の頭を手の平で叩いて言ってやったよ。

『私は暇じゃないし安くは無い』ってね

 その場で伝票を掴んでバイバイ

 スマホは着拒、お店は出禁」


「そうだったんですか……」

 加奈のついたため息が胸にくすぐったい。


「でもね、今から思うと私の方が悪い」


「そんな事!」と

 言い掛ける加奈の口をキスで塞ぐ。


「あるんだよ。あの頃の私はやっぱり余裕が無くて……自分の事しか考えてなかったんだ。彼に付いていた女のにおいだって見ず知らずの他人から付けられたものだったのかもしれない。スーツ姿に剃り残しのある疲れた顔のあの時の彼は……女との朝帰りだったとは限らない。においは満員電車での移り香だったかもしれないし徹夜の仕事明けだったのかもしれない。そういう事を確かめもせずブチ切れた私は、最初彼に一方的に恋に落ちたのと同じに身勝手で……そんな私の『自慰行為』に振り回された彼こそがいい迷惑だったのかもしれないな」


 私は加奈の可愛い胸に手を置いた。

 トクトク脈打つ鼓動と温かさが私の手の平を通して私の心の中の中まで染み入って行く。

 これは思い込みなんかじゃない!

 自慰なんかじゃない!


「加奈! 一緒に歩いて行こうか?」


 こう尋ねると加奈は頷き

 私に温かく優しいキスをくれた。





                     おしまい


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― 新着の感想 ―
 私はそれまでの男だったのかなあ、って思いましたよ。  もしどうしても手に入れたい男なら、匂いの原因を追及して、もしそれが別の女が原因だったら、その女の処に直談判しに行ってたと思うんですが、これってや…
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