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Soul VS  作者: 燎 空綺羅
プロローグ
8/14

第6話 紅兜 2

 良夢は、火傷は堪えても、今は為す術なく。

 倒れた。

「良夢ちゃん!」

「大丈夫です!ただ、起き上がっていては、斬り口から身体や首がもげますッ!!紫さんが来るまで、わたしの身体は使えないッ!!だから、裏技を考えましたッ!!」

 サムチャイは炎武郎さんを安全な位置に降ろし、良夢に駆けつけた。

「裏技ってなんなん?ワイが紫さん呼ぶ?」

 良夢は突拍子も無く真紅の日本刀をサムチャイに差し出した。

「怨霊には怨霊!アスカニさんの身体を貸してください!わたしは日本刀に宿った魂なんで、紅兜と似たようなもんです!わたしがアスカニさんを乗っ取りつつ半分こ!剣はわたしが、アスカニさんは電撃で!!」

 サムチャイは驚いた。

「そんなんやれるん?良夢ちゃん自体が怪異みたいやん。貸すのはかまへんけど……。」

「やってみるしかないッ!!わたしのミスリルを握ってください!ぶっつけ本番で、行きますよーッ!!」

 サムチャイが相楽守蘇芳之定を掴むと、ミスリルに良夢がいるのか、良夢の身体が力無く倒れた。

(聞こえますか!?紅兜来ます!!)

「へっ……」

 サムチャイは勝手に身体が動いて、相楽守蘇芳之定で紅兜の斬撃を打ち払い、後ろに飛びすさった。

(今です!放電!!)

「え、あ、うん!」

 サムチャイは静電気を紅兜に飛ばした。

「火……火ィッ!!焼くな!!儂の……ああああああああぁぁぁ!!」

 紅兜が悶え出し、良夢が喜んだ。

(効いてますよ!!)

「変な感じやなぁ……良夢ちゃん、御手洗のこと考えとるの、どうにかならへん?なんか、覗き魔しとるみたいやし……」

(ハッハッハ!それは無理ですね!わたしもバトル前から猛烈にトイレを我慢してたんでッ!!)

「そうだったん?倒れた方の良夢ちゃん、漏らしとるんちゃうかな……。」

 紅兜は荒ぶり、剣戟を繰り出した。

「よもや!よもや!!貴様は戦人(いくさびと)かッ!!怨敵、怨敵鏖殺!!」

「わ、わ」

 サムチャイは良夢が繰り出す相楽守蘇芳之定で剣戟に応じた。

 炎武郎が叫んだ。

「サムチャイ君ッ!!良夢君の宿る刀に、電流を流しなさい!!紅兜は再生しても、感電を防ぐ能力など無かろうてッ!!」

 もはや、剣戟は十合は続いていた。

(アスカニさん!!)

「静電気流すだけなら!!」

 良夢の驚異的な成長速度、そしてサムチャイの電流剣が、二十合も打ち合うと、効いてきた。

 感電で紅兜が刀を握れずに落とした。

「ぬぅぅぅぅッ!!」

(今だ!!肩を狙って深手を!!再生時間を稼ぐッ!!)

 サムチャイは相楽守蘇芳之定で紅兜の肩に深い斬撃を食らわせた。

 京と紫が走って来た。

「待たせたな!間先生を治すと紫がきかぬもので……対策は見つかった、俺と紫が討つ!!」

「京さん!紫さん!!」

 紫は走り込み、紅兜から距離を取った。

「お兄様!!」

 京は印を切る。

元柱固具(がんちゅうこしん)八隅八気(はちぐうはつき)五陽五神(ごようごしん)陽動二衝(おんみょうにしょう)厳神(げんしん)害気(がいき)攘払(ゆずりはらい)し、四柱神(しちゅうしん)鎮護(ちんご)し、五神開衢(ごしんかいえい)悪鬼(あっき)(はら)い、奇動(きどう)霊光四隅(れいこうしぐう)衝徹(しょうてつ)し、元柱固具(がんちゅうこしん)安鎮(あんちん)を得んことを、(つと)みて五陽霊神(ごようれいしん)に願い(たてまつ)る!!」

 京の術は、紅兜を戒め、一時的に動きを止めた。

「紫、破魔矢をッ!!はずすなよッ!!」

 紫は焦りを堪えながら、弓矢の照準を合わせた。

「アーチェリーなんて子供の頃以来なのに。だけど、当てなきゃ皆殺られるッ!!」

 元来、黒き花嫁は、巫女橙の直血。

 最大級の破魔矢こそ、紫にしか成せないと言えよう。

「当たれッ!!」

 凄まじい霊子力の破魔矢が跳んで来た。

 邪気を祓う破魔矢は紅兜に直撃し。

 閃光が走った。

「こういうの、普通見えひんはずなんやけど……」

「一度ミスリルに触れた貴方には、見えるのでしょう。霊子力とはきっかけから引き起こされる力です。……むッ!?」

 紅兜は立ち上がった。肩に刺さった破魔矢を引き抜いて。

「肩だと……紫!何をしているッ!!」

「わ、わたしだって兜を狙ったわ!!かわされたのよ……!!」

 紅兜はサムチャイに向かって刀を振りかぶった。

「お兄ちゃん!!」

「良夢ちゃ」

「お兄ちゃんを、返せーッ!!」

 紅兜は、サムチャイの相楽守蘇芳之定の一閃を、胴体に受けた。

 否。かわさなかったのだ。

「志乃……ぉぉお、志乃……お前、なのか……?」

 志乃。

 鬼柳十兵衛羽左衛門の末の妹にして、活発で愛らしい娘、良志乃は、戦の前に敵陣の武家に嫁いだ。

 戦になると、十兵衛羽左衛門は、志乃の夫、滝之条を殺め。

 志乃は、甲冑を纏い、最後の陣営を率いて、兄に立ち向かった。

 兄様(あにさま)を返せ!

 悪鬼羅刹より、我が兄を取り戻そうぞ!!

(アンタ、今なら妹を殺さなくて済む。)

 志乃。

 儂は、お前を殺めたかったのでは無い。

(戦が殺らせたんだろ。いい加減認めろよ、頑固親父。)

 今更の平和に何があろうか

 我が子らの犠牲の上で、安寧を得た痴れ者共よ

(アンタ達の犠牲があったから、目が覚めたんだろうよ。妹を見ろ。アンタ、良志乃さんに、報いや安寧は、いらねぇと思うか?)

 ……良かろう。退いてやる。

 二度も志乃を殺めたくはのうてな。

「そうかい。」

 しかし、安寧は許せる世にあらず。

 怨、怨、怨

 怨敵、鏖殺すべし。

「またの機会にな。羽左衛門さんよ。」

 架無が紅兜を引き抜いた。

 皆が呆然として見ていた。

「自力で……はずした?」

「お兄ちゃーん!!」

(ちょっ、良夢ちゃん!ワイの身体……)

 架無はサムチャイ良夢が飛びついて来て、感電しつつ怒鳴った。

「いってぇ!おい良夢!アスカニを巻き込むな、デリケートな奴なんだ!自分の身体に戻ってから!俺からの拳骨もな?」

「ヒェェー!!今度はお兄ちゃんの鉄拳制裁ですかーッ!!」

「良、良夢ちゃん、ワイに百面相させへんで……。」

 紫は少し微笑ましく見ていたが、当の良夢の置き去りの身体を見て青ざめた。

「良夢……貴方の身体、また死んでるんだけれど……。」

 サムチャイ良夢が駆けつけた。

「あれ?魂が無いから死んでる……違う!出血多量、部分壊死!!こ、これはどうしたらッ!?」

 紫が丁寧に良夢の身体を縫って治癒していく。

「良夢。きっと教訓になったでしょうけど、刀ってとても殺傷能力が高いのよ。わたしも生徒会や瀬ケ崎さん、間先生を治したから、前よりかは知識がついたけど……アスニと共闘はいい作戦だけど、肉体を簡単に離れてはいけないわ。魂って、人間の気力のようなもので、自然治癒力や、持ち堪える長さにも関与してくるのよ。」

「はいい!!迂闊でした!すみません!!」

 良夢の遺体はどんどん肌色が明るく戻ってきた。

「ほえー。紫さんて、血液なんかも作り出すんですか?」

「そういうミスリルがジブリールだもの。医学部の卵だし、元々初めて出会った貴方も、死体だったわ。さぁ、相楽守蘇芳之定を貸して。」

 紫が受け取り、良夢のミスリルを良夢の左胸に収納した。

「良かった……なんや、色々表情筋疲れた気ィするわ……」

「悪ぃな、アスカニ。良夢の汚ねーパンツとか忘れ去っていいからな。」

 架無の言葉に、良夢は慌てて起き上がって下半身を確認した。

「あぁー!!我慢していた御手洗が!!失敗しているッ!!」

「マジ?バッチい奴だな……」

「死体になったら、そりゃあ……人は死んだら何もかも噴出するわ。目玉が収まった分、まともなのよ?」

 炎武郎の腕のコンピュータが警報を上げた。

「!!」

 全員凍りつく。

 炎武郎が時計型のコンピュータのスイッチを押した。

 モニターが投影される。間先生だ。

「まさか」

「はい、学園長……そのまさかです。校庭に魔王のゲートが湧いています。本日、教頭と副教頭がおりませんので、僭越ながら副官はわたし、古典教師、間英一が担当します。至急、学園長室に戻られたし!!」

 架無は咄嗟に脚を失った炎武郎を背負った。

「学園長!現状の戦力連中は校庭へ、アンタは非戦闘員の俺が運ぶ、そんなとこだろ!?」

「うむ!すまない架無君、頼む!主力、相楽良夢君!サムチャイ君!紫と京は補佐に回るがよいッ!!わたしは学園長室につき次第、主砲発射準備に入る!!合図で魔王から離れなさい!!」

 全員応じた。

「「はいッ!!」」

「各自移動!健闘を祈るッ!!」


 校庭の大地には、漆黒の影が広がっていた。

 否。これは、魔王のゲートである。

 瀬ケ崎が生徒会室に駆け込んだ。

「各員揃っているか!?」

 防衛部隊、生徒会メンバーが個々に席についている。 皆が皆、モニターを開き、キーボードより優れたパネルを操作していた。

「書記、島田魁時、待機!」

「会計、南野蓮叶、待機!」

「書記長、東城伊織、待機!」

 瀬ケ崎拓海が見回した。

「会計長は?」

 遅れて会計長が走って来て、席に着いた。

「わりーわりー!トイレ行ってたの!会計長、宮本信長、到着!」

「副会長、衿崎巴、待機。拓海。間先生は学園長室に。早く!」

 瀬ケ崎は生徒会長席についた。

「各員、第一戦闘配備!!間先生、こちら生徒会室!学園長は?」

 モニターから間先生が応じた。

「お越しになられた!生徒会、直ちにエリア移動の後、学園長室に合体せよ!!」

 瀬ケ崎は告げた。

「各自シートベルト!エリア移動だ、信長、プログラマーだろ?上手くやってくれ!」

「任せときなァッ!!」

 会計長のタイピングで生徒会室は校内をスライドし、学園長室に合体した。

 司令官席には炎武郎、付き添いの架無と、副官間先生が立つ。

「学校、こんなことになってた訳ね……。」

「メインモニター開きます!」

 メインモニターを見て、炎武郎は冷や汗を流した。

「来る……ッ!!」


 校庭の良夢、サムチャイ、紫、京は、凄まじい風圧に堪えながら、見ていた。

 ゲートから生えてくる巨人。黒き羊の角をはやし。黒き巨人が咆哮を上げた。

 良夢は見上げながらボヤいた。

「二度目の……魔王戦だ……!!」

 サムチャイが京と紫を庇った。

「京さんは紫さんを連れて、下がってくれへんかな。良夢ちゃんとワイが前衛を保つから、感電せぇへんようにな。」

「……かたじけないッ!!」

「良夢、アスニ!怪我したら下がって!治癒するわ!!」

 京は魔王を見て考えた。

(相楽良夢の同じ特攻は効くまい。まだ未熟な彼らを支えるには……!!)

 京は、その答えを知っていた。

 猶予だけ。時間だけが、彼らには足りないのだーーー。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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