第九話
屋台を一通りまわり、メインイベントである花火も終わった。
始めて会った千歳さんと、何とか打ち解けようと思い、こちらから何度も話しかけていた。
「・・・はい」
「・・・うん」
結果は思わしくなかった。
ぼくの話がつまらないのかもしれない。
親友である喜多見とは普通に話せているし、ぼくと同じ性を持つ和泉には慕って、黙り込むことはなく、ぎこちないながらも話していた。
嫌われる要素が思い浮かばなかったけど、人が人を嫌いになる理由なんてそんなものかもしれない。
何となく嫌いになり、何となく好きになる。
そうして人類は今までやってきて、これからもやっていく。
「祭りも終わりかあ。さっきまであんなに楽しかったのに、人が帰っていくよ。いやー残念残念。・・・うん、またこうして四人で祭りに行こうね」
普段のテンションを落として喜多見が言う。
「また来年も来ればいいだろ。なあ、ずっきー」
「うん」
珍しく和泉が励ましている。
前に、ぼくが居ないと喜多見とは喋ることがないと言っていたけど、この調子なら普段も世間話くらいはしていそうだ。
認識の違いかもしれない。
「あたしもまた来年も行きたい」
自己主張の少なかった千歳さんも賛同している。
来年の今日の祭りを今から予定に組み込んでいても問題はなさそうだ。
楽しいことはいつまでも続けばいい。
そうして、ぼく達はお開きとなった。
ぼくも真っ直ぐ家に帰る予定でいた。
―――残念ながら、ぼくの祭りは終わっていない。
「あっ、あっ、あっ、やっと来たね。待ちくたびれちゃったよー」
あの場所から一歩も動いてない魔術師がいた。
正確には魔術師でも何でもない。
フードを被り、手には木彫の杖を持った少女。
名は、篠崎しずご。
一度目の遭遇の時は、魔術師だと思った。
月の光を浴びた姿。
儚く幻想的な情景を醸し出していた。
もしかしたら、あの晩は夢だったのかもしれない。
そう思っていた。
そして、本日、運命の赤い糸で結ばれたぼく等は再び出会った。
嘘であって欲しいけど、現実とは予想を常に裏切る。
彼女は、言ってきた。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ。今日のお祭り、一緒にまわらない?まわらない?キミと話したいんだよぉ」
ぼくはすぐに、駄目だ、とやんわりと告げた。
「え、え、え、いいーじゃん。キミにしか興味ない。他の人間にはどうでもいい。ボクちゃんに選ばれた人間なんだから、気にしないでぶっちしちゃいなよ☆」
引き下がらない彼女にぼくは妥協案として、
「祭りの後ならいいよ」
と、返事をして今に至る。
その提案にまさか乗ってくるとは予想だにしなかった。
そして、数時間経っても景色が変わることなく続いているとは。
バカ正直に動いているぼくも昔のぼくにはそ想像できなかった。
「ずっとここに居たの?」
率直な感想を伝える。
彼女は少しバカにしたように笑って、
「そんなわけないよ。ボクちゃん、人間だよ?ずっと、ずっと、ずっと同じ場所に居られるわけないよー」
少しピンとのズレた返しだったけど、気にせずに続けた。
「それでぼくに何のようかな」
「えへへ☆ボクちゃんはずっと探していたの!!ずっと、ずっと、ずっと、探していたけど、見つからなかった。もー骨の折れる作業だったよ。ボクちゃん偉い、偉い、偉い。いい子いい子して~☆」
頭を指差してきたので、ぼくは軽くフードに触れた。
無性に喜んでいた。
喜多見も喜んでいたし、女の子は頭を触られるのに喜びを感じるようだ。
今度、和泉で試してみよう。
「えへへ。もっと、もっと、もっとしてね♪それでキミは、アレなんだよね」
「アレ?」
「そう――――」
表情がフードに隠れて見えない彼女はぶつぶつ呟いた。
ぼくはその言葉に反応し、意識を失った―――




