第六話
「ずっきー」
「やあ、喜多見。どうしたの」
ホームルームを終えた放課後。
知的な創作をするわけもなく、青春の汗をかくことなく、家に帰ろうとしていた。
ぼくの所属している帰宅部は、かなり大勢の人間が所属しているが一斉に揃うことはない。
本日、和泉は用事があるため、先に帰っていた。
つまり、急いで帰り支度をする必要もなく、のんびりと時間を堪能していた。
世間的には、ぼーっとしていたというらしい。
「ずっきー。今度の休み空いてるかな?」
「え」
昨日の出来事がよみがえる。
フラッシュバック。
決して走馬燈ではない。
”あいつ、ずっきーに気があるぞ”
変に意識をしているわけじゃないけれど。
それに休みを聞いているだけで、誘ってきたわけじゃ
「お祭りあるよね。一緒に行かない」
「え」
失語症になってしまった。
話せないぼくの存在意義が薄れることはない。
村人Aがひたすら「アッカーマ村です」と喋ることにだって価値はある。
ぼくは村人に話しかけずに先に進むタイプだけど。
「休日はやることがあるんだ」
「ずっきー。女の子が誘っているんだよ。青春だよ!!」
よく分からない思考回路だった。
青春とは女の子とお祭りに行くことなのか。
確かに女の子は春を売ってると耳にするけど。
「午前中は体調を整えるための睡眠。午後は学生の本分である勉強。戦いは何も生まないということを書物から学ぶんだ」
「・・・つまり、昼過ぎまで寝てて、少年漫画を読んで終えるってこと?」
「言い方を換えればそうだね。活字離れは深刻化しているみたいだし」
「えー!!ずっきー。私なんか午前中は部活なんだよー!朝から早起きして汗水垂らして太陽と格闘しているんだよー!!!!」
エクスクラメーション・マークが多い発言だった。
太陽と戦うとは80年代にはやった戦隊ヒーローみたいだ。
分かる人いるかな。
「戦士に休息は必要だよ。がむしゃらに戦えばいいというわけじゃない」
「先生に言って欲しいよ。顧問が変わってから厳しくなってやんなっちゃうよ」
「お疲れさま。愚痴ならいくらでも付き合うから場所を変えない?ハックのコーヒーならおごるよ」
「ホントに!?・・・って話をずらさないの!!それに私のお店で驕ってもらっても嬉しくないよ!!!」
ポカン、とたたかれた。
この痛みは忘れることにしよう。
明日には覚えていない自信に命を懸けても良い。
「喜多見と二人で行くってことかな。いいよ、デートしよう」
「で、でーと!?違う、違う。私の友だちと一緒にだよ」
「?それなら友だち同士、仲良く楽しんできた方がいいんじゃない。ぼく一人、余計だと思うけど」
「ずっきーも友だちを連れてきて。和泉くんなんていいんじゃない」
「ダブルーデートか。喜多見をやり手だね」
「あーもう。ずっきー!行くの?行かないの?」
問い詰められたぼくは断る理由もなかったので、「行くよ」と返した。
喜多見から誘われるのは嬉しいけど、誘うならもっと早めが良かった。
お祭りは明日に迫っていた。
もちろん、先月に聞かされたとしても、準備をすることなくお祭りに参加すると思うけど。




