第五話
「じゃあ、行こうか」
「おう」
最終日の試験を終え、ぼくらは遊びに出掛けていた。
試験の結果は、気にしないことにした。
後ろを向いても何も落ちてない。
よく物忘れをする和泉の言葉だった。
「お昼どうしよう?」
「学食ってのも味気ねぇーな。まず、金がねぇーし、うどんも食い飽きた」
「学食はリースナブルだし、いいんじゃない。たまには驕るよ」
「暑い」
「・・・さいですか」
そんなわけで街に繰り広げることになりました、まる。
「昨日は大丈夫だったか?」
「ん、なにが?」
「なにがじゃねぇ。聞いてないのか?噂だよ、う・わ・さ」
「噂?」
何でも夜な夜な学校に、不幸の病で死んだ生徒の霊が出るらしいとのこと。
複数の目撃が確認されているが、正体分からず。
この手の証言を聞くと、本当に確認しているか疑いたくなる。
「幽霊は居なかったよ」
「あーデマか、デマ。女って噂好きだもんな。話半分に聞いとけってことだな」
「だね」
ふと、和泉を観察するとかばんを手にしていなかった。
身軽でいいね。
ぼくも見習いたくない。
「ハック行く?あそこなら100円メニューもあるし、ポテトなら摘んでいいよ」
「おう、ありがてぇ。じゃ、ハックに決まりだな!」
目的地が決まりました。
ハック。
全国チェーン展開されていないファーストフード店。
味は絶賛することはできないけどお求めやすいお値段で、空腹を満たしたい学生には人気の定番スポット。
よくぼく達も利用している。
「混んでるな」
「だね」
昼時というのもあって、店は長蛇の列となっていた。
大半のお客は、制服を着ている。
知り合いもチラホラと見受けられる。
「和泉はいつものでいい?混んでようだし席を取っておいてくれる?」
「おう!待ってる」
列に並ぶことなく、二階へとあがっていった。
和泉の頼むのは、100円メニューの1つであるハックバーガー。
食事にお金を回さない和泉は、ハックに来ると、必ずこれを頼む。
ぼくの見たところ、数が増えるか減るだけでメニューが変化したことはない。
ぼくは、メニューに復活したチキンハックのセットにしよう。
「いらっしゃいませー。ハックへようこそ!お持ち帰りでですか?店内でお召し上がりに・・・ってずっきーじゃないの!!」
「やあ、喜多見。ここで働いているだ」
天真爛漫に接客を働いていたのはクラスメイトである喜多見だった。
「働いているよー!学生生活は一に部活に、二にバイト。三、四がなくて五にバイトだぁーーーーーー!!」
「偉い偉い」
よしよしと頭を触る。
「って、やめーーーーい!ストップ、ストップーーー!!ずっきーは恥ずかしいことを平気でやらないの!!」
「喜多見に恥ずかしい部分なんてないよ。どこでも触れる」
「だぁーーー!!調子が狂うなぁー。それで、ずっきー。持ち帰る?食べていく?」
頬が心持ち赤くなっている気がしないでもない。
夏風邪かな。
「食べていくよ。和泉を待たせているんだ」
「おー和泉くんも一緒か。では、ご注文をどうぞ」
「スマイルを3つ」
「スマイル3つですね。はい」
にっこりと笑ってくれる喜多見はノリがいい。
友達としては最高だと思う。
「今日も可愛いよ、喜多見」
「・・・・コホン。それで、ご注文は?」
「えーと・・・チキンハックセットを1つ。飲みものはコーラで。それとハックバーガーを1つ」
「あいよー!ポテトは少しサービスしとくね」
声を潜めて囁く。
「ありがとう」
「ずっきーだからね」
持つべきものは友達だ。
「よしよし」
「だーかーらー!止めてよ。・・・もう」
喜多見とスキンシップをした。
これからは喜多見を指名したい。
スマイルを毎日見たいんだ。
なんて思わずに二階へとあがる。
「あー・・・・・・・・・」
屍を見つけた。
「おまたせ」
「おー・・・・・・・・・」
和泉が物欲しそうにこちらを見ている。
餌付けしますか?
>YES
ポテトを口に咥えさせた。
「おっせーーー」
和泉が仲間になった。
頼んだバーガーを一口で平らげ、ぼくのポテトに手を出していた。
もっと食べ物の味を楽しもうよ。
「喜多見が働いていたんだ。少し喋ってた」
「ほー。ずっきー、仲いいな」
ニヤニヤと話してくる和泉。
心情は理解できないこともない。
「喜多見と?」
「おう」
「明るい性格しているし、和泉とも喋るでしょ。ぼくだけがってわけじゃないよ」
「俺も喋るが、俺はずっきーが居ないと喜多見と喋ることはないぞ」
「そうなの?」
「あいつ、ずっきーに気があるぞ」
ポテトを平らげて、ぼくに質問する。
少しは残して欲しかったかな。
「そうなんだ」
「そうだ、そうだ。付き合ってみろよ。なかなかお似合いだ」
空腹も満たされ、話題がぼくのからかいへとなったみたいだ。
「すぐに恋愛に持っていくのは好きじゃないよ。そんな簡単じゃない」
「ずっきーはどうなんだ?喜多見のことをどう思ってやがる」
・・・話を聞いてないみたい。
話は聞かないけど、余計なことに口を挟む。
ある年代層への批判をする勇気は、ぼくにはない。
「そうだね。嫌いじゃないよ」
「嫌いじゃないけど、好きでもないって?ずっきー。腹を決めろ。男は好きか嫌いかの二択しかねぇ」
「そうだね」
普通という選択肢が残されていない。
クラスメイトって大半が普通だと思うんだけどな。
少し悩む。
よく話すけど、実際のところ、どう思っているのかな。
考えたこともなかった。
「・・・・・・・好きかな。嫌う理由もないし」
「よし。じゃあ、すぐにアタックだ。明日、決めに行け!善は急げだ!!」
「あはは」
和泉は面白い。
面白い人間は連んでいて飽きが来ない。




