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Soul VS  作者: 燎 空綺羅
転章
13/14

転章 紫の決意 3

 鳥居の向こう。地下への洞穴の前に、紫は立っていた。

 いざ、身投げに来て、紫は恐れていた。

「お兄様。こんなに、怖いと感じることを……わたしの為に、やったのね……?」

 死ぬのは怖い。

 何より、魂すら取り込まれるだなんて。

 魔王の贄だなんて、怖い。

「紫さん!!ダメだァッ!!」

「良夢……!」

 怖がっても、いられない。

 もう、誰も犠牲にさせないって、決めたわ。

 恐れるな。

 お兄様だって、いるんだ。

 紫は微笑んだ。

「良夢……わたしの分も、生きて、幸せに……」

 幸せに、なってね。

 紫は洞穴に身投げして、みなまで聞こえ無かった。

 地下で、魔王が眠りながら、胎動している。

 おいで

 おいで

 黒き花嫁、みぃつけた

 人間の手が複数伸びて来て、紫を引っ張った。

 引っ張る?

 紫は温かい水滴を感じて、見上げた。

 紫の手を掴んだ、良夢が、泣いている。

 泣きながら、怒っていた。

「逃げるなッ!!!」

 良夢の怒りに、悲しみに、紫もまた泣いた。

「離して……!わたしを嫌いになって、よかったのに!!良夢にも、アスニにも……生きていて、欲しいのよ!!その為ならわたし、怖くないわ!」

 良夢は涙でぐしゃぐしゃになりながら、怒鳴った。

「わたしやアスカニさんが、そんなの許さないッ!!京さんが言った!紫さんに、長生きしろって!負けるなって、言ったんだッ!!」

「良夢……!離して、良夢!!」

 紫は、手達が良夢にまで到達し、良夢を失うのを恐れた。

 良夢は、泣きながら怒るのを、やめなかった。

「戦う前から逃げるな!!紫さん!!貴方は、運命を壊すまで、闘い抜かなきゃ、駄目だッ!!!」

「……立ち止まることは、許されないの?良夢やアスニが、死んでも……?」

「案ずるな、紫さんッ!!わたしがいる!!お兄ちゃんも、アスカニさんも!!わたし達は死なない、強くなって貴方を支えるから!!京さんの死は、無意味なんかじゃないって……わたし達で、勝ち誇って言うまでッ!!負けるなッ!!!」

 良夢の涙が、あまりに溢れて。

 繋いだ手は、滑ってしまいそうだったけど。

 紫は、ようやく握り返した。

「そうね……待たせたわね、良夢。」

「紫さん!!もう片方の、手を!!」

 紫は両手で良夢と手を繋いだ。

「皆の為に、死ぬことより。皆と一緒に戦って、戦って……皆を失っても、死んでも。魔王に一矢報いてやるわ。これは、わたしの闘いなのだから……!!」

「うん!!うん……!!」

 架無、サムチャイ、後藤先生、二年生男子で、紫と良夢を力いっぱい引き上げた。

 紫と良夢が助かって、架無がサムチャイに告げた。

「ぶっちゃけアスカニは引き上げに混ざったら危ねぇぞ。俺と後藤、感電してたし。まぁ、気持ち的に仕方ねぇけどな。」

「すまへんなぁ……いてもたっても、いられへんで……。」

 紫がサムチャイに気まずげに告げた。

「アスニ……。わざと、傷つけることを言ったわ。ごめんなさい。嫌いなんて嘘。わたしを嫌に思ってくれたら、辛くないかと……馬鹿な浅知恵ね。」

「えっ?ええんよ……実際、余計なことしたのワイなんやし……紫さんがご飯どころやない日に、ワイがいてもたってもいられへんで」

「本当は、嬉しかったのよ。小さいお弁当をもらったのは初めてだし……授業が始まってから、保健室に行く前に、回収したの。お重箱は置いてきちゃったけど。」

 サムチャイは照れ始めた。

「ほぇぇ……あ、あんなぁ。タイ料理は好き嫌い分かれると思うて、辛くない、パクチー抜き、で、作こうたから……ワイ下手くそやし……味は変やもしれへんけど……」

 サムチャイのクラスメイト大勢が保護者のように見守っていた。

「いやー、うちのプーはピュアですわー。」

「むきたまごのような純度だわー。」

 架無は良夢とサムチャイをかきわけて、紫に弱めの拳骨を落とした。

「架無、さん?」

「アンタも辛かったろうがな。傍から見たら、無闇に周りを傷つけて、挙句、自殺未遂だからな?京さんが今いねぇ。だから、代わりに俺から説教だ。」

 紫は、初めてまともな説教を受けて、躊躇いながら、答えた。

「……ありがとう。良夢の、お兄様。」

「まぁ、アンタも金輪際やらねぇだろうし。……よく、良夢に応じたな。戦って戦って、皆が死んでも、一矢報いるってのは、今までのアンタにとって、一番避けたかった道だろうさ。……頑張りなよ、紫さん。」

「……はい!!」

 間先生から連絡が来た。

「そちらは無事かね?」

「うーす。皆生きてんぜ。」

「学園長がお見えになられる。通信を切るが、大丈夫かね。」

「大丈夫大丈夫、後藤もいるし。間センセも、ありがとよ。」

「学園長と生徒を助けるのは、教師の役目だ。では。」

 後藤先生は紫に涙の抱擁。

「生きるということはッ!!試練の連続だッ!!禍獄ッ!!よく頑張ったな!!」

 紫は微妙に困って固まっていた。

「あの、後藤先生……わたし、女生徒……」

 相楽良夢はこの光景に何を感動したか、更に後藤先生と紫を抱きしめ出した。

「うわあああああッ!!先生ッ!!紫さんッ!!生きるって、戦いなんだッ!!」

「よくぞ言った、相楽妹ッ!!命あることは、奇跡みたいなもんなんだッ!!」

 紫は二人にガッチリホールドされ、出られなくなった。

「……アスニ!何か変えて!この状況を!」

 サムチャイは提案した。

「後藤センセ。帰ったら放課後やし、皆で紫さんのでっかいお重箱食べて、急いで日本史の補習せえへんと。紫さんのお重箱は空っぽになると、家政婦さんが喜ぶし。勉強もせな、あかんよ。」

 後藤先生と良夢はちゃっかり離れて、飯に釣られた。

「アスカニの言う通りだ!ひとつ乗り越えて腹も減ったし、クラスの皆も禍獄生還祝いをしよう!禍獄はアスカニの小さな弁当を食べるチャンスだしな!その後ハイスピードで日本史を再開ッ!!帰還しようッ!!」

 神主が勘違いで怒って待っていた。

「禍獄の鎮嫁神社を何だと思っておありか!神聖な巫女の封印を邪魔立てし、京様の眠る社を……」

 架無が腹を立てて睨んだ。

「あぁ!?」

 サムチャイが告げた。

「心配いらへんよ、架無。後藤センセ、おるよ。」

 後藤先生の鉄拳が神主をぶっ飛ばした。

「バカモン!!何故兄を失ったばかりの妹を危険地帯に通したのかッ!!我々が来なければ、今頃禍獄学園長は、子を二人共亡くしていたんだぞッ!!」

 神主は怒って、逃げながら叫んだ。

「おのれ、怖いもの知らずめがッ!!見ておれよ……!!」


 禍獄炎武郎は、学園長室に座り、電話先に怒鳴った。

「ぇぇい、愚か者が!所詮貴様は父の跡継ぎの木偶ではないか!世襲制などろくでもない!もういい、言い訳などは聞きたくも無いわ!!」

 炎武郎は一方的に電話を切った。

「待たせたな間君。生徒会室せり上げ、揃っておるか?」

「はい。瀬ケ崎拓海、司令部にせり上げ稼働せよ!」

「はいッ!!」

 生徒会室と学園長室が組み合わさり、司令部が完成する。

「瀬ケ崎君!ミスタリレ社からの商品は?」

 瀬ケ崎がパネルを叩きながら解析していた。

「すごい……数も質も、圧倒的ですッ!!」

「うむ。第二次作戦遂行日程は明日!!そして間君は二階級特進!!」

「……承ります。」

 炎武郎が咳払いした。

「後藤君も同時に昇進だ。」

「後藤先生……?」

「わしの娘が世話になってな。間君にもだが。無能神主にわしの分まで拳を叩き込んでくれたらしい。馬鹿神主から聞いてな。間君、生徒会の皆、良夢君達……紫を助けてくれて、おかげで知らなかったわしは円滑に作戦を進められたのだ。知らされていたら、わしは紫を追って、作戦決行など頭にも無かっただろう。京を失い、改めて人の支えでわしは立っておる。皆、礼を言おうぞ。」

 瀬ケ崎拓海が、告げた。

「学園長。俺達、もう無関係じゃないです。尊敬してた京さんを奪われて、俺だって……一矢報いてやる。京さんが守った紫さんは、皆が守っていきますよ。」


 翌朝は、一学期の終業式だった。

 相楽良夢達は、うるさいヘリにビビりながら登校する。

「なんか、自衛隊集まりすぎでは?」

 山崎君が答えた。

「放射能漏れは、夏休みの間に直るけどきっと。人体の影響とか考えたら、そりゃ自衛隊とかレスキュー隊の問題だろ?」

 江差君も告げた。

「相楽はきっと知ってるけど、前生徒会長の死因だって……昨日なんか二年生の一クラスが人命救助に出てたらしいし。禍柳に、なんかあるんじゃないか?」

「……うん!山崎君達、もしおかしなことになったら、グルラに書いて。わたしが行きます!!」

 付き添いの保護者達も、異変を感じ始めた。

「え?……は、はい。ですがなんでいきなり。赤ちゃんを生んだわけでもありませんけど……はい。」

 相楽お母さんが電話を切ると、相楽お父さんが尋ねた。

「どうしたの?会社?」

「わたし、三ヶ月有給休暇だって。本来、有給絶対消費させてくれない会社よ、変なの。」

 山崎君お母さんが、聞こえたのか、駆けつけた。

「相楽さん、うち自営業なんだけど、国からいきなり給付金が……給付金なんて、禍柳以外、もらってないわよね?」

 山崎君お母さんと相楽お母さんを見て、相楽お父さんはボヤいた。

「変なの。この三ヶ月に何かあるのか?……良夢達含め、参観日に来た親までも?」


 終業式では、いつも通り進み、やがて朝礼台に間先生が炎武郎の車椅子を押した。

「生徒諸君!まずは一学期の終わりに、教室で成績表をもらってきなさい!終業式は、まだ解散ではないので!再び会う時、全校生徒揃っていることを、期待しているッ!!」


「山崎拓斗ー」

「はいー」

「お前、運動部ピンチヒッター組なのに、宿題もテストもしっかりしてるよ。皆に見せたいぐらいだ。」

「いやいや。」

 成績表を受け取りながら、生徒達は席についた。

「相楽良夢ー」

「見参ッ!!満を持してッ!!」

「お前バカ、一学期宿題ノータッチ!しかも山崎と春原の筆跡だった!テストもひどい!どうやってこの高校へ?」

「よくぞ聞きましたねッ!!わたしは、スポーツ進学生ですッ!!」


 その頃、架無は無理やり教室に連れてこられ、渋々成績表を受け取った。

「相楽ー。お前きちんと受験すればいい大学行けるぞ。」

「へいへい。気が向いたらってことで。」

「ヤンキーしてるのがもったいない!……いや?相楽は、腕っぷしが強いのか?ヤンキー的に。」

 架無は瞬きした。

「まぁ、そこそこ?」

「そーかぁ……全てが無駄にはならんものだな……あ!相楽、ふけるんじゃない!席について!」

「?」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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