転章 紫の決意 4
後藤先生が委員長に告げた。
「では!!委員長、クラス委員の皆で配ってくれ!!」
「はい。皆さん、今から配るものを、生徒手帳のように、無くさずに持ち歩いてください。」
サムチャイは、配られた物に驚いた。
「え?ちょ、後藤センセ!これは、配ったらあかんよ……皆の生命力が削られるんちゃうかな?荒療治やないんか?」
生徒達に配られたのは、銀色にもオーロラ色にも見える物質、ミスリルだ。
「言いたいことは良くわかる!アスカニはオリジナルの欠片を使ったのだからな!こちらの量産型ミスリルは言わば、他人の霊子力で30分起動する、霊子力は充電式だ!だが、荒療治には変わりないぞッ!!」
サムチャイは息を呑む。
「な、何をさせる気なん?学園長センセは……」
後藤先生が教員席についた。
「学園長先生自らお話なさるだろうッ!!全員座席につけ!!シートベルト起動ッ!!」
生徒達が座る椅子が机と離れていき、シートベルトに覆われた。
「段差だ!な、斜めにスライドして沈む!!」
「皆!気をつけて行けよッ!!座席移動!!」
生徒達は後部シートとシートベルトに支えられ、各自床下の移動ルートを通過して行く。
「地下へ?」
「今度は上昇してく!」
せり上がった座席は、円形の客席になって、皆が再会した。
「何ここ!?」
サムチャイも戸惑った。
「ど……どこ?」
「おーい!アスカニー!!」
見渡せば、隣のクラスも客席についていて、架無が手を振った。
「架無……!」
良夢はシートベルトをはずして別のクラスの紫の元に駆けつけた。
「紫さんッ!!なんかやばそうなので護衛しますッ!!」
「うっ……良夢……この事態はきっと父とわたしに関与する大事だわ。でも、移動に酔って吐き気が……」
紫を慕う女子達が号令。
「親衛隊!紫様に吐き気止め!」
「わたしのを使ってくださいまし!!」
「お水ですわ!!」
紫は何とか受け取った。
「ありがとう……」
良夢が指さした。
「紫さん。これ、何かで見た!闘技場だ!リングに、誰か来る!!」
地下闘技場。
リングの上に現れたのは、学園長、禍獄炎武郎と、車椅子を押す間先生である。
「生徒諸君ッ!!終業式は終了!だが、休暇は別の期間に変更した!これより、禍獄学園、バトルトーナメントを開始するッ!!!」
サムチャイが復唱した。
「バトル、トーナメント……?」
架無が額を抑えた。
「荒療治が過ぎるだろ、学園長……!」
学園長は叫んだ。
「勝っても地獄!負けても地獄よ!現在禍方区はブロック区域となり、来たる魔王到来に備えられたッ!!強者達はぶつかり合い、成長するのが使命だッ!!皆、敗者とて鍛えよ!!生き残りたくば、勝つが良いッ!!!」
生徒達はザワついた。
「魔王ってなに?」
「俺ん家の海外旅行は?」
「命懸けなの?これ……」
二年生が手を挙げた。
「そこ!二年A組沢辺愛君、質問を許可するッ!!」
沢辺愛は、サムチャイに同行し、気づいていた。
「学園長先生。京先輩が亡くなったこと、その魔王に関係ありますよね?プーチャイや、相楽君の妹が、命懸けで何かしてたことも。」
「うむ!!この三ヶ月の猶予は、京が命と引き替えに残した猶予であるッ!!君たちにも、選択肢があるッ!!一人を犠牲に生きたくば、脱落して構わん!!だが、わしは最後の一人になるまで、魔王には屈しはせぬ!!脱落者とて、強くならねば自衛も出来ぬだろうて!!」
沢辺愛は、ミスリルを握り、告げた。
「この物質が、魔王対策の武器ってことですね?」
「うむ!ミスタリレ社の量産型ミスリル!!生徒諸君の個性に応じて、ミスリルの強みは変わるだろう!!」
沢辺愛は、受け入れた。
「なんか自衛隊が出るほど危険なのはわかったけどさ。わたしは、一人犠牲にして逃げても、あんま意味ないかなって。だってここで逃げてやな思いしても、魔王が勝っちゃったらまたわたし達危ないんだろうし。」
また二年生が立ち上がった。
「武器だってあるんだし。脱落したから生きられる訳じゃないだろうし。プーと一緒に戦うかな、俺は。」
三年生が複数、非難した。
「は!?馬鹿言えよ、綺麗事で死ねるか!受験だってあんのにさ!!」
炎武郎は告げた。
「三年C組都賀矢人君。脱落して構わんよ、生きておられたら、受験も出来ような。もっとも、弱者が生きられる可能性は低いがね。」
「くそ……!」
炎武郎は鼓舞した。
「生き残るがよい、生徒諸君よッ!!トーナメントは明日から開始!!今日のうちに四人組のチーム編成を登録せい!!」
(やれる限りのお膳立てはしたぞ、紫、相楽良夢ッ!!成長せよ、京の信じた未熟な猛者よッ!!!)
「お父様……なんて無茶を……!」
紫の心配を傍らに、相楽良夢は燃えた。
「バトルトーナメントッ!!闘魂が疼きますッ!!つまり、京さんの意思!!わたしが強くなる場所だ……ッ!!!」
いつの間にか降りてきていた架無が、良夢の頭を紅兜で殴打した。
「おふう!!」
「馬鹿もん。まず紫さんの気持ち考えてやれよ。全校生徒巻き添えだぜ?」
サムチャイも顔を出した。
「でも。良夢ちゃんの気ィ、わかるんよ。ワイも、強うなりとうてな……。」
紫がため息をついた。
「良夢とアスニはくれぐれも危険な橋は渡らないでちょうだい。架無さんがついてるから、大丈夫だとは思うし……わたしも皆を信じる。」
「「紫さん」」
「へ。責任重大だが、任せときな。」
紫は、良夢に微笑んだ。
「全校生徒を巻き込んだわたしが言うのもおかしいけれど。良夢だけじゃない。わたしも成長して、勝たねばならない問題だわ。」
良夢は改めて紫と握手した。
「はい!今度こそ、わたし達が勝つ為に!力を貸してください、紫さん!!」
禍獄学園バトルトーナメント。
魔王再来まで、あと88日ーーー。
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