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Soul VS  作者: 燎 空綺羅
プロローグ
5/14

第5話 稲妻VS大雷 1

 紫はようやっと取り巻きから隠れた。

「紫様はどこかしら?」

「うまくツテができたら、あたしも社交界なんかに……」

「馬鹿言わないで!あんたが紫様と並んだところでせいぜい引き立て役よ!」

「そうよ、やましい奴は近づかないでちょうだい!」

 廊下の窓下に張り付いて、外の取り巻きをやり過ごしたいが、彼女らはしつこく帰らない。

 紫はスマホを出した。

「良夢?」

「紫さんどこに!?丸一日探したのに見つからないのですがーッ!!」

「手芸部の向かいの窓下に隠れてるわ。ちょっとしつこい生徒達がいて。来て貰えるかしら?」

 いきなり通話が切れたかと思うと、手芸部のある文芸部棟二階から、大ジャンプ、見事な着地で鉄バットとヘルメットを装備した相楽良夢が構えた。

「え……良夢!?」

「うわ。あれ、相楽さんじゃない?運動部ピンチヒッターの。」

「紫様捜索の邪魔なんですけど……」

 良夢は鉄バットを振りかぶって、女生徒達を追いかけた。

「相楽良夢、見参ッ!!行くぞ!悪漢成敗!!突撃だーッ!!」

「げぇーッ!?何故か乱心なさってますわよ!?」

「逃げるのよ、退避ーッ!!」

「卑怯者ッ!!女の子に手を上げようだなんて!!」

「それを言うなら女の子対女の子ッ!!この相楽良夢に容赦無しッ!!そーら!!バッター、ストライーク!!」

 良夢のストライクで女生徒が一人、空の彼方に消えた。

「さぁさぁ!どんどん星にしてあげますよッ!!来いッ!!」

「キャー!!」

「化け物よーッ!!」

 取り巻きが皆逃げ去ると、良夢はバットを担いで戻って来て笑った。

「もう大丈夫!紫さん、昨日ぶりです!!」

 紫は立ち上がって苦笑した。

「貴方って子は。まぁ、助かったのは事実だわ。……話があるの、良夢。よろしくて?」

 良夢は意気込んだ。

「さっそく魔王退治ですか!?」

 紫は複雑げに俯き、決意した。

「わたしと良夢が魔王に挑むことを、禍獄の家がまだ、納得してはいないわ。貴方のミスリルは、貴方にとってもはや命よ。力づくでも、貴方の強さを認めてもらうしか、ない……!」

 良夢は瞬きした。

「禍獄……前生徒会長、禍獄フィンセント京さんを……叩きのめすんですか?だけど、京さんて紫さんのお兄さんですよね?良いのかなぁ……。」

「大丈夫。兄はミスリルを所持していない、直接来るのは兄じゃないはずだわ。それに、兄ほどの霊子力ならば、物理なんか効かない。陰陽術で防ぐでしょうから。」

 紫に、良夢は聞き返した。

「陰陽術?えーと、筋肉で貫通出来ませんか?」

「良夢。貴方が魔王に一撃与えたのは、ミスリルが霊子力を宿した特殊兵器だからよ。陰陽術もまた同じ。……もっとも、貴方のミスリルを使えば兄が死ぬし、奪われる恐れもある。兄には、見せつけるだけに留まるべきだわ。」

 京は、紫と良夢を既に発見していたが、怒って壁を殴打、クレーターを作っていた。

「見せつけるだと!しかも、奪われる恐れ……!お、俺を何だと思っている、紫!何故あんなど素人の、死んだ女をッ!!ええいッ!!……父上の言う通りだ。俺が妹を殴り殺してしまう。くぉぉ紫ィッ!!!」

 良夢は響き渡る怒声に気づいていた。

「紫さん、あそこに京さんが」

 紫のスマホにメールが来た。

「大丈夫よ。兄なりに自分を抑えたみたい。でなければ今頃張り手に来ているわ。」

「おのれェッ!!紫ィッ!!」

「紫さん丸聞こえです!慎みましょうッ!!」

 紫がメールを開くと、京から至近距離メールが来ている。


 夕方四時

 校庭中央に来たれし

 相楽良夢の手並を拝見す


 良夢は一緒にスマホを見てボヤいた。

「お兄さん、怒りん坊だけど悪い人では無さそうですね!」

 紫は瞬きした。

「何故?お兄様は貴方を殺したって魔王を倒す気だし、良夢が女の子だからって侮って、男尊女卑だわ。」

 良夢は笑った。

「だからですよ!それだけ強い男が紫さんを守るって責任感と、手段は選べないはずなのにわたしにも手並みを拝見すると譲ってるんでしょ?わたし、本来なら生きてないし、権力者ならば秘密裏に抹殺したり出来る訳ですから!」

 紫は驚き、感心した。

「良夢あなた、人の良いところが見えるのね。」

 良夢は拳を手のひらに叩きつけた。

「でも、わたしも負けません!!わたしのミスリルは日本刀なので、剣道を仕込んだ我が肉体に不備は無しッ!!……あれ?紫さん?」

「剣道は競技、スポーツに過ぎないわ。日本刀は古武術の域……四時までに、少しトレーニングしましょう。わたしも良夢をサポート出来るように、ジブリールの力を試したい。」

「わたしと紫さん、タッグバトル?紫さんの助けを借りていいんですかね?」

「どの道、魔王退治だってタッグバトルよ。わたしのジブリールとの相性だって、貴方に求められるスキルですもの。」


 架無は粗方のオカルト情報をプリントアウトし、まとめてホッチキスでとめた。

「どや?片っ端から当たるしかないんとちゃうやろか?」

 サムチャイに、架無は不敵に笑う。

「結構あるもんだが、時間内なら、学園七不思議だな。もっとも俺は禍獄みてぇに幽霊は見えねぇから、トイレの花子は✕。まぁ、狙いは決めたからな。真っ先に走るぜ?」

 サムチャイは微笑んだ。

「ほんなら、やっと対等やん。心置き無く行けるちゅうもんや。」

 京が走って来た。何やら怒っている。

「京さん!放送流しますよ!」

「ええいッ!!早くやれ!!生徒に被害者は出せんぞッ!!」


「緊急放送です。放射能漏れが見つかりました。生徒の皆さんは教員の指導に従い、避難、帰宅してください。」


「三十分前。ようやく放送か。」

「遅いぞ瀬ケ崎ッ!!」

「京さん、何があったん……?荒れてはるというか、堪えてはるというか。」

 京はサムチャイには礼儀を払い、深呼吸した。

「俺の短気が、妹にいささか馬鹿にされ……俺は手癖の悪い男で、すぐ張り手が出るのを、常々父に叱られておりますので……弱き女子供を殴らぬために、歯軋りしながら引き下がりましたが……俺は事実短気で負けん気の強い男ですから、怒りで燻ってしまい……これだから、父に叱られるたちです。」

 架無が肩を竦めた。

「別に兄貴の意地は通したっていいだろ。女だからってそんなに弱いこたねぇし、特に良夢の奴がいたんなら、やりすぎなら妹さんを守るだろうしよ。だいたい、妹の為にアンタがこんな役割してるんだぞ?サンドバッグ購入を勧めるね。うちの馬鹿妹も溢れる闘志をサンドバッグにぶつけてるぜ。」

「俺は架無殿の妹を殺めるかもしれないのに……何故慰めを?」

「は。アンタは敵だけど、俺も兄貴だもんでね。俺なら良夢に拳骨もんだ。無事に良夢を助けきって安全になったらなったで、俺はアイツを叱るしな。死なせる気はねぇが、元々はアンタのミスリルを持ち去ったアイツが悪ぃんだし。」

 京は架無の冷静さに驚き、ボヤいた。

「架無殿は大した兄だ。妹可愛さに周りをかえりみぬ俺より、余程……」

 サムチャイが優しく告げた。

「京さん、家柄のせいやろか、よほど考え方に縛られたんやろうな。紫さんを守る為のお兄さんやから。ほんでも、良夢ちゃんのことは心配せんでええよ?架無がしっかり教育した子やし、タフさだって、ワイが命懸けじゃなきゃ対抗できひん。」

 京は言われた意味を考えた。

「相楽、良夢……。そこまでの、信用ある女なのか……?」


 夕方四時。

 サムチャイ、架無、京が待つ校庭中央へ、良夢と紫は走ってきた。

 まずは、禍獄フィンセント京が、宣誓した。

「相楽良夢ッ!!俺の肩には妹の命がかかっているッ!!抹殺もやむ無き問題ではあったが、此処であえて誓おう!!乗り越えて見せよ、さすれば魔王退治は貴様に譲ろうッ!!これは、俺の要請に応じてくれた、サムチャイ殿と架無殿への、相応の恩義への答えであるッ!!」

「は。息抜けよ京さん、ま、そういうの嫌いじゃねぇけどよ。」

「お堅い方なんや。せめて、役に立たななぁ……。」

 良夢と紫はサムチャイや架無を見て怯んだ。

「お兄ちゃん!?アスカニさんッ!!なんでここに!?戦うのはまさか、アスカニさん!?」

 良夢と共に紫も驚いた。

「アスニ?まさか……!いけないわ!!貴方の力はこんなことに使うものじゃない!それに、戦ったりしたら、貴方の肉体的損傷は……!!」

 架無が告げた。

「アンタが紫さん?ミスリルの欠片があって、京さんが安全面は見張るから心配すんな。それより、戦うんなら良夢をよろしくな。アスカニはアンタを守るし、俺は馬鹿妹を助ける。おい良夢!またひでぇ事態をやらかしたな!お前後で鉄槌もんだが、とにかく防戦して待ってろよ!!」

「お兄ちゃん……はいッ!鉄槌と助太刀、了解です!!」

 サムチャイはミスリルの欠片を握った。

「ほな……ええかな?京さんも良夢ちゃんも。紫さんは、ごめん……。生きてほしい。この戦いの結果が、どうなってもや。」

「欠片の守りに異変あれば俺がお助けします。起動タイミングは、サムチャイ殿にお任せ致す。」

 禍獄フィンセント京は、陰陽術を展開。いつでもアクシデントに対応出来る構えだ。

「相楽良夢、承りますッ!!」

「アスニ……!」

 サムチャイはミスリルの欠片を握って念じた。

「治癒能力が、ええんやったな……ほな、起動せぇや!ワイのミスリル!!」

 ミスリルは起動し、銀色にもオーロラ色にも見える、眩い光を放つ。

「?こいつは、霊子力だかが無い俺にも見えるのか……!」

 欠片だけでも凄まじい力だ。

 生まれたのは指輪。

 アーマーリングだ。

「あれ。なんや。痛く、無い……?ワイの身体、どうなったんや?」

 常に耐えてきた痛みがひいて、サムチャイはゴムスーツをといて、はだけた学ランとハーフパンツになってみた。

 成長期に育った筋肉質な身体に、ブリーチした長い髪。整った顔立ち。

 帯電している。相変わらず、だ。

 だが、身体は治癒され、皮膚には防御膜すらあるではないか。

 京は感心した。

「これが、サムチャイ殿……!」

 架無ですら、ゴムスーツの下の本当のサムチャイを初めて見た。

「アスカニ!痛くねぇんだろ!?ゴムの無い空気はどうだ!?」

 サムチャイは強力に放電し、静電気が柱を立てた。

「イヤッハーーッ!!最ッ高や!!肌がお日さん浴びるのも、生まれた時以来やんなぁッ!!」

 架無は素直にその喜びに乗ってやった。

「お前、やっぱオトンのオカン似だよ!金髪がはえて面がいいぜ、アスカニ!!」

 サムチャイは照れながら、架無に促した。

「そら、良かったけど……架無!オートバイは下げるんやぞ!ワイの静電気が当たったらお陀仏やさかい!」

 良夢は左胸に手をかざした。

「さて!わたしも行きます!お兄ちゃんは、わたしが抜刀したら、走り出してください!!起動しろ、わたしのミスリル!!」

 良夢の左胸から柄が生えた。良夢は柄を握りしめ、刀を抜き出す。

 真紅の刀身、ツカは無し。

 日本刀のミスリルを、良夢は構えた。

「これぞ我が魂の剣、相楽守(さがらのかみ)蘇芳之定(すおうのさだ)!!いざ!!相楽良夢、推して参るッ!!」

 架無はオートバイにまたがってエンジンを唸らせた。

「負けんなよ良夢!待ってろ!!秘密兵器を持ってきてやらぁ!!」

「はい、お兄ちゃん!待ってるけど……電撃って斬れますかね!?」

「おま、この馬鹿!そんなもん斬れるか、このハナタレ!!とにかく回避してろ!!あと、アスカニに重傷負わせたらただじゃおかねぇからな!!」

「御意にッ!!」

 架無がオートバイで走り出し、良夢はサムチャイに突撃す。

「回避と言われた傍から、先手必勝ッ!!行っけぇぇええ!!」

 サムチャイは良夢のミスリルを初めて見て怯む。

「日本刀!?あかん!!」

 日本刀など一撃斬られたら終わり、殺傷力が高い。

 サムチャイは防衛の為に放電し、慌てて良夢は身を低くスライディングして回避。サッカーゴールまで電気が飛んだ。サッカーゴールは感電し、ゴールネットが燃え出した。

「金属……そうだ、雷だったら刀自体が避雷針になりかねないッ!!」

「せやな、良夢ちゃん。悪いけど次はソレに落とすで!!」

 良夢は避雷針にさせぬ為に、刀を下げて前進す。

「ならば!下段から斬り上げるッ!!」

 サムチャイは身構えた。

「あかん!間に合わ……」

「危ないッ!!臨兵闘者皆陣列在全ッ!!」

 京は咄嗟に修験道からのルーツある陰陽術で、九字を切ってサムチャイの守りへ。

 良夢の刀はサムチャイの腕に直撃するが、刃が通らない。

「へっ?」

 京が叫んだ。

「俺の守りは突破されているのに!これは、サムチャイ殿の持つ霊子力かッ!?サムチャイ殿の防御膜は刃を通さないッ!!ミスリルの欠片であそこまで至るとは……ッ!!そして、隙だ、サムチャイ殿!!」

「せ、せや!やったるでーッ!!」

 良夢は斬り上げた刀身を避雷針に使われ、電撃の直撃を受けて焼けただれた。

「うわあああああああッ!!」

 紫が咄嗟に叫んだ。

「良夢!刀を地面に刺しなさい!!電流の通り道を作らなければ!!」

 良夢が、刀を地面に突き刺すと、身体を焼いていた電流は大地に流れて行く。

 紫が走り出した。

「良夢は下がって!わたしが治癒しながら時間を稼ぐ!」

「でも!」

「治って復帰したらいいのよ、言う事を聞いて!」

 素早く紫が良夢の前に立ちはだかる。

「ジブリール!!治療と攻撃、同時は初めてだけど……やらなければ良夢がもたない!!」

 紫は双翼を展開。

「後方、治癒展開。前方、アスニへ、攻撃射出ッ!!」

 紫は羽根を撃ってきたが、サムチャイは羽根をかわして駆け回る。

「紫さんに電撃が当たったら本末転倒や。裏手に回らんと!!」

 サムチャイは回り込んで良夢に狙いを定めた。

「速い!!」

「取ったで!!」

 サムチャイの電撃は良夢方面へ。

「ジブリール、良夢に防壁ッ!!」

 紫のジブリールは羽根を四隅に飛ばし、良夢にシールドを展開。

 戦闘型では無くとも、最も優れた黒き花嫁だ。

「もし紫さんが挑んでたら、ワイは持久戦ではもたへんな……」

六根清浄(ろっこんせいじょう)急急(きゅうきゅう)如律令(にょりつりょ)ッ!!」

 なんと、ジブリールのシールドを京が陰陽術で解除した。

「お兄様!!」

「サムチャイ殿!」

「すごい兄妹さんや……ほな!!」

 次の電撃は、良夢自らが回避した。

「治癒完了しました!!紫さん、相楽良夢、行きますッ!!」

 良夢は刀を下げて走り込む。

 本来、刀を下げて前進するのは、実戦向きの剣術の基礎である。

 良夢は奇しくも実戦から学んだのだ。

 サムチャイは怯まず帯電を集めた。

「なんの、斬られても防御膜が……うっ!?」

 サムチャイはいきなりの目眩に襲われ、吐血した。

「サムチャイ殿ッ!!」

 サムチャイは理解した。

「ああ……そうだったんや。ワイの守りは、霊子力やのうて、生命力……はよ、決着をつけなな。」

 良夢が一手早かった。

「アスカニさんに決着をつけるッ!!これ以上、生命力は削らせませんッ!!うおおおおぉッ!!!」

 早くも良夢は下段斬り上げが上達している。

 サムチャイは咄嗟に全身から発電し、攻防一体に出た。

「悪いけど!ただで戦闘不能にはならへんよ!ワイだって役に立たななぁ!!」

 良夢は斬り上げが止められず、サムチャイに巻き込まれて感電した。

「うわああああああッ!!!」

 本能的に、良夢は飛び下がって、刀を地面に突き立てた。

「アスカニさんの攻撃、身体が覚えてきたッ!!いくら焼かれても、この相楽良夢、逃げませんッ!!」

 京は相楽良夢に目を剥いた。

「なんという女ッ!!サムチャイ殿の静電気で、一度焼かれたら冷静な判別などつかぬものをッ!!皮膚が焼けただれても……なんだ、一体なんなのだ、相楽良夢を突き動かす、あのバイタリティはッ!?」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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