第十六章 ゼロ、ユウナに告げる。
ユウナは自分のベットで目を覚ました。
「・・・・っ」
夢でゼロとキスしてしまった。というか、ゼロが強引にしてきた。
私の力ではどうすることもできなかった。夢のはずなのに妙にリアルだった。
なんかすごく恥ずかしい。自分がロイ以外に自分でない自分を見せてしまうことが信じられなかった。
これは夢。これは夢。と心の中で呟いていたとき、部屋のドアが開いた。
「目が覚めたか?」
そう私に聞くような形で近づいたのはゼロだった。
私はゼロの顔をまともに見れなかった。
「ん?どうした?顔が赤いぞ?大丈夫か?」
私のあごを持ち上げ、私の顔にゼロは自分の顔を近づけるように私を見てくる。
「だ、大丈夫です。」
なんとか目をそらしながら言う。
ゼロはこのときほっとした。
ユウナは俺とロイの会話を覚えていないようだったからだ。
「ユウナが起きた後に言おうと思ったことなんだがな・・。」
俺は早速、言おうと思い話題を切り出した。
「な、何ですか?」
「ロイがな、長期滞在って話だったがあっちの都合が悪くなったみたいで昨日帰ったんだ。」
簡単に話した。
実を言うと、ロイのしたことを俺が知ったから、ロイは俺に何もしないと誓い母国に帰っていった。っていうだけの話だけどな。
「え?」
ユウナは目を見開く。
「ロイが、『自分のすることにはしっかり責任を持つよ』といってたぞ。」
「そ、そうなんですか・・・。」
ユウナの反応はさびしいものだった。
無理もなかった。
ユウナはロイに挨拶ができなかったんだからな。
「あのこと・・・言ってくれたんですね・・。」
「あ、あぁ。」
ユウナは何か心残りがあるようだった。
ユウナは、
・・・ロイに一言言いたかったな。会えて、一緒に過ごせて楽しかったと。一言だけで一目見るだけでよかったのにと。
と思った。
ゼロはユウナを突然、抱きしめた。
「?」
ユウナはわけが分からなかった。
ゼロはユウナの表情を見て、つい、抱きしめてしまったのだった。
ユウナの表情・・・それはまるで、何かにおいていかれたもののように悲しく、はかない表情だった。
ユウナは思わず顔を赤く染めた。
夢でのキスといい、今といい、いったい何なんだと言う感じで。
今まで、こんなに自分を乱すようなことはゼロやロイに出会うまでなかった。
ゼロやロイに出会って、さまざまな感情が心からあふれ出した。
恋というのも知ることができた。
私はロイに会う前まで一切感情が揺れ動くときはあまりなかった。
唯一、感情があふれ出したのは、お母様が亡くなったときだけだった。
お母様が小さいころなくなって、ロイに出会うまで私はまるで心のない人形のような存在だったと従者が言っていたのを聞いた。
ロイに出会い、はじめは自分と重ねたのかもしれない。
自分とどこか共通しているところがあると思ったのは私だけではなく、ロイも思ったことを聞いた。
ロイも私もはじめて会ったときと比べられないくらい変わったと従者に言われた。
そんな私とロイは次第に惹かれていった。
そしてそのとき、初めて恋というのを知ったんだ。
ロイに会えることは日に日に少なくなっていった。
それは自分たちが一番知っていたことだった。それでも、自分の思いは止められなかった。
自分たちは恋をしてはいけない立場であると、けして結ばれることはないと分かっていても、自分のあふれ出す思いはとめることはできなかった。
日をおうごとに増していく気持ち。
会いたい、さびしい。そんな気持ちが心の中で渦巻いていた。
そんな時、お父様に言われたのだ。
「魔の国に嫁げ。」
と。
いやだった。お父様は私の気持ちを知っていてなお私に言っていることに怒れた。
次第に私の高ぶっていた気持ちは徐々に冷めていった。
そして、ゼロに出会った。
そんなことは出会った当時はどうでも良かった。
でも、ずっと気にせずにいることはできなかった。
こうして抱きしめられていると、ゼロの気持ちがなんとなく伝わってくる。そんな気がした。
「ユウナには、俺がいる。俺を頼ってくれ。お前は俺の妻なんだぞ。」
ゼロが私を抱きしめながら言う。
「ユウナ、お前が俺よりロイがすきなのは分かっている。その気持ちは自分では止められないことも・・・」
ゼロはゆっくりと私の背中に回していた腕を少し離し、今度はゆっくり顔を近づけてきた。
私は、あまりのことに体を動かせなかった。
そして私の唇にゼロの唇が重なった。
ゆっくりと重なった唇だが、次第にゼロが舌まで潜り込ませてきた。
甘いとろけるようなキスだったが、次第にそれは強引になってきた。
「・・ん、んぅ・・・・ん、んんっ」
私は必死に自分の声を抑えた。
それでも甘い声は出てしまった。
ゼロは唇を離し、再び抱きしめてきた。
「俺はユウナが好きだ。この思いは自分では止められないっ。ユウナ、お前が悲しむのは見たくない。ユウナは自分で必死に心の中に自分の思いをしまっているが時々顔に出る。さっきもそうだ。ユウナの悲しむ表情は見たくない。ユウナ、俺に隠し事はしないでくれ。力になるから、ひとりで問題を抱え込まないでくれッ。ユウナには俺がいるんだから。」
ゼロは必死でユウナに自分の思いを告げた。
「ゼ・・ロ・・・」
ユウナは呟くことしかできなかった。
ユウナもゼロの背中に腕を忍ばせた。ゼロはそのことに驚いた。




