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思い込みは祈りにも似て  作者: 黒楓
4/6

第4話 何の変哲もないのだけど……

 若い男でね。

 間違いなく私より年下。

 ただ、()()()()()()()()()感が無かったから新入社員に毛が生えたくらいのコなんだろう。

 顔や手の血色からして『飲まされて来た』感じだ。

 金曜は特にこう言った輩が多い。


 酒に酔ったオトコって色々厄介だからなあ~

 時刻は9時過ぎ。金曜は混んでるから、入れ替わり立ち替わりの()利用だし指名なしでも30分は待たされたはず。

 そこから逆算すると一次会で解放されたんだろう……

 となると()()()()()()来たな。

 これはカモネギかも!


 ちょっと匂わせぶりな雰囲気で押して、コイツが乗って来たら延長に持ち込もう。

 今日はずっと()()()だったから少し落ち着きたい。11時まで後2時間もあるしね。


 私は『0円スマイル』をフル稼働させて彼の上着の脱がせ左腕に掛ける。

 彼がベルトをカシャカシャしだしたので脱ぐのは任せて上着だけをハンガーに掛ける。

 大丈夫、ハンガーはもう1本あるのだ。


 脱いだ下着を畳んであげて彼をシャワーブースへ導き、丁寧に洗ってあげる。

 さっきのお客様とはまるで違う肌のハリと筋肉の硬さを手の平に感じる。

 唯一、さっきのお客様が勝っていたのはモノの硬さだったけど、それも洗ってあげるとみるみる反り上がる。


「わあ! 凄いですね! タオルハンガーになりそう!」なんてベタなジョークに少しはにかんだのが可愛らしくて私は悪戯心をくすぐられる。


「なんか、キスしたくなっちゃった」


「えっ?! キスしてもいいんですか?」


「うん、イソジンでうがいしてくれたらアナタには許してあげる。本番はダメだけどね」


 本当はキスはサービス内容に入ってるんだけど、こういう若者は夢を見させてあげるに限る。

 それにこの子は爪が綺麗だ。


 私がシャワーを軽く浴びてブースから出ると彼がバスタオルを手に待っててくれていた。

 そのぎこちなさが嬉しくなる。ポーズでやってるんじゃないと分かるから。

 だから私はお願いした。


「タオルありがとう! アナタが拭いてくれたらもっと嬉しいかな」 


 畳んであったバスタオルを広げた時、下に向かって落ちて行くタオルの裾が彼の股間に一瞬引っ掛かったのは笑えたけど、タオルを挟んで彼の手の震えを肌で感じて私もビクククッ! と震えた。

 総毛立つのは官能の震え。

 体の芯から生まれ出るのは情念のマグマ。

 私はそれに突き動かされて想定とはまったく違う動きをしていた。

 ひと休みするどころか全速力で突っ走る感じ!

 当然彼は瞬く間に暴発し項垂れる。

 ふと見ると()()()私の指に零れていた。

 私はそれを舐め取り、彼の真ん中に位置する源泉を啜り尽くす。

 嫌では無かった。

 そう、振り返って考えると……あの時の感情に一番近いのが「美味しい」という単語。


「ああ、もっと!」と私は欲している。

 そして涸れた源泉を立ち上がらせようとする。

 けれどタイムアップへのカウントダウンはとっくに始まっていたから……私はバッグから財布を出し、必要な枚数をそこから抜き取り内線電話で申告する。

「延長、入りました」

 そしてバッグの奥底に眠っていた『0.01㎜』のパッケージを破り彼に示した。


「これ着けて! そして……しよ!」



 ◇◇◇◇◇◇


 シャワーブースで何度もキスをしながら彼をキレイにしてあげた。


 でも、このまま帰したくなかった。

 時計を見た

 あと一人は客が取れる時間だ。

 私は店の近くにある喫茶店の名前を彼に告げた。

 そこで11時半まで待っていてくれたら二人で飲みに行こう! 一晩中遊ぼうと。


 彼を送り出してほどなく、最後のお客様を迎えた。

 私は自分の中で賭けをしていた。

 最後のお客様のが、いつもと同じに“美味しくなかった”ら喫茶店へ行こうと。


 これはクリアできた。

 しかし時刻はもう11時45分!

 シンデレラだって間に合わない!


 とにかくマッハで清め整えて、駆け足で喫茶店へ向かった。


 もし彼が待っていてくれたら

 その時は!


 喫茶店のドアを慌しく開けると

 もう深夜になろうとしているのにそこそこの数の客が居る。


 目を凝らして彼を探す。


 居た!

 私に気が付いて手を振ってくれている。

 熱くなった胸が涙を押し上げ

 彼の姿がぼやけた。


 席に着いた私は真っ先に彼の予定を聞いた。

 思った通り彼の土日はガラ空きだったので一緒に居ようと誘う。

 明日の出勤を午後5時にしておいて良かった!


「明日の夜は私、仕事なんだけどいい?」


「そっか、じゃあ明日の夜は帰ってソッコー寝ようかな」


「えー!! それじゃ時間が勿体ないよぉ~」


「日曜の午前中に待ち合わせれば?」


 それじゃ日曜は半日も一緒に居られない。

 だって彼はビジネスマンの卵で今が一番大切な時。

 日曜の夜は次の一週間の為にキチンと開けてあげなければならない。

 そうで無くても彼には考える時間や勉強する時間も必要なのだ。


 だから彼に提案した。


「明日はホテルで1泊しよ! 二人でホテルに入って私はそこから出勤するから」


 彼のOKを取り付けた私は……前の店の時の()()が私との()()()の度に使っていたシティホテルをネット予約した。

 中の上クラスのホテルだけど、ベッドの使い心地が良くアメニティも上質で充実している。

 そこに比べれば今夜の宿は片目どころか両目を瞑らなきゃならないラブホだったけど……三回した。


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― 新着の感想 ―
 わあ、ナミさん慣れてるんですね。  男心が手のひらで踊らされてる感じ。  目的は何なんだろう❔
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