秋になっても
一部、というか一人を覗いて。大広間は盛り上がっていた。
「――ふふ、ユーマ様のお話聞けて嬉しいです!」
明るくしてくれるのは、メイドたちの頑張りもだし。一緒に食べればいいと許可してくれたリアムさんにも感謝だ。うん、機嫌も悪くないな。
「――わあ、こちらのショコラ! 行列で中々買えないですよねっ? 私、食べてみたかったんです」
フィクトルはお土産をたくさん用意してくれた……なんか悪いな。俺が今食べてるのも、チョコの中にドライオレンジが入っているやつ。めっちゃうめぇ。
「それは何よりです。僕、甘いものに目がないんです……いくらでも語れますぞ!」
「「……語れますぞ?」」
メイドたちは目を丸くしていた。興奮モードくるか。
「……あ、また悪い癖が出るとこでした。あの、たくさん召し上がってくださいね」
フィクトルが縮こまってしまっていた。いやいや?
「別によくね? 好きなもん、語ってんだから。フィクトルだって、俺の髪の話、ニコニコで聞いてくれてんじゃん?」
「……そ、それは。ユーマ君が楽しそうに話してくれるから……」
「だろ? 俺も同じだよ」
「ユーマ君……」
俺が笑いかけると、フィクトルもはにかんだ。ほら、メイドたちも微笑ましそうにしてるだろ?
「……私は余裕だ。私は余裕、私は余裕――」
「……リアムさん?」
えー……俺の隣でなんか呟いている? まだ微妙にピキってんだよなぁ? 妬く要素、ないだろうになぁ? ……おっと? なんか今、溜息つかれたか?
「ほら、リアムさん? 食べてみるまでわからないグミ、だってさ? アンタ、好きそうだろ?」
思い出すよな、デートした日のこと。アンタの学生時代をなぞったこと。俺、嬉しくもあったし、面白くもなかった。俺だって大概なんだよな……。
「……ユーマ。ああ、そうだ――好きだ」
「……だ、だよな。ほら、もらっとけば?」
別にドキってするとこでもない。俺のことをどれだけ見つめてこようと――。
「――あの、ユーマ君。聞いてもいいですか」
「うん、いいけど……」
俺は驚愕していた。なんか、急に入ってきた感じだったから……。
「……ピアスが気になって。ええと……あれです。ほら、すごい希少なパールを使ってるから」
「……希少、ねぇ」
俺はフィクトルの言葉を受けて、リアムさんのことを見た。
「……お得に買えたんだ」
あれだけ俺を見つめていたのに、視線をそらしはじめた。アンタにしては珍しい――ウソをつくとはな。
「……そりゃ、高いよな。普段使い、やっぱやめとくか?」
「い、いや。気軽に使ってくれたまえ……是非とも!」
またしても懇願してきた。必死だ。
「……やっぱり、彼からの贈り物ですか」
「ん。それはまあ、そうだな?」
フィクトルの表情は読めない。俺はとりあえず返事はしておいた。
「……毎日でもつけてほしいんだ。なんなら、もっと贈るから」
リアムさんのお願いは続いていた。うーん……。
「アンタなぁ……すでに服とかもたくさん、だろ」
物だけじゃない。アンタはたくさんのもの、くれたんだ。与えてくれた。
「……ったく」
とんでもなく高いんだろうな……俺、ビビってるよ。
俺からアンタにあげられるもの、今はまだ多いとはいえない。いつかはアンタ以上にあげたい。
今、あげられるとしたら。
「そうだ。リアムさんからのプレゼント――俺の宝物だ」
俺の心からの言葉。それから、愛しげにピアスに触れもする。今はこれくらいだけど、待っててほしいんだ。アンタをたくさん喜ばせたい。
「……ユーマ」
こんなことで――幸せそうに笑ってくれる。そんな、アンタだから。
「……へー、そうなんですねー」
「おう?」
フィクトルはやけに平坦というか……ピキってる?
「――あ、ユーマ君。アイスも持参してきたんです。この後で出てきますから」
「アイス! まじで!」
……ないな。フィクトルに限ってないない。悪い、フィクトル。こんなにもさ、にこやかなのにな?
お茶会は和やかに。ときに賑やかに続いていく。リアムさんはすっかり上機嫌だし、フィクトルも笑顔だな?
俺もだ。ガラにもなく、声を上げて笑っていた――。
リアムさんに呪いが移行することもなくなった。俺の呪いも抑えられていた。
ついには、充実した夏休みも終わった。
残暑も過ぎていき――。
秋風が吹く。すっかり肌寒くなったな。夏だとあんなにも明るかったのに、今じゃ夕闇に包まれている。
俺たちは今日も二人で出かけていた。こうして人前で手を繋ぐことも、当たり前になっていた。
ちょっと前じゃ考えられなかったんだ。
こんなにも穏やかな気持ちで、満たされているのも。
――彼の隣にいられるのも。
そうだ、こうして二人で並んで歩いていくんだ。
ずっと。俺たちはこれからだから。
「……ん? どうかしたか、ユーマ?」
「いや、改めて似合ってるなって――リアムさんもさ?」
耳元で揺れたのは――お揃いのパールのピアスだった。




